僕の転機
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■ 第11章 奴隷達の関係9

 そこに、美由紀が戻ってきた。
「歩美、寝ました…」
「こっちへ来てくれ、もう少し話が聞きたい」
 宗介が、呼び寄せる。
 驚いて頷く奴隷達に、宗介が今までの事を聞き出す。
「私は、実は、今日の歩美のような様子を、以前にも見た事があります…」
 ポツポツと話し出した佐知子。
「その人は、私の6つ上の人で、優しくて綺麗な人でした…。でも、それは、あの中では、酷い目に合うだけでした…」
 佐知子の言葉に、静かに耳を傾ける2人。
「ある日の夜、その人が、壁に向かって話していました。その人は、その頃、よく独り言を言っていたので、気にしなかったんですが、声が…」
 佐知子は、肩を抱きぶるっと震わせ、
「今日の歩美みたいに…段々小さく成って…発音も…抑揚も無くなって…。朝、みんなが起きた時には…何も話さなくなって居ました」
 佐知子はブルブルと震えていた。
「今思えば、昌聖さんのように声を掛けていればと、本気で思います…」
 佐知子の言葉に、ジッと考え込む宗介。
「昌聖、他に感じた事は無かったか…」
 宗介が、質問を投げかける。
「凄く違和感を感じた…。壊れるなら、衝動的にインパクトのある事柄を繋いで壊れると思うんだけど…」
 昌聖が、探るように言葉を選ぶ。
「思うんだけど?」
 宗介が、昌聖の言葉を繰り返す。
「何か壊れるように、道みたいな物が、作られていたような気がした…。じゃなきゃ、あんな理路整然と崩壊に行かないんじゃないかと思う…」
 昌聖が、思い出しながら話す。
「道が造られてた?…あり得るな…」
 考え込む宗介に、昌聖が続ける。
「それと、これは僕の思い込みかも知れないけど、この先にまだ、何かありそうな感じがする…」
 昌聖が、何か引っかかるけど、良く解らないといった表情で、宗介に言う。

 宗介は、数分考え、立ち上がり。
「ちょっと来い」
 そう言って調教部屋に下りていく。
 調教部屋に入ると突き抜けて行き、あのナンバーロックの部屋の前に立った。
 宗介がキー操作をし、中に招き入れる。
「ここは、システム室だ。普段なら、他人は絶対に入れない」
 そう言いながら、キー操作を始める。
 すると、正面のモニターにリビングでの出来事が、しっかり音声付きで流される。
「このアングルじゃ歩美の顔は、見えないな…。しかし、言葉は全て拾えたか…」
 宗介は、そう呟くと電話をかけ出した。
 電話が繋がり、宗介が口を開くと、宗介の口から流暢なフランス語が流れ出した。
 宗介は、一通り話した後、コンソールを操作した。
 数秒、沈黙が流れ、挨拶をした後、電話を切る。
「今、専門家に見て貰ってる。何かあったら直ぐに解るだろう」
 宗介が、溜息を吐き頭を掻く。

 すると10分後宗介の携帯が鳴り、またフランス語で話す。
「佐知子。歩美の目線は泳いでたか?一点を見詰めてたか?」
 突然、宗介に聞かれ、驚きながら佐知子が答える。
「一点を見詰めてました」
 宗介は、また話し込む。
「歩美の表情は、緊張してた?弛緩してた?」
 宗介の質問に、昌聖が答える。
「どちらでもない。口元だけが緩んでた。瞳は、焦点が合って無いだけで、人形のような感じだった」
 宗介は、昌聖の言葉をそのままフランス語にしたようだ。

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