僕の転機
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■ 第5章 それぞれの変化10

 この時点での、心境の変化や行動の変化が、この後どれほどの影響を与えるかは、女4人には全く理解されていなかった。
(良しこの時点でミーティングを入れたいな…)
 宗介が佐知子の排泄物を、片付けていた昌聖を呼んだ。
「昌聖ちょっとこっちに来てくれ」
 そう言うとスタスタと、道具部屋に入って行った。
 その後を困ったような顔で、追いかける昌聖。

 道具部屋にはいると、宗介が昌聖に話し出す。
「う〜ん良い感じで、佐知子が懐いて来たな、美由紀も気持ちがだいぶ偏ってきたし、歩美はこの後の展開待ちだな」
 昌聖に現在の状況を評価した。
「そうでしょ、結構僕も良い感じだと思うんですが、歩美の表情は凄いですね…」
 昌聖が、得意げに話し自分の見解も混ぜる。
「あのタイプは、仕方がないんだ。何処かに敵を作らなきゃ生きていけないタイプだし。色々あるんだ」
 宗介が辟易した表情で話す。
「そうなんですか…この世界やっぱり深いですね…」
 昌聖が感心する。
「そんなことより、これからお前に佐知子を近づけるが、まだ絶対に奴隷を認めちゃ駄目だぞ。逆に、美由紀の処女を捧げさせる方を、先に考えて行動しろ」
 宗介の注文に
「はい、僕もその方向で考えてました。美由紀の嫉妬の視線は、ばしばし感じてましたから。大丈夫だと思います」
 昌聖がニヤリと笑いながら答える。
「そこまで、解ってるなら大丈夫だ。よし、傷を作るぞ」
 宗介が昌聖を認め最後にとんでもない事を言う。
「はい、おでこで良いですね」
 昌聖が宗介の行為を認め、場所まで指定した。
「ああ、最低たんこぶが出来る程度行くぞ」
 宗介が言った。
「はい」
 昌聖が答えた瞬間、宗介の手が昌聖の頭を壁にぶつける。
 ガツンと音が鳴り昌聖の額が切れる。
「後は、俺が薬箱を取って来て、美咲ちゃんを此処に呼ぶから今のを説明しろ」
 宗介が言いながら道具部屋を飛び出す。

 道具部屋を飛び出した宗介が、美咲に
「美咲ちゃん物が崩れて昌聖が怪我をした。俺は救急箱を持ってくるから、君は昌聖を見てくれ」
 そう言って調教部屋を飛び出す宗介。
 美咲は、宗介の言葉を聞いてソファーから飛び上がり、走り出そうとしたが、ピンヒールのため早足でしか移動できない。
(どう言う事ー!昌聖様が怪我したって!もーこんな靴履くんじゃなかった!)
 内心怒鳴りながら表情は変えず急いだが、顔の色は蒼白だった。
 佐知子は、宗介の言葉を聞いて拘束されたままオロオロとし、
(昌聖君怪我したって…酷いのかな…大丈夫かな…)
 拘束された状態で首をキョロキョロと巡らしている。
 美由紀は、正座していたため腰を半分浮かせたり降ろしたりしながら、
(怪我したって…もう、ほんとにドジなんだから…大丈夫かな…なにしてんのよ…見に行っちゃいけ無いかな…)
 ソワソワと落ち着かない。
 只一人じっと床を見詰め固まっている歩美。

 美咲が道具部屋の扉を開けて中に入ると、額から血を流す昌聖を見つけ、泣き出しそうな顔になる。
「昌聖様、大丈夫ですか…」
 そんな美咲に昌聖が片手を上げて
「緊急ミーティングだよ」
 笑いながら言う。
「だって本当に血が出てるじゃないですか…宗介さんがやったんですね!」
 怒りを込み上げて立ち上がろうとする美咲に
「待ちなさい、そんな事をしたら僕の気持ちに反するよ」
 手を掴み引き留める。
「だって〜っ!昌聖様に…」
 言いかけた美咲を抱き締め
「黙りなさい…話が進まないよ」
 昌聖が心の底から優しい笑顔を美咲に向ける。
 それで全てが丸く収まってしまった。
 昌聖は、先程宗介と話した内容を美咲に伝え、それを全力で支援するように指示した。
 その話の間中、美咲は自分の胸に昌聖の頭を抱え込み、傷口を舐めていた。
 説明が終わると美咲が、傷口を舐めながら返事をした。
 美咲が返事を返した時、道具部屋の扉が開いた。
 中に入って来た宗介を美咲がものすごい目で睨んだ。
「ちょっと待って!必要事項だから、怒るなって」
 宗介が慌てて、制止し美咲に薬箱を手渡す。

 美咲が昌聖の治療を終え3人で、道具部屋を出て行くと、宗介が歩美達に話す。
「アクシデントが起きたから少し休憩を挟もうと思う、佐知子は昌聖に、美由紀は美咲にそれぞれ風呂に入れて貰え」
 そう言いながら歩美に近づき、
「お前は、俺と此処だ」
 見下ろしながら短く告げる。

 美咲が美由紀を呼び、宗介と昌聖に告げる。
「私と、美由紀で先に入りますからそれで良いですね。行くわよ美由紀」
 美咲は、返事も聞かず先に上がって行き、その後を一生懸命美由紀が追う。
 昌聖は大げさにフラフラとよろめきながら、佐知子の側に行き拘束具を外して佐知子を降ろす。
「宗介さんじゃ、僕らは上のリビングで風呂場が空くのを待つよ」
「ああ、そうしてくれ。足下気を付けろよ」
 宗介の言葉に軽く手を振り答える。
 昌聖の後ろを、佐知子が心配そうに四つん這いで付いていく。
 3人の奴隷は、それぞれ憎悪・嫉妬・恋慕、三様の感情に支配されだした。
 それぞれの変化を胸に、奴隷達は堕とされて行く。

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