僕の転機
MIN:作

■ 第8章 変わりゆく関係7

 宗介が手にしているのは、長さ2m程の黒い革製の、1本鞭だった。
「これは、今までの鞭のように、甘い物じゃない…。元々は刑罰用に作られたモンだ。俺が本気で振れば、威力は一撃で骨を砕く」
 そう言うと、傍らにある木製のサイドテーブルに視線を向け、顎をしゃくり歩美に[見ろと]指示する。
 宗介の手が動き、一本鞭を振ると、サイドテーブルを支える5〜6pの支柱に当たったのか、それが爆ぜ、テーブルの天板がゴトリと落ちた。
 鞭の先は、余りの速度のため、全く見えなかった。
「解ったか?大の男でもこれを、本気で3発も喰らえば、痛みに発狂する事がある。お前には、反省できるまでくれてやろう…」
 宗介の目は、凍り付くほど冷たく、歩美は絶望に項垂れた。
 宗介の腕が鞭を、操作し一撃目を歩美の胴体に当てる。
 歩美の白い裸身に黒い鞭が巻き付いた後、真っ赤な線がその胴体に走る。
 みみず腫れの赤では無く、完全に皮膚が爆ぜて、中の脂肪層がうっすらと覗いている。
 歩美は文字通り声も出なかった。
 大きく開いた足の間には、失禁した物が水溜まりを作り、歩美の顔は全ての穴を全開にしている。

 歩美は余りの苦痛に、口をパクパクとさせ、酸素を求める。
「どうだ?想像を絶するとは、こう言う事だ…意味が良く解っただろ?」
 そう言うと宗介が、2撃目を繰り出す。
 歩美の下腹部からヘソを通り乳房の間までの、皮膚が爆ぜた。

 歩美の身体の中心で、十字に赤い線が走る。
 余りの痛みで、身体を捩る歩美の左肩が、ボクンと鳴って、腕が伸びる。
 左の肩関節が、外れてしまったようだ。
「ちっ、ちゃちな身体の作りだ…」
 宗介が吐き捨てると、歩美に近寄り髪の毛を掴む。
「解ったか?お前には全ての権利がない…それに逆らうと、こう言う目に合うんだ」
 痛みに思考が完全に停止した、歩美は宗介の言葉を肯定し、受け入れるしか無かった。
「はい…解りました…ご主人…様…どうか…お許し…下…さい」
 必死にそれだけの言葉を、吐き出す歩美の全身には、脂汗が滲んでいる。
 宗介は、歩美の拘束を解くと、床に下ろし、外れた肩関節を入れてやる。
 驚いた事に、その時歩美は声を上げなかった。
 肩を入れて貰った歩美は、外れる原因を作った宗介に平伏すると
「屑奴隷の壊れた身体を治して頂き、有り難う御座いました…」
 虚ろな目で、感謝の気持ちを表す。

 汚れた床を掃除するように命じた宗介は、ソファーに向かう。
 歩美は這いつくばり、自分の失禁で出来た水溜まりに、舌を這わせる。
 お尻を高く付きだし、足を開いた、待てのポーズを自然に取る。
 それは意識してか、無意識なのかは歩美にも、判断できてはいない。

 床を綺麗にした歩美に宗介が、薬箱を手に近づいて来た。
 歩美の横に立つと、立ち上がる事を命じ鏡に向かわせる。
「歩美。これから、二つの事を選ばせてやる…。お前はその傷を一生背負って生きて行くか、有る程度の痛みに耐えて綺麗に消すか…。どちらが良い?」
 鏡に映った、自分の身体を見て[ヒッ]と軽い悲鳴を上げ、固まる。
 歩美の傷は、乳房の下10p位を真横に、胸の谷間から恥丘の辺りまで一直線に、皮膚が爆ぜ血がこびり付いていた。
 歩美はその傷を見て絶望仕掛けたが、宗介の言った言葉を思い出す。
(有る程度の痛みに耐えて綺麗に消す…そんな事出来るの…)
 一抹の不安を抱えて、答えを選ぶ。
「傷を…傷を消して下さい…」
 その答えが、歩美を更なる絶望まで追いつめるのだった。
 宗介は歩美の答えに満足し
「そうか、お前が選んだ事だからな…」
 歩美の身体を、天井と床の間に鎖で拘束した。
 何が起きてるのか解らない歩美は
「な、何をなさるんですか…治療じゃ無いんですか?」
 慌てふためく。

 そんな歩美に、猿ぐつわを手に持ち、近寄った宗介が、
「治療だよ…ただ、痛みを伴うとも言ったな…暴れて傷を付ければ、元も子もないだろ」
 そう言って猿ぐつわを、歩美に噛ませる。
 薬箱の中から、手術用の手袋を取り出し両手に嵌め、ピンク色の軟膏チューブを持つ。
「これは細胞活性剤と言って、細胞の修復を強制的に早める薬剤で、皮膚が爆ぜた程度の物なら3・40分で綺麗に治してくれる」
 宗介が歩美の反応を見ながら、話を続けた。
「ただ、活発化する組織修復の痛みは、傷を受けた時の数倍に当たるんだ」
 ニヤリと笑って、歩美に告げる。
 歩美は宗介の言葉に、目を大きく開き身体を揺すって、抗議しようとする。
(あんな鞭の数倍の痛みって!嫌!止めて、止めてーー!)
 全身をピンと張られた状態のため、腰をフラフラ揺するしかできない歩美に、宗介が近づき軟膏を素早く塗り込む。
 歩美の身体は、固定された状態でも跳ねた。
 白目を剥き身体中を小刻みに震わせて、口からは泡を吹き時折ビクビクと跳ねる。
 唯一動く頭だけが、これでもかと暴れ回る。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊