僕の転機
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■ 第6章 回り出す歯車2

 美由紀に近寄り跪いて、目線を合わせると
「美由紀。昨日と今日では、状況が違う事を理解しなきゃ駄目だ。じゃないと、余計に酷い目に会うよ。美由紀は、後4日分で期間が終わるんだから我慢しなきゃ…」
 昌聖が注意すると、美由紀がコクンと上目遣いで見ながら頷く。
 素直に頷く美由紀の頭を優しく撫で微笑む昌聖。
「さあ、美咲ちゃんに謝って許して貰え」
 昌聖に促された美由紀は、正座して頭を床に付け
「美咲様度重なるご無礼申し訳ございませんでした。どうかこの通りお詫びいたします、お許し下さい」
 素直に、謝罪の言葉を述べる。
「美咲ちゃん、今回は僕に免じて許してやってくれないか。お願いだ…」
 昌聖も静かに頭を下げた。
「解ったわ…そこまで昌聖君に言われたら、私も言う事を聞くしかないわね…」
 美咲が、小さく了承した。
「有り難う美咲ちゃん。痛ぅ!」
 身体を持ち上げようとした、昌聖が頭を押さえよろめいた。

 すると、その声に3人の少女が即座に反応した。
 美由紀は、下げていた頭をおもむろに上げ、昌聖の顔を心配そうに下から覗き込む。
 佐知子は、直ぐに昌聖の足下に駆け寄り、下から優しく支え上げる。
 美咲は、一瞬泣きそうな顔を見せ、その表情を押さえ込む。
 昌聖は、スッと手を美咲に向けて一瞬広げ、動きを制して、その手を佐知子の支える手に重ね
「大丈夫、少し疼いただけだから…」
 無事をみんなに告げる。
 美咲はバスルームの方へ向き直り、美由紀に
「後がつかえてるから、行くわよ」
 声を掛け進むように促した。

 美由紀は乳房を床に押しつけ、芋虫のように美咲の指示通りに這って行く。
 昌聖は、佐知子に支えられソファーに座る。
 美咲は、佐知子の注意が昌聖の方に向いているのを確認し、心配そうな顔で昌聖を見て、頭を下げて美由紀の後に付いていった。
(美咲…心配しなくても演技だから…解っている筈なのに…心配性だな)
 思わず浮かんだ含み笑いを、佐知子が見事に勘違いする。
「昌聖さん、美由紀、本当に良かったですね…昌聖さんに庇って貰って…許して貰えたから…」
 佐知子は、昌聖が頼んで美由紀が許して貰えた事に、安堵して笑ったのだと、勘違いしている。
(はぁ?こいつまた勘違いしてるな…まぁ、その方が都合良いから、別に良いか…)
 佐知子の顔を見ながらクスクスと笑う。
 それが意外だったのか、ビックリして佐知子が質問する。
「どうかしました?私変な事言いましたか?」
 佐知子の顔を覗き込み、薄く浮いた涙を拭いながら昌聖が話し出す。
「自分の方が酷い目に有ってたのに、美由紀の心配をするなんて。本当の佐知子は、お人好し何だなって思ったら、可笑しくなって…」
 自分の事を指摘された佐知子は、それが好意的に思われたと感じたのか、耳まで赤く染め俯いた。

 そんな、佐知子をジッと観察している昌聖は
(だいぶ気持ちが傾いてきたな、もう少し揺さぶってみるかな…)
 笑顔はそのままに、次の段階に進む行動を考え出す。
 俯いている佐知子の頬にソッと手を伸ばし
「佐知子は、本当は優しい女の子なんだなって…思ったら。今まで僕が、見て来た佐知子は、本当は辛かったのかな…って勝手に思っちゃって。…笑えた…」
 これ以上ないくらい、優しい微笑みを浮かべ佐知子に話す。
 佐知子は、その昌聖を見て涙を溢れさせながら、
「ご免なさい…ご免なさい…。今まで、昌聖さんに辛く当たってたのは…」
 そこまで言った佐知子の唇に、人差し指を当てゆっくり首を振り
「さっき聞いたよ…怖かったんだね。歩美が…」
 昌聖の言葉に涙を溜めてコクンと頷く。

 佐知子の素直な反応に、ニッコリ笑って頷くと、口調を変えて質問する。
「所で、さっきから気に成ってたんだけど…僕の事を[さん]付けで呼んでたね?気持ちの変化があった?それとも、気のせいかな?」
 悪戯っぽく笑って、佐知子に問いただす。
 佐知子は、さらに赤くなって俯きモジモジしながら
「気のせいじゃないです…」
 呟くように言った。

 昌聖は、ポンポンと佐知子の頭を軽く叩き
「そう、じゃあ期間の許す限り、佐知子は僕の奴隷として頑張ってね。僕は、今度は[様]で呼ばれるように頑張るからさ」
 佐知子に明るく笑いながら話す。
「今から、今から昌聖様って呼んでも良いですか?」
 佐知子が身を乗り出しながら、昌聖に尋ねる。
 昌聖は、一瞬考え込むような振りをしながら、佐知子を観察する。
(良い感じに成って来たな…でも、余り踏み込ませると、この後厄介だし…)
 考えをまとめた昌聖は、
「佐知子は、みんなの奴隷だし…」
 一呼吸置いて佐知子の顔を覗き込む。

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