僕の転機
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■ 第11章 奴隷達の関係2

 その時、2人の身体がさらに、ビクビクと震えた。
「ひーーしんどうすごいだめだめだーめーー」
「あっいや、ゆるして、ゆるして…とまってーー」
 膣内壁を締めれば締めるほど、お互いの仕掛けが働きだし、止まる事のない快楽が押し寄せる。
 そんな2人を見て、美咲は昌聖の言葉を思い出す。
{僕は2時間ばかり、中にいるから…出てくる迄ちゃんと続けるんだ。それで、誰が何回イッたか報告するんだよ}
(死んじゃうよこれ…。まだ5分で、しかも片方だけなのに…。でも、昌聖様の命令は絶対…。この調教で、私に服従を誓わせます…)
 美咲は、これが自分達に課せられた調教で有る事に気付いた。
 このグループを束ねる長で有る事を、示す為の調教で有った。

◇◇◇◇◇

 時間は遡り、昌聖達が学校を後にする頃の会議室では、歩美の今後について会議が紛糾している。
「だから…。彼女自体は、何もしていないんだから…、何も退学なんて…」
「だれも、退学なんて言ってないでしょう。私が言ったのは、あくまで自主退学ですよ…。自主!」
「ですが、それを強要したとなると…、この後の対応にも影響が出ますわ…。最近の親御さんは、恐ろしくてよ…」
「しかしですな、我が校の名前に傷が付いてからでは、またねじ込まれる原因になるのでは?」
 喧々囂々と歩美を退学させる手段を、ぶつけ合う教師達。

 ここには、歩美を庇おうとする者は、一人もいないようだ。
 全て学校や自らの保身のために、いかに歩美を切り捨てるかしか、頭にない。
 そんな中、ただ一人校長は別のことに頭を巡らせている。
「取り敢えず、マスコミや保護者には、事実関係がハッキリするまで、当分の間山田君は自主休校と言う形で処理しよう。山田君もそれで良いね」
 校長が教師達の論議を制し、話をまとめ歩美に質問すると。
「はい…構いません…」
 歩美が答える。

 歩美は、あの後もずっと、職員会議の席に同席させられて居た。
 そして会議の意見をずっと聞かされ、教師達のプレシャーに晒されて居たのだ。
 そんな中、校長の求める自主休校を認める以外、自分がこの学校に残る方法はないと思い知らされた。
 処分が決まり、満足そうに頷くと教師達に解散を告げる。

 校長と教頭以外が退出した後、教頭は校長に語りかける。
「全く、珍しい事だ…。貴男が一生徒を庇うなんて…。どう言うつもりだったんです…」
 教頭の意見に、校長はくくくと笑い
「君も、あの馬鹿どもと同じ考えだったとは…。浅いよ教頭…、考えがね…」
 自分の考えを話し出す。
「マスコミや保護者には、突っ込まれた時、処分をしたと発表すれば良いし。山田君の親御さんからは、庇ったと言う実績になる」
 そこまで話して、またくくくと笑い
「腐っても山田商事だ…。幾らになるかな…。ハハハハッ」
 自分に対する歩美の父親の感謝料を頭の中で勘定する。
「やっぱり…。貴男は、食えない人だ…」
 フッと笑いながら、教頭が呟く。
「何を言う…。そう言いながら、同じ事を考えていただろう…。君もね…」
 校長の意見に、見抜かれたかと言う顔をしながら、笑い合う狸と狐。

 職員室に呼ばれた、歩美は自主休校届けを提出し、教室に戻る。
 自習中の扉を開け、中に入ると一斉に向けられるクラスメートの白い目。
 机に行き、鞄を取ろうとすると鞄は原形を留めておらず、グチャグチャにされていた。
 弱者に対する追い込みは、一般人の最大の娯楽であるように、ここでもその手は変わらないようだ。
 鞄を諦め、隅のゴミ箱に棄てると無言で教室を出る歩美。
 廊下を渡り、靴を履き替えようと下駄箱を開けると、中には大量のゴミとビショビショに濡れた雑巾を突っ込まれた、落書きだらけの靴が有った。
 雑巾を捨て、靴を履き替え、校門に向かうと途中の教室の窓から、大量の水が落とされ、歩美を頭から濡らす。
 教室の窓からは、高笑いする生徒の声が響いている。

 歩美は、こうして自分の全てを失った。
 家庭・学校・友人・信頼・後ろ盾・権力、そして自分自身。
(私って…、お父様が居なかったら…、こんなモノなの…。誰も…、私を必要としていなかったのね…)
 ビショビショに濡れた身体を引き摺り、校門を出る。

 校門を出た所で足を止め、暫く考え込む。
(ううん…、違う…。必要とされてないんじゃない…、憎まれてた…。嫌われてたんだ…)
 歩美は、自分が今まで、これ程人に憎しみを向けられていた事を、初めて知った。
(馬鹿ね…。こんな事に成って…、初めて気付くなんて…。あの人が行ったとおりだわ…、稚拙…)
 歩美の顔は、無表情で何の感情も表しては居ない。
 左に曲がれば自宅だが、歩美の足は、右に向いていた。
(帰ろう…。私の場所へ…。私を相手してくれる…、契約者の元へ…。さいかそうのどれいへ…)
 歩美の心は、ユックリと壊れてかけて居た。
 自分の周りに有った価値観が、一気に音を立てて崩壊したためだ。
(もう…。わたしは…、みんな…、いらないの…、みんな…、いらない…)
 フラフラと歩いて行く、歩美の頭の中には、ただ一人の笑顔が浮かんでいる。
 歩美の父親の失脚を知った後も、唯一優しくしてくれた主人の顔。

◇◇◇◇◇

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