僕の転機
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■ 第8章 変わりゆく関係1

 宗介の家に着いた6人は、調教部屋に集まった。
 宗介は、じっと歩美を見詰めてる。
(少し落ち着いたな…。あいつらの言う事が正確なら、幼児退行まで起こした事になる)
 宗介は、帰りの車の中で歩美を追いつめたチームに連絡を取って、状況を確認していた。
(彼奴らは、精神操作についてはスペシャリストだ…。その彼奴らの見解が言うなら間違えないだろう…)
 宗介が思考を巡らせる中、美咲が発表を行っている。

 そんな中、佐知子が手を挙げる。
 発言を許されて、佐知子が抗議を始める。
「御主人様すみません。美由紀は、競争中に不正を始めました。私も、それに気づき防御策として実行しましたが、納得いきません」
 佐知子が顔を赤くして抗議する。
「何だ?この調教中に出来る不正は、無いはずだぞ?」
 宗介が不思議そうに言った。
「美由紀は、センサーを回収しだしたんです。そうして他の者に、目標が判らないようにしたんです」
 佐知子は、美由紀の不正を糾弾し、主人の採択を待った。
「う〜んっ。それで?」
 宗介が、佐知子に問い返す。
「え?ですから、センサーをですね…。あれ、違反じゃないんですか?」
 佐知子が、しどろもどろになる。
「回収が違反なら、同じ人間を相手にする事も違反だろ…?と言うか、回収しなかったら、先に出た者のメリットが無いじゃないか?」
 宗介が続けようとした時、美咲が制止する。
「その論議は、意味が無いわ…。結果は、3位は歩美…0個、2位は美由紀40個、1位は佐知子41個よ」
 美咲が個数と順位を発表する。

 美由紀の不正を糾弾した佐知子がトップだったため、何の問題も無く
「従って、1位の佐知子は5日減、2位の美由紀は4日減、3位の歩美は9日増よ」
 美咲が日数の増減を発表する。
 すると、昌聖が声を上げ
「あれ?じゃぁ、もしかして。早くも契約終了者が出ちゃった…」
 その結果に驚くと、宗介が同意する。
「そう言う事、ちょっとルールに穴が有りすぎたな。まあ契約は、契約だ。松山美由紀さん、これで晴れて自由の身だ。おめでとう」
 宗介の声に、美由紀が驚く。
(ちょ、ちょっと待ってよ…!私の決意はどうなるのよ…。待ってよこんな状態で、放り出さないでよ〜)
 オロオロとする、美由紀に
「美咲ちゃん、バスルームに案内してやってくれ。これで彼女は、無関係になった訳だから、身綺麗になって帰って貰おう」
 宗介の言葉に、スッと立ち上がる美咲。
「ちょっと、待って。待って下さい!私の意見も聞い…」
 美由紀の口に美咲が指を立て、正面に立つ。
「そこから先は、感情で話しちゃ駄目よ…真剣に考え、求めてからでも遅くはないわ。少なくともあと数日…貴女がどちらを選ぶかは、貴女の自由…」
 美咲の迫力に飲まれ、頷く美由紀。

 美咲に伴われ、客用の風呂に案内される美由紀。
「貴女が出るまでに、洋服は持ってきておくわ…ごゆっくり」
 そう言い残すと、美咲は廊下を戻っていった。
 一人バスルームに取り残される美由紀。
(こんな…こんな中途半端な終わり方…。…?…違うわ…終わりじゃない…!美咲さんが言ってた事を思い出すのよ…)
 美由紀は、洋服を脱いでバスルームに入る。
 湯船に浸かりゆっくりと美咲の言葉を思い出す。
(感情で話しちゃ駄目よ…真剣に考え、求めてからでも遅くはないわ…少なくともあと数日…そう…じっくり考えるのよ…)
 美由紀は、この問題を真剣に検討し始めた。

 同時刻、歩美と佐知子が残った調教部屋。
「しかし、歩美。お前は酷すぎる…。2時間経って、一人の精液も集められないとは…」
 宗介が大げさに頭を抱え、落胆する。
「すいません…。でも、私はあんな事の経験なんて…」
 歩美の言葉を遮るように、宗介が言葉を挟む。
「言い訳なんかするんじゃない…。そのお前の傲慢な気持ちが、この結果を生んだんだ!」
 叱責して歩美を黙らせる。
「お前のために、特別調教を施してやる。この調教が終わる頃、お前のそのプライドは、粉々に成っているだろう」
 宗介がそう宣言し、歩美に一枚の紙を手渡す。
「これを読んで覚えろ」
 A4の紙を昌聖にも配る。

 その時、美咲が調教部屋の扉を開けて、入って来た。
 それを確認した宗介が
「美咲ちゃん、ちょっと良いかな?」
 美咲を呼ぶと、美咲は少し驚いた様子で
「何ですか?宗介さんに呼ばれると、何だかおっかないですね…」
 笑いながらソファーから、歩み寄ってくる宗介を見詰める。
 扉を出て、美咲に話し出す宗介。
「うん、実は美由紀の事なんだ…。君の目から見ても、あいつの考えてる事は、解るよね…」
 美咲は、コクンと頷き、宗介の言葉を待つ。
「先輩として、美由紀の中途半端さを消して欲しいんだ…。出来るかな?」
 宗介の言葉に、首を傾げて考える。

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