僕の転機
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■ 第6章 回り出す歯車1

 美由紀を従えた美咲がリビングに入っって来た。
 調教部屋から出る時に、ブーツを脱いで来た為、今はスラリと伸びた白い素足を晒している。
 美咲はそのままリビングを横切り、バスルームに向かおうとした。
 スタスタと歩く美咲に、四つん這いで必死に付いていく美由紀。
 美咲は此処まで、一度も後ろから付いて来る美由紀に視線も注意も払っていない。
 自分の事を無視するような、美咲の態度に腹を立てた美由紀が
「少し、スピードを落として。じゃなきゃ、普通に歩かせて」
 後ろから抗議しだした。

 その声に、ピタリと足を止めユックリと振り返る美咲。
 その美咲の表情に、自分が失敗した事を痛感する美由紀だった。
 美咲は無言で首を巡らし、リビングに置いて有る物を物色した。
 一通り眺めた美咲は、手首に嵌める革の拘束具を拾い、近くに置いていた騎乗鞭を手に取る。
 それを持って美由紀の傍まで歩いて来ると
「手…」
 一言告げる。
 何の事か解らなかった美由紀が、首を傾げると肩口に鞭が振り下ろされた。
 ビシィーッ鋭い音が鳴り、美由紀の肩に赤い線が走る。
「ひーーっ」
 痛みに肩を押さえる美由紀。

 美咲は、お構いなしに右手を差し出し、また同じ言葉を繰り返した。
「手…」
 美由紀は悔しさを堪え、怖ず怖ずと右手を差し出す。
 差し出した手に拘束具を付けると、美由紀の背中に回り左手を鞭で叩いて
「こっちも…」
 短く指示を出す。

 美由紀は言われるまま後ろに手を回すと、美咲が左手にも拘束具を付け、両手の自由を背後で奪う。
「そのまま進みなさい」
 美咲が指示すると美由紀が反論する。
「こんなのでどうやって進めって言うのよ!」
 すると、美咲は美由紀の背中を一蹴りし上体を押し倒して
「そのままお尻を持ち上げて進みなさい」
 抑揚のない声で、命令した。
 美由紀は、顔を支点にし大きな胸を床に付け、尻を突き出した態勢になっている。
「このままで進むなんて出来ないわよ」
 さらに抗議すると
「美由紀いつも私に言ってたわね。出来る、出来ないじゃない。やるのって」
 そう言うと突き出された、美由紀のお尻に鞭を振るった。

 ビシィーッ「ギャーーッ」容赦ない鞭に美由紀が悲鳴を上げる。
「さあ、進むのよ。胸を床から離したり、進みが遅くなったら、自分のお尻が腫れ上がるからね」
 昨日と全く別人になった、美咲の変化を受け入れられない、美由紀が切れた。
「いったい何なのよ美咲!昨日までこうやって、這いつくばってたのは、お前じゃない!」
 美由紀が美咲に向き直り、金切り声を上げた。
 そんな美由紀の頬を美咲が、思いっきり振り抜いて張り倒した。
「いつまで過去の話をするつもり?お前達の力は昨日宗介さんに、全て剥ぎ取られたのよ。今のお前達と私とでは、奪われた物と与えられた物の差が歴然としているの、それが分からない馬鹿は、きつくお仕置きを受けるの。覚悟しなさい」
 美咲は手に持った乗馬鞭を、自分の左手の上でパシパシと鳴らし、大きく振りかぶった。
「本当は、顔を打っちゃ駄目って言われてるけど、こんな馬鹿には良い薬よね」
 そう言いながら、美咲は自分の唇を舌でぐるりと舐めた。
「行くわよ」
 振り下ろそうとした瞬間、美咲の後ろから
「美咲ちゃんそれ以上は駄目だ!」
 佐知子に支えられた昌聖が、丁度リビングルームに入って来て、叫んだ。
 昌聖の声を聞いて、動きを止める美咲。

 鞭を降ろし昌聖の方を向くと
「昌聖君、今は美由紀の担当は私の筈よ。口出ししないで」
 声を荒げて美咲が抗議する。
「解ってる、だけどそれ以上はルール違反だよ」
 昌聖が静かに忠告する。
 美咲は、ワナワナと震え鞭を放り出し昌聖に従う。
「解ったわ、跡が残らなければいいのね。美由紀行くわよ」
 そう言うと、美由紀の髪を鷲掴みにし引きずって行こうとする。
「美咲ちゃんちょっと待って!僕から美由紀に一言だけ良いかな?」
 昌聖の言葉に立ち止まると、フイッとそっぽを向き掴んでいた、美由紀の髪の毛を放す。

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