僕の転機
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■ 第4章 眠れぬ奴隷達1

 時間は遡り、宗介の家を出た歩美達は、それぞれの思いを抱きながら自宅への帰路につく。
 3人とも無言で歩き続け、先ず一番最初に佐知子が自宅への分岐路にさしかかった。
「じゃぁ、私はこれで…」
 呟くように、佐知子がトボトボと肩を落とし歩いていく。
(また、昔のような日々が始まるのね……。しかも、あの宗介とか言う人…あの人は、今まで逢ったどんな人より……怖い。あの人には、逆らえない事が、自分で良く解る…これからどうなるんだろう……)
 佐知子は、過去の経験から宗介の力を感じ取っていた。
(でも、あんな感覚は、今までに感じた事が無かったわ…。失敗した時、ペナルティーを受ける事より、実行出来なかった方が悲しかったような気がする……。それに、美由紀が調教を成功させて、ピアスを付けられた時に感じた気持ちは、明らかに嫉妬と羨望だったし。このブラウスを貰った時も、とても嬉しいと思ってた…。こんな事一度も思った事無かったのに……。それを、感じさせる何かが…きっと、有るのねあの人には……)
 激しい鞭を受け、強く残ったみみず腫れを硬質のブラジャーの上からそっと押さえ、熱い息を吐く佐知子。

 そんな自分を引き戻すために強く頭を振り、落ち着くと、冷静に自分の中で今日有った事を分析する。
 宗介の持つ、経験した事の無い雰囲気と、自分の中に広がる変化に脅えを感じる佐知子。
(このまま、のまれてしまうと、とんでも無い事になる気がする…。ここは、昔のように別人格を作ってやり過ごそう。それしかないわ)
 強く決意しながら、顔を上げ歩調を早める。

 しかし、歩調を早めた時には、既に家の前を通り過ぎていた。
 考えに没頭する余り、自宅の玄関を5m程過ぎていた。
 急いで玄関に戻り、ソッと扉を開いて中に入る。
 佐知子の両親は、高齢で夜の就寝が早いための配慮だった。
 自室に戻った佐知子は、部屋着に着替え、ベッドに腰掛ける。
 シャワーを使うか迷ったが、両親を起こしかねない為、明日の早朝に浴びる事にし、ベッドに入り電気を消した。

◇◇◇◇◇

 佐知子に続き、美由紀が分帰路に着いた。
「歩美さん、私も此処で…」
 歩美に別れを告げ、自宅方向に歩き出そうとすると
「美由紀さん。今日、私の家に泊まらない?」
 歩美が美由紀に対して、初めて自宅に泊まる事を提案して来た。
 美由紀は、驚いたが表情に出さず
「ご免なさい、今日は何度も死にかけたから、一人で眠りたいんです…」
 歩美の申し出を断った。
 暫く、次の言葉を考えていた歩美は
「そうね、貴女の方がかなり酷い目に有ったんですものね…。解りました、おやすみ」
 歩美が言うと、美由紀も落とした肩越しに
「おやすみなさい」
 そう言って、自宅方向に向かい歩き出す。

 歩美に対して背中を向け、肩を落とし項垂れる美由紀の口元が、徐々に緩んでくる。
(乳首がさっきから凄い…。痛いんだけど、気持ち良い…。ジンジン疼いてくる)
 宗介に着けられたピアスが、両乳首の根本を貫いている。
(こんな物しかないって、あの人は言ったけど…。これ以上の物って有るの?…今ですらこんなに…)
 服の上から、そっと乳房に手を寄せ、ホォッと熱い吐息を放つ。

(私、おかしくなったのかな?…それとも、何度も死にかけて、生まれ変わったのかな?…)
 美由紀もまた、自分の身に起きている変化に戸惑い、自分を納得させる理由を探す。
(酷い目に遭い…命令され…自分で穴を開けさせられて…着けられたピアスが……。こんなにも嬉しいなんて…)
 宗介の手により着けられたピアスを、分厚いブラジャーの上からなぞる。
(触れないけど…確かに存在を感じる…。服従の証のピアス……)
 ボーッと考えていた美由紀は、一つの事に気付く。
(あれ?でも、調教が終わったら奴隷じゃなくなるのよね…。それじゃ、このピアスは返さなきゃいけないんだ…)
 自分の思考回路が、既に奴隷で居る事を望んでいる状態で有る事に、気付いていない美由紀。
(それじゃ、もっと奴隷に相応しい物も、着けて貰えないんだ…。どうしよう、調教は怖いし…でも…)
 揺れ動く美由紀の心。

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