僕の転機
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■ 第6章 回り出す歯車10

 美咲が後始末をする場面では、美咲が歩美に対する扱い方に一様に恐怖心を抱いていた。
 映像が終わると暫く沈黙が流れ、反応を見るように宗介がまわりを見わたす。
「こんな事をする人間を変態と言わず何を変態と言うんだ?」
 宗介が口を開き、歩美に質問する。
 歩美は泣き崩れて何も話す事が出来ない。

 驚いた表情で歩美を見ている美由紀に
「どうした?何か言いたい事でも有るのか」
 宗介が美由紀に問い掛ける。
「いえ…歩美も凄い事を平気でするな…って思っただけです」
 事情を知らない美由紀には間違い無くそう見えた。
「私じゃ無いわ!私には記憶が無いのよ!」
 必死の顔をして抗議する歩美。
「でも記録には残ってるわ」
 佐知子が呟くように、歩美に言った。
「そうだな、この映像をネットに流すか?凄いアクセス数に成るな。歩美は、一躍スターに成れるぞ」
 宗介の言葉に驚いた歩美が必死に懇願する。
「馬鹿な事は、言わないで。そんな事されたら、私生きていけない…」
「私はされたわ。有無を言わさずね…」
 美咲の言葉に、身体をくねらせ身悶えしながら
「お願いです!何でもしますから!それだけは、それだけは勘弁して下さい」
 宗介の足下に縋り付いて懇願を続ける。
「何でもするんだな…」
 歩美は決して、言ってはいけない事を吐いていた。

 宗介はしゃがみ込み歩美に、話し掛ける。
「お前がそのつもりなら考えてやろう。但し、約束を守らなければ…。どうなるかは解るな」
 宗介の言葉に、コクンと頷く歩美。
 この後、どれ程過酷な命令が待っているかは、全く理解の外だった。
「良し契約は為された。お前達も聞いたな」
 全員を見渡す宗介に、一様に頷いた。

 そして、佐知子を向き、残酷な笑みを浮かべ
「佐知子お前は、今の歩美の姿を見てどう思った?」
 佐知子は、即答する。
「最低ですね。私10年間虐められましたが、あんな事を平気で出来る人間を初めて見ました」
 宗介は満足のいく回答に
「美由紀、お前はどう思う?」
 美由紀に同じ質問を投げ掛けた。
「私は、あそこまで人間を辞められません…本当にあれじゃ便器ですね」
 美由紀は恐る恐る答えた。
「便器か…歩美お前はこれからは、主人の後始末をその口でしろ!奴隷達の分もだ」
 宗介の命令が下される。
 歩美は、その意味が良く理解出来ないと言う表情を浮かべて居た。
「後始末?…口で?…」
 繰り返し言ってその意味に気付く。
「ひ、酷いわ…」
 顔をひきつらせながら呟く歩美。
「ご主人様!私達には、歩美にそんな事出来ません…」
 佐知子が宗介に逆らう。

 思わぬ反抗に、宗介の表情がさらに、冷たい物に変わり
「どう言うつもりだ…」
 睨み付け宗介が佐知子に詰問する。
「ご主人様が居なく成ってしまったら、歩美の仕返しが絶対に待っているからです」
 佐知子が平伏して答える。
「心配するな。俺が絶対にさせない」
 宗介が佐知子に応えると、佐知子は顔を宗介に向け
「ご主人様のご要望に精一杯お応えします」
 笑顔で返事をした。
 歩美は真っ青に成って力無くうなだれていた。
 意地を張り宗介に逆らった哀れな奴隷は、これから生涯忘れられない日々を送る事に成った。
 こうして、それぞれの歯車が回り出す。

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