僕の転機
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■ 第5章 それぞれの変化3

 次は、昌聖が前に出て来て、二人に話しかける。
「取り敢えず、今からお前達は、朝食を採る。それからは、3人揃うか2人のままかで調教を変えるつもりで居る。解ったか?」
 膝を着いて目線を美由紀達に合わせ、静かに告げる。
 唾を飲み込みコクンと頷く美由紀と、掠れた声でハイと小さく呟く佐知子。
 どちらも、昌聖の変化に秘められた危険性を感じ取って、驚き震えた。
 2人から視線を離し、美咲の方を見る
「美咲ちゃん、こいつらに食事の用意をして」
 あえてちゃん付けで呼ぶ昌聖。
 2人の取り決めで、自分達の主従関係を知らない者が居る場合は、以前の呼び方で話す様にしている。
「解ったわ、昌聖君。今用意するね」
 そう言うとイソイソと奥に引っ込む。

 宗介は、2人に任せて早々にソファーに腰を下ろしている。
 美咲が、奥からスチールの餌皿とドックフード、それに牛乳を持って戻って来た。
 それを昌聖の横に置くと、踵を返しソファーに向かう。
 昌聖は、餌皿にドライタイプのドッグフードを入れると、2人に向かって言う。
「これは、ドライタイプのドッグフードだから水分を含ませないと、人には食べ辛いんだ。だから牛乳と混ぜても良いか?」
 思わぬ質問に
「お願いします」
「はい。それでお願いします」
 2人が口々に了承する。
「そうか、じゃぁ混ぜるよ」
 そう言うと、牛乳を注ぎ手で粒を握りつぶして、食べやすくする。
 最初に出来た方を佐知子に差し出す。

 佐知子が感謝の言葉を述べ、食べようとすると
「少し待ってなさい、こちらが出来たら、もう少しする事がある」
 そう言うと、美由紀の分も同じように握りつぶしだした。
 出来上がった物を美由紀の前に出し、ポケットからハンカチを取って拭こうとすると、佐知子が話しかけた。
「あの〜、御主人様…」
「何だ?」
 佐知子の声に視線を向けて、意見を聞く。
「汚れた手を、清めさせて貰えれば嬉しいんですが…」
 恐る恐る言う佐知子に、ニッコリ笑って昌聖が答えた。
「じゃぁ、佐知子に頼もうかな」
 そう言って右手を差し出す。

 佐知子は、その手を捧げ持ち、口に含んで舐めだした。
(あ〜っ、佐知子の奴点数稼ぎしてる!でも、こいつ間近で見ると本当に雰囲気が変わった。美咲と良い、こいつと良い。何が有ったんだろう)
 美由紀は、マジマジと昌聖を見詰める。
 佐知子は、一心不乱に昌聖の指を舐め、掌に舌を這わせる。
(本当に、この人も変わった…堂々とした仕草や、消しようのない加虐性を、薄い優しさの膜で覆ったような雰囲気…。まるで、あの人そのもの…)
 佐知子は、自分の中の警告ランプが、轟音を上げているのを確かに感じた。
 佐知子の清めが終わり、唇を離すと、昌聖が微笑みながら頭を撫で
「綺麗になったよ、ごくろうさん」
 優しく労をねぎらった。
 そしてポケットから、ヘアクリップを取り出すと佐知子の後ろに回り、髪の毛を束ねてまとめ上げた。
「こうしないと、髪の毛が汚れるからね」
 昌聖の配慮に、佐知子が
「ありがとうございます。とても嬉しいです」
 素直に礼を述べる。

 それを見ていた、美由紀が
「あの〜、私には…」
 怖ず怖ずと要求した。
「今してやるから安心しろ」
 そう言うと美由紀のセミロングの髪をヘアゴムで束ねる。
「ありがとうございます。御主人様」
 美由紀は、恥ずかしそうに呟いた。
 そんな美由紀の頭に、ポンポンと軽く手を載せ、立ち上がると
「食べて良いよ」
 2人に声を掛け、奥に歩いて行く。
(なんなのあの余裕は、私が恥ずかしく成ったじゃない…昌聖の癖に…もう…)
 美由紀が、赤くなりながら餌皿に顔を突っ込む。

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