僕の転機
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■ 第5章 それぞれの変化6

 佐知子の悲鳴を聞きつけた、昌聖が奥から足早に駆け寄ってきて、美咲の腕を掴み。
「美咲ちゃん、もうそれぐらいにしてくれ。傷が深く成りすぎる」
 美咲の責めを止める。
 美咲は、遊びを止められた子供のように少し膨れると
「ふん、もう良いわ」
 そのまま足をどけ、ソファーに戻っていった。
 美由紀の横を通る時、わざと美由紀の右手をピンヒールの踵で踏んで通り過ぎると、ソファーに腰掛ける。
 昌聖が佐知子の乳首を見て、具合を確かめる。
 泣いている佐知子に、優しく状態を話す。
「佐知子。大丈夫だ、血も出てない、少し痣に成った程度で済んでる。大きな胸が幸いして、クッションの変わりに成ったんだ。薬を付けるから、少し沁みるよ」
 そう言うと、ポケットから先程の薬を出し、佐知子の陥没していた乳首にユックリと塗り込み、元に戻し、ソッと全体に薬を塗った。
 佐知子は、昌聖の丁寧な治療と優しいタッチに泣くのを止め、嗚咽を漏らしながら縋り付くような表情を浮かべている。
「御主人様…。ありがとう…ございました」
 治療を終えた佐知子は、顔を紅潮させ微妙に媚びを含ませながら、頭を下げて感謝の言葉を心から発した。

 それを見ていた、美由紀は
(なによ!なによ!なによ〜!誰にでも優しくするんじゃないわよ!何で佐知子にそんなに優しくするのよ!可笑しいんじゃない…。勝ったのは、私なのに…)
 心の中で怒りに身を震わせた。
 それが嫉妬だとは、この時の美由紀には、理解出来ていない。

 そして、ソファーに座った美咲は、膨れっ面の内側で、自分が昌聖の望む展開を作った事に大喜びして、この後のご褒美に胸を踊らせている。
 そんな4人の状況を全体的に眼を配り、2人の心の変化を観察していた宗介は、思い通りの展開に、1人仏頂面の奥でほくそ笑んでいた。
「佐知子。いつまで掛かるんだ?罰ゲームもしなきゃいけ無いんだから、早くしろ」
 宗介が佐知子に冷たく言い放ち、昌聖と美咲にも指示を出す。
「美咲ちゃん。昌聖を手伝ってあげて、奥に行って色々用意があるはずだから」
「はい、解りました。昌聖君こっちで良いのね」
 美咲は、昌聖の横を通り過ぎると、スタスタと奥に歩いて行った。
 美咲の後を追い、昌聖も奥に消えて行く。

 2人が道具部屋に入ると、クルリと美咲が昌聖に向き直り、ペタンと床に正座して頭を下げた。
「如何でしたでしょうか?美咲は、昌聖様のご意向に添えたでしょうか?」
 昌聖に行動の評価を聞いた。
「良いぞ美咲、あの調子だ。しかし、余り深い傷は付けるなよ」
 美咲を見下ろし褒める。
 その表情は、先程見せた表情とは、打って変わった酷薄な物だった。
「美咲。立って乳房を晒せ、それが済んだら手を後ろに回して胸を張れ」
「はい昌聖様」
 美咲は、立ち上がりざま胸を覆うカップを両手で開き、乳房を露出させると、言われた通り手を後ろで組み胸を反らせた。
「ご褒美の前渡しだ」
 そう言うと美咲の両の乳首を摘むと、コリコリと刺激し激しく揉み出し、唇を合わせ舌を絡めて唾液を流し込む。
 ひとしきり美咲の身体を堪能し、身体を離すと
「唾液を飲み込んで、胸を直せ」
 美咲に命令した。
 美咲は、命令通りに行動し赤い顔を昌聖に向け
「ありがとうございました、これからもいっぱい頑張ります」
 頭を深々と下げた。
 うむ、と鷹揚に頷いた後、美咲に道具の指示を出し集めさせ、木の台の上に置き運び出す。

 ソファーの前に、用意した物を運ぶと、罰ゲームのセッティングに取り掛かった。
 ベルトの付いた木製の台の上からバケツ、チューブ、薬品の入った瓶、大きなタライ、蝋燭、アナル栓、小さなポンプを降ろし、並べる。
 皆が、その作業に集中している時、調教部屋の扉がユックリ開いた。
 その音に気付いた4人の視線が扉に集まると、扉の影から歩美がソーッと出て来た。
 その表情は、何処かオドオドとして、いつもの自信に満ちあふれた面影はない。
 調教部屋の中をキョロキョロと覗き、ソファーの付近に集まるみんなを見つけて、チョコチョコと走って来た。
(何だ?歩美の奴まだ薬で可笑しくなってんのか?)
 昌聖が真っ先に疑問を感じたが、どうもそうではないらしい。
 駆け寄ってくる歩美の表情は、取り残された不安が晴れたような、笑みを浮かべていた。

 そこに、宗介の思いもよらない大声が響く。
「歩美!」
 名前を呼ばれた歩美も、その場にいた全員が凍り付いた。
 大きく掌を広げた右手を前に差し出し、人差し指を立てユックリ力強く下を刺す。
 歩美以下全員が、その意味を理解した。
 歩美はその場に四つん這いになり、ソファーの前までやって来た。
 宗介の前で止まると顔を下げモジモジしていたが、サッと顔を上げ直し。
「遅くなり申し訳ございませんでした」
 平伏して謝った。
(おかしい…!こいつの反応は、何か考えてる…薬は中和されてるはずだし、こんな反応をするわけがない)
 宗介は歩美の態度を注意深く見ながら、表面では何事もない表情で迎え入れた。

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