僕の転機
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■ 第3章 少女の目覚め9

 打って変わったような、昌聖の変化に、自分が主人の気に障る事をしたのか考え、涙ぐみ、不安に押しつぶされそうになりながら、身体を洗う。
 一人で入っていると、浴室の大きさが孤独感を煽る。
 いつの間にか、頬を涙が伝っていたが、美咲はそれさえ気付いていないようだった。
 髪の毛も洗い終え、バスルームを出て身体と髪を拭く。
 自分の犯した失敗がなんなのか解らず、しゃがみ込んで嗚咽する美咲。
 豹変した昌聖の態度に、絶望感すら抱きながら、髪と身体の水気を拭い、リビングに向かう。

 リビングに入ると美咲を待っていた昌聖が、右手にバスローブ、左手に美咲の洋服を畳んだものを持ち、声を掛ける。
「今日は、このバスローブを借りて寝れば良い。それと洋服畳んどいたから」
 そう言って両手を美咲に差し出す。
 差し出された物を受け取り、バスローブを身につける美咲。
 相変わらず距離を置いたような、昌聖の態度に美咲の心が潰れそうになる。
(どうして?どうして昌聖様?あんなに、愛してくれるって言ってたのに?美咲が何かしましたか?どうして……)
 そんな美咲に構わず、昌聖が
「客間は、こっちだよ付いてきて」
 リビングを出て廊下を進み出す。
 自分の洋服を胸に抱え、昌聖の後に付いていく美咲。
(昌聖様は、もう、美咲が必要ないの?どうしてそんな、冷たくするの?さっきみたいに、笑って話しかけては下さらないの?美咲を飼って下さらないの……)
 不安と困惑で、胸が張り裂けそうな美咲。
 美咲の心は、既に昌聖の言動に縛り付けられ、完全にコントロールされている。
 美咲のM性が、昌聖の目覚めを無意識に認識し、服従心を煽る。
「此処が、美咲の部屋だよ。僕はこっちに寝るから」
 部屋を別々に指示され、堪らなくなって美咲が昌聖に言った。
「昌聖様!もう美咲は必要ないのでしょうか?もう、昌聖様のお側に置いて頂けないのですか?」
 美咲が、涙を溜め昌聖に詰め寄る。
「昌聖様に処女を捧げた時、ずっと飼って下さると言ったのは、もう消えてしまったんでしょうか?」
 美咲が苦しそうに顔を歪め、昌聖に問いかけた。

 昌聖は、その問いにゆっくりと答える。
「あれは、口約束だろ?まだ美咲は、僕の正式な奴隷ではない。何の契約もされてないんだから」
 昌聖の言葉を聞いて一瞬ショックを受けた美咲は、直ぐにその言葉の意味を悟った。
(口約束…正式な奴隷…契約を交わす…。そうだ、昌聖様と正式な契約を交わして認められれば…)
 昌聖が自分の部屋に入って行き、扉を閉める前に美咲に囁くように
「今の言葉を自分の部屋で、良く考えてごらん」
 そう言って、扉を閉めた。
(自分の部屋で…?、そうか、解った。私の考えが決して間違っていない事を…祈ります!)
 昌聖の部屋の扉を見詰めながら、考えていた美咲は踵を返し、自分に割り当てられた部屋の扉を開いた。

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