僕の転機
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■ 第5章 それぞれの変化7

 遅れてきた歩美に、自分の目の前にお尻を向け、四つん這いになるように言った。
 歩美が、指示通り四つん這いになると、その背中に両足をドカッと載せ、美咲と昌聖に、良く歩美の表情を観察するように合図した。
「さあ、罰ゲームだ」
 立ち上がりながら言う。
「よろしくお願いします」
 佐知子が少し脅えながら頭を下げる。
「この栓は、特殊なアヌス栓で後ろのダイヤルを回すと先っぽの方が大きく広がり絶対に抜けない。まあ、お前の尻穴が30pなら抜けるけどな。そして、外側からはどんどん物を通すが逆流しないようになっている」
 宗介が説明を淡々と始める。
「そしてこのポンプ、今日は毎分300CCの液体を送り続ける。圧力が掛かってもこのペースは変わらない」
 黒い小さなポンプを、宗介が大げさに指さす。
「そう、お前には今から浣腸されながら有る事をして貰う。条件をクリアするまで、ポンプは止まらない解った?」
 宗介の言葉に不安の色を隠せない佐知子。

 自分の言葉が佐知子に与えた効果を、充分に確認すると
「四つん這いになって尻を持ち上げろ」
 静かに宗介が命令する。
 泣きそうな表情で無言のまま指示に従う佐知子。
 アナルに栓を差し込むとクリクリとダイヤルを回しカチと音が鳴る所で止めた。
 栓の後ろの管にパイプを付けて、そのパイプをポンプにつなぐ。
 ポンプの先を薬品の入ったバケツに入れ準備が整った。
「よし、準備完了だ。そこに正座しろ」
 宗介が命令すると、佐知子はソファーの前に正座した。
「今回、お前にして貰う事は、昔話だ。生い立ちから今に至るまでの話を聞かせて貰おう」
 宗介の言葉に、美由紀と歩美が首を捻る。
 しかし、佐知子の顔は蒼白になり、震えている。
 それを見た昌聖が白々しく
「どうした?そんな思い出したくない事があったの?」
 真顔で覗き込み佐知子に問いかける。
(どうしよう…この様子じゃ、私の過去を知っているのは、あの人だけだわ…みんなには、絶対に知られたくないのに…)
 佐知子は、昌聖と美咲も全部知っている事に気付いていない。

 しかし、2人ともその件に関しては、一切知らない事で押し通すよう宗介に言われていた。
 不思議に思って従っていたが、こう言うシュチュエーションを作り、本人の口から言わせるためだとは、予想だにしなかった。
「簡単だろ、しかしこの昔話にはキーワードが50入っている。これを、全てクリアーしないとポンプは止まらない」
 宗介の言葉を聞いて、全て理解した。
(嘘も隠し事も、話を延ばす事も、言葉を選ぶ事も禁止するのね…死にたくなるような恥を自分からさらせって…)
 ガックリ項垂れた、佐知子は唇の端を噛み、血を流していた。
 佐知子の前に宗介が、マイクを置きに行く。
 ソファーを離れ目の前に現れた、宗介の背中を見る歩美の表情を、昌聖と美咲は見逃さなかった。

 射抜くように睨み付けた歩美の視線は、間違いなく憎悪そのものだった。
「これに向かって話すんだ、すると佐知子の声を認識して、キーワードが有れば、ソファーの後ろに並ぶモニターに結果が現れる」
 佐知子の正座した、額の辺りの高さにマイクが設置された。
(顔も伏せるなって言う事ね……)
 不自然に高い位置のセッティングに、笑いさえ込み上げてくる佐知子。
(あなたは、私をそこまで追いつめて、嬲る積もりね……解ったわ…お望み通りにするわ…)
 一瞬恨めしそうな視線を、宗介に向けると
「よろしくお願いします」
 頭を下げて、自ら開始を求める佐知子。
「よし、覚悟が出来たようだから、スタートだ」
 宗介がスイッチを押すと、ポンプが作動しバケツから佐知子のお腹の中にドンドン液体が流れ込む。
 踵を返しソファーに戻る宗介は、素早く目線を走らせ、2人から情報を集める。
(やはりな…下手な芝居は直ぐにボロが出る。さて、いつまでもつかな、お嬢さん…)
 足を再び歩美の背に乗せ、正面の佐知子に視線を向ける。

 眼を固く閉じた佐知子が、口を振るわせながら話し出した。
「私、中川佐知子は、中学校間2年まで春日佐知子と呼ばれていました。名字の春日は、春日養護院と言う孤児院に在籍している、本名の解らない子供達が名乗る名字です」
 佐知子の話の重さに、息をのむ美由紀と歩美。
「そんな私達孤児院の者は、小学校の時から激しい虐めの対象でした。その中でも春日を名乗る5人は、特に執拗に虐められ、先生や養護員にも見放され野放し状態でした」
 佐知子の震えが大きくなってくる。
「そんな中、一番最初に性的虐めを受けたのは、小学校3年生の時です。プールの授業が終わり着替えに戻ると、洋服が無くなっていて、先生に相談したら水着のままで授業を受けるよう指示され、その日の最後は、水着までみんなによってたかって破られ、全裸に新聞紙を巻いて帰りました」
 佐知子の固く閉じた目から、どんどん涙が溢れてきた。
「でも、地獄はそれからでした。みんな、私を人として扱わなくなって来て。全裸にされて落書きされたり、ゴミ箱の中に頭から突っ込まれて、放置されたり。アナルに自分の縦笛を入れられたのは、小4の夏でした。小5の時の先生は、何処かで捕まったみたいだけど、教壇の上で生理が始まった私を見本に、保健体育の授業を始めました」
 その内容の凄さに、美由紀が泣き出した。
 すかさず、昌聖が頭をポンポンと叩き、足下に引き寄せる。
 震えながら美由紀が縋り付く。

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