僕の転機
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■ 第10章 究極の飴と極限の鞭9

 突然来客を伝える、玄関のチャイムが鳴る。
 ピンポーン、ピンポーン、ピンポーンと間断無く鳴るチャイムに
「誰だよ…解った出るよ…五月蠅いなー!」
 昌聖がインターホンのスイッチを押すと、映っていたのは美由紀だった。

 猫を想像させる、勝ち気な目を持った少女は、その顔を一変させていた。
 その目の縁は赤く腫れ上がり、唇をアヒルのように突き出して、何処か拗ねているようにも見える。
 不安げな表情でチャイムを押す、その顔はまるで迷子のようだった。
「おいで、玄関にお前達の仲間が来てる。出迎えてやるぞ」
 昌聖の言葉に、来客者を察した2匹は、主人にリードを差し出す。
 リードを受け取ると、悠然と玄関へ向かって歩いて行く、その間もチャイムは鳴りっぱなしだった。

 玄関の内側に、人の気配を感じた美由紀は、チャイムを押す手を止める。
 鍵が外れる音に、息を飲んで、扉が開くのを待つ。
「鍵は、空いたよ。覚悟が決まったら入っておいで」
 玄関の向こうから、昌聖の声が美由紀に届く。
 美由紀は、その言葉を聞いて、真っ直ぐに手を玄関のノブに伸ばす。
 何の躊躇いもなく、玄関扉を開け中に入る。
 玄関の中では、上がりがまちに、昌聖が腰を掛け、右側の土間に美咲、左側の土間に佐知子が正座して手をついている。
 全裸の主と先輩奴隷達に迎えられた、美由紀がその姿を、昌聖の前に晒す。
 美由紀の姿を見た時、昌聖は苦笑いをかみ殺し、質問をする。
「美由紀どこからその格好で来た?
 昌聖の質問に、美由紀が答える。
「はい、学校の玄関横のトイレからです」
 美由紀が即答する。

 美由紀の格好は、制服で首に一つの径が5o程の太い鎖を巻き付け、背中を通して引き摺っている。
 良く見ると、それは学校の使われない備品を置いてある場所への、立ち入りを制限する鎖だった。
「お前…学校の備品を…全く」
 呆れる昌聖に、美由紀は泣きじゃくりながら。
「でも、でも…。みんな見たいなチェーン何て、直ぐに無いし…。綺麗にする事も出来ないし…。どうして…良いか…、分かんなかったから…フエーン」
 最後は、泣き出してしまう有様だった。
 頭を抱える昌聖に、佐知子が目配せで話して良いか聞いてくる。
 佐知子に許可を与えると、佐知子はスッと立ち上がり、美由紀にビンタする。
 そのビンタは、何の加減もない佐知子のフルスイングだった。
 左の頬を打たれて吹き飛ぶ美由紀は、キョトンとした表情に成り、次に怒りを浮かべる。

 しかし、佐知子は美由紀に言葉を、挟ませない。
「貴女ここに、何しに来たの?自分の全てを掛けられないんだったら、ここに立つ資格なんて無いわよ!泣き落としなんて論外でしょ!」
 鋭い叱責を美由紀に浴びせると、クルリと昌聖に向き直り、正座して頭を下げ元の位置に戻った。
(佐知子の忠誠心は、凄いな…思いの外、良い奴隷に成った…)
 昌聖は佐知子に、対する思いを修正する。
 美由紀は佐知子に打たれた事より、指摘された事の方が効いたのか、正座し居住まいを正すと、平伏した。
「近藤昌聖様!私、松山美由紀を奴隷にして下さい!」
 大きな声で、宣言する。
「でっ、…美由紀は、どんな契約書を作って来たんだ?」
 昌聖が頭を抱えたまま、美由紀に質問する。
 美由紀は顔をガバッと持ち上げると、イソイソと制服を脱ぎだした。

 下着も脱いだ美由紀は、その姿を昌聖に晒した。
 全裸になった美由紀の身体には、自分一人で書いた、油性マジックの文字で、大きく[奴隷にして下さい]と下手くそな字で書かれてあり、その股間は、一人で陰毛を毟り取った事が解る程、点々と血が滲んでいた。
 クリトリスと大淫唇まで、一人で瞬間接着剤で固めている。
「美咲さん程、ちゃんとした契約書の文も…。佐知子さん程の、綺麗な物も…。私一人では、出来ませんでした…。でも、これが私の今の精一杯です…。どうか、受け取って下さい…」
 最後まで泣く事無く言い切った美由紀は、頭を下げて震えだした。
 先輩奴隷達と自分の差し出した物の出来に、圧倒的な差が有る事を理解しながらも、自らを動かす衝動を抑えられない美由紀。
 稚拙ながらも自分の思いを、精一杯伝えるしか、その方法を知らず、狂おしさに身を押しつぶされそうに成っている。

 そんな美由紀に、昌聖が口を開く。
「お前は、僕の前に出て来て奴隷契約をするのに、どうして宗介さんに付けられた、ピアスをしてるんだ?」
 昌聖の質問に、美由紀が上体をあげ乳首に着いた、ピアスを両手で掴み。
「御主人様に、私の覚悟を見て頂く為です!」
 言い終えると、両手を勢いよく引き下ろした。
 美由紀の乳首のピアスは、左側は留め具が外れて穴が大きくなった程度だが、右側は完全に乳首の下半分が、千切れていた。
「ひぎーーーっ!私の服従は昌聖様だけに、捧げます…」
 そう言うと、血まみれに成ったシルバーピアスを、土間にソッと置いた。
 痛みに弱い美由紀が、その痛みを越えて、誓った奴隷契約。
 昌聖は、美由紀に向かって頷くと。
「お前を仮の奴隷にしてやる。美咲首輪だ…佐知子は鎖を持って来い」
 2人の奴隷に指示を出し、美由紀を呼び寄せる。
 こうして、3匹目との主従の仮契約が結ばれた。

 美由紀を含めた、3匹の奴隷達を伴い、リビングに戻る昌聖の頭の中は、凄いスピードで動いていた。
(ピンクの細胞活性剤は体内に残しちゃいけ無いから、先ずグリーンの奴で…いや、ブルーの方か…ユックリでも安全な方を選ぶべきだな…奥に塗るには綿棒で良いか…届かなければ、針と糸を使おう…)
 美由紀の乳首の治療方法と薬の選択を、ソファーに座る前に決めた。
 ソファーに座った昌聖は、薬箱からブルーのチューブを取り出し、美由紀を呼ぶ。

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