僕の転機
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■ 第11章 奴隷達の関係10

 数分話した後、宗介が電話を切り昌聖を見る。
 いきなり宗介が頭を下げて、
「すまん!どうやら、お前の機転で事無きを得た見たいだ。怒鳴った事は本当に謝る。許してくれ」
 昌聖に謝罪した。
 昌聖は、宗介の態度に驚き
「そんな、良いよ。気にしないでよ、宗介さん…。たまたま、感じた事が当たっただけだから…」
 昌聖がしどろもどろになりながら、宗介に言う。
「いや、お前の指摘した事も当たっていた。歩美は、マインドコントロールを受けているようだ」
 宗介の言葉に、そのまま聞き返す昌聖
「マインドコントロール?映画なんかで聞く?SFじゃないよね…」
 昌聖が信じられないという表情で聞き返した。
「日本語で言うと、後催眠とか洗脳だ…。そっちは、良く聞くだろ?」
 調教部屋に戻りながら話す、宗介の言葉に
「良くは聞かないけど、聞いた事はある。あの、レモン囓っても甘いって言う奴でしょ…」
 後ろから付いていく昌聖は、笑いながら言い、自分の言葉の途中で[あっ]と気付く。
「そう、あれと一緒で、さらに悪意のある奴だ…」
 宗介がそう言いながら、呟く
「これで、空白のピースが埋まって来た。そう言う事か…」
 宗介は、考え込みだした。

 すると、美由紀が大きな声を上げる。
「あーっ!歩美が…」
 その声に、全員が振り向く。
 美由紀はリビングを写すモニターを見ていた。
「今入り口を横切って歩いて行きました。多分…玄関です」
 途端に4人の顔から血の気が引いた。
 宗介達は、入り口に向かい走り出した。
 家の外に出て、3方に散る宗介達。
 路地を曲がり、右手を見る、居ない。
 反対側を振り向き、左手を見る、人影を見つけ走り寄る。
 居た、フラフラと歩く歩美は、人通りの少ない方を、選んで進んでいるようだ。
 携帯を取りだし、宗介にコールする。
 美咲は、佐知子に電話を始めた。
「宗介さん!川だ!川に向かって歩いてる」
 そう言うと、携帯を切り、全速で走る。
 しかし、如何せん、走り慣れていないせいで、距離が縮まらない。
 フラフラと歩く、歩美は突き当たりを、右に曲がる。
(やばい、あの角の先は、橋だ…。50mも無い…間に合え…)
 角を曲がると、歩美は橋の真ん中で、欄干の直ぐ手前に立っていた。

 昌聖は、必死な声で呼びかける。
「歩美!動くな!」
 ピタリと動きを止め、ゆっくり振り向く歩美。
 必死に走る昌聖の目に入った、歩美の表情は、お面のように無表情だったが、両の目からは涙が溢れていた。
 昌聖との距離が10m程になった時、顔を昌聖に向けたまま倒れ込むように、川に落ちてゆく、歩美。
 歩美が落ちた後、それに向かって飛び込む昌聖。
 2人が落ちた場所にたどり着いた美咲は、必死に川面を探す。
(この高さからだと、よく見えない…。水嵩も普段より増えてるわ…)
 欄干から川面までの高さは、5m程で水嵩も平年を上回る雨量のため、ここ数日増えている。

 必死に探す、美咲の横を凄い勢いで、宗介が通過し、水面に飛び込む。
 数秒後、昌聖と宗介が、グッタリとした歩美を抱え、川面に顔を出した。
 泳いで対岸の浅瀬に進み、人工呼吸を開始する。
 宗介が歩美を背負い片手を上げて、無事を知らせると、美咲の後ろからパチパチと手を叩く音がして、振り返る美咲。
 美咲の後ろには、佐知子が涙を流しながら立って、手を叩いていた。
 美由紀は、残念ながら昌聖達の活躍を見る事が出来なかった。
 5人が宗介の家に、戻った時玄関で膝を抱えて拗ねていた。

◇◇◇◇◇

 全員、家の中に入ると、美咲は真っ直ぐバスルームに走って行く。
 バスルームに消えると、直ぐに大量のバスタオルを抱えて、戻って来た。
「はい、宗介さん…。貴女達は、歩美を拭いてあげて」
 それぞれに、バスタオルを渡しながら、自分は昌聖に擦り寄り
「昌聖様ずぶ濡れですわ…。今、お拭きします…」
 昌聖の身体を丁寧に拭い始める。
 宗介は呆れて、玄関先に洋服を脱ぎ捨てると、携帯を取りだしリビングに向かう。
 美由紀は、その後ろ姿に見とれて居る。
 それもそのはず、宗介の鍛え上げられた身体は、鋼のように引き締まり、隆々と筋肉がうねっている。
 佐知子に突かれて、仕事に戻る美由紀は、ほんのり頬を染めている。
 昌聖は、そんな美由紀の態度を見て、自分の身体に目線を向け溜息をつく。
(同じ男なら…ああ成りたいよな…でも、難しいよな…)
 バスタオルの下で落ち込み、気を取り直すまでガシガシと頭を拭く。
 歩美の洋服を脱がした佐知子達は、全裸のままの歩美を抱えて、リビングに向かう。
 昌聖も濡れた、制服を脱ぎ、美咲と共にリビングへ向かった。

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