僕の転機
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■ 第4章 眠れぬ奴隷達12

 リビングに入った歩美は、全裸で床に寝そべる仲間達を見ても、何の反応も見せなかった。
「服を脱げ」
 短い宗介の命令に、素直に指示通り服を脱ぐ歩美。
 そんな従順さを訝しんだ昌聖は、宗介に質問する。
「歩美まだおかしいの?」
「ああ、薬が効いて自我は有るけど、判断出来ない状態なんだ」
 宗介が説明する。
「こいつは、今ならどんな言う事でも聞くが、考えられないから単調な事しかできない」
 宗介が付け加えると
「じゃぁ、小便させたりそれを舌で、綺麗にさせたりとか出来るの?」
「それぐらいならな」
 答えながら昌聖の顔を見ると、少し驚いた表情になった。
(こいつ、いっぱしのサディストの表情をするようになったな、奴隷を持つと変わるな)
 全てお見通しの宗介が、昌聖に言った。
「昌聖様、好きにしてみて良いぞ」
 宗介の言葉に、ギクッとし顔を見る。
(やっぱり、ばれちゃってるよ…まあ良いか)
 頭を掻きながら、ニヤッと笑う。
「じゃ、ちょっと歩美借りるね」
 そう言うと下着を外し、調教部屋に降りて行こうとする。

 美咲が後を追おうとすると、宗介が2人を制止した。
「美咲ちゃん、これから昌聖のする事に、嫉妬とかは禁物だよ」
 昌聖に残るように言いながら、注意すると
「大丈夫です。私は昌聖様の所有物ですから、そんな物持ち合わせていません」
 明るく、はきはきと答えた。
(一晩でやるもんだね〜。完全に奴隷にしてるよ。昌聖…でも、こちら側には来ない方が良いんだけどな…)
 美咲の後ろ姿を見送り、一人考える宗介だった。

 宗介に呼ばれ、一人残った昌聖に
「昌聖。お前に少し、主人の心得を、教えておいてやろう」
 そう言うとソファーに深く腰を掛けた。
「基本的に言うと、俺達の世界は主従の支配関係にある…しかしこれは、絶対的な信頼関係が無ければ成り立たないし、出来たとしても長続きはしない。ましてや暴力に頼った関係は、必ず何らかの崩壊を招く…」
 宗介は昌聖の目を見詰め、真剣な眼差しで話し出した。
「では、どうすれば絶対的な信頼関係が出来る?」
 宗介の突然の質問に、戸惑う昌聖は
「う、う〜ん…付き合いを長くするとか…そんな事しか思い浮かばない…」
 昌聖が悩みながら、自信なさげに答える。
「ふっ…答えは、不安をコントロールするんだ。先ず奴隷に成る者の心を主人に傾けさせ、それによりその心を安定させると、次は不安を与えるんだ」
 宗介の意外な答えに驚く。
「不安を与えるのが、信頼に繋がるの?」
 昌聖の質問に
「そうだ。人は不安を抱えると、その不安から逃げ、安定しようとする。それを主が解決し、安定させてやると、奴隷は主に対して信頼を寄せる。これを繰り返すと、奴隷は自分で不安を解決出来なくなり、蓄積した信頼は鋼のように固まる」
 宗介が、静かに答える。
「ふ〜ん、でもそんなに都合良く、主人が不安を解決出来る物なの?」
 昌聖は納得出来ない様子で、宗介に質問する。
「出来ないよ…。そんな都合良く、不安が解決出来るなら、俺は神様にでも成ってるさ…」
 宗介の答えに、更に驚く昌聖だが、宗介は昌聖の言葉を制止し、続きを話し出した。
「100%の解決なんて、誰にもできやしない。ただ、それに近い物は、ある種の行動で、実現出来るんだ」
 宗介がニヤリと笑って、言葉を句切る。
「なに…そんな事…そんな便利な物があるの?」
 胡散臭そうだが、興味津々の体で昌聖が尋ねる。
「ある!実際俺はそれを使い、6年間で100人を超える奴隷を作った」
 昌聖の食い入るような反応を確かめ、宗介は口を開く。
「それは、肯定する事だ」
 宗介の答えを聞いて、昌聖は力が抜ける。
「宗介さん…あのね…。そんな事で、不安が解決される訳、無いじゃない…」
 宗介に対して、あからさまに否定する。

 しかし宗介は、そんな昌聖に対して、不敵に笑うと
「昌聖…お前はどうして努力する?」
 突然、質問を別の物に変えた。
 いきなりの質問に
「そ、そりゃ…人より優れたいからさ…」
 昌聖は、しどろもどろに成って、答える。
「何故人より優れたい?」
 宗介はすかさず、昌聖に質問を投げつける。
「えっ、だって、そうすれば人に当てにされたり、認められるじゃん…」
 その答えに宗介は
「認められると言う事は…存在の肯定だ…」
 ニヤリと笑う。
 [あっ]と驚く昌聖に、宗介が付け加える。
「人は無意識のうちに、その存在や行動を肯定される事を望む、そして例外なくその事に気付いていない…」
 宗介の言葉に頷く昌聖、そして宗介の話に深く引き込まれてゆく。

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