僕の転機
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■ 第12章 落胆6

 帰りの車の中、昌聖は、宗介から手渡された資料に目を通しながら考えていた。
(世界的規模の秘密結社とそれに敵対する、犯罪組織…。全然リアル感が無い…。しかも僕の両親がその組織に殺されて、僕が親だと思っていたのは、お爺ちゃん…。悪い冗談だよ…。僕は、この前まで虐められてた高校生だよ…。話しが、飛躍的すぎだよ…。でも、今日見た事は、真実だもんな…)
 ヨボヨボの老人だと思っていた、父さん(爺さん)が宗介との話を終わらせ、スーツに着替えると立派な老紳士に早変わりし、町に消えていった。
(あんな、キャラだったんだ…。でもそう言えば、昔からヨボヨボだったけど、病院とか行ってるの見た事無いな…。まったく…)
 天井を見詰め、溜息を吐く昌聖。
(組織図と意味は解ったけど、その国際的な秘密結社の幹部が、2人も身近に居るなんて、どんな都合だよ…)
 昌聖は気付いて居なかった、幹部の関係者だから、幹部が近づくという事に。

 昌聖の家を出た宗介は、上機嫌で自宅に向かって居た。
(昌聖の件も片付いたし、仕事も思ったより早く終わった…。後は、報告書に目を通して、帰るだけだな…)
 宗介が車の中で考えていると、携帯が鳴った。
「もしもし。お前よくもやってくれたな…」
 携帯に向かって怒るが、顔は機嫌が崩れていない。
『宗介ご愛敬よ…言い忘れた事が有ったから、電話したのよ…。今日の娘の催眠、解けきって無いわよ…』
 宗介は、ディディェの言葉に急ハンドルを切り、ブレーキを踏む。
 横に乗った昌聖は、左の窓ガラスに頭をぶつける。
「どう言う事だ!冗談で済まされる、類の話じゃないぞ」
 宗介の表情は、一転険しい顔に成っていた。
 その変化に、頭をぶつけた文句も言えなくなった昌聖。
『だって。あれ掛けたの、多分ウィザードリィークラスよ。簡単に外せる物じゃないわ』
 宗介の顔が苦虫を噛み潰したように成っている。
「じゃぁ、どうするんだ…。まだ、危険は去って居ないとでも言うのか?」
 宗介の声は、怒鳴り声に変わっていた。
『そうね。でも有る条件を満たせば、それは解消するわ。あの坊やの存在…、彼が言った言葉が、以前の後催眠を覆ってると思って』
 ディディェの言葉に判然としない宗介。
「だからどうしろと、言うんだ」
 苛立つ宗介にディディェが答える。
『平たく言えば、坊やの所有物に成ってる間は、爆発しない。彼女には、そちらの方が、強い暗示になって残ってる事が原因よ』
 ディディェの言葉に、落ち着きを取り戻す。
「じゃぁ、昌聖の奴隷に成ってれば、歩美は暗示が発動しないって事だな?」
 ディディェに質問する。
『そう言う事。もう本部には、報告しておいたから。これは、貸しよメルシー』
 ディディェが電話を切る。

 暫く、電話を見詰めて、ポケットにしまう。
 今の会話を聞いていた昌聖も真剣な表情だ。
「是が非でも、お前に組織に入って貰わなくちゃ成らなくなった…」
 宗介の言葉に、唾を飲み込み、頷く昌聖。
 車を道路に戻し、家路に就く宗介。
 その表情は、複雑な物だった。

◇◇◇◇◇

 宗介と昌聖は、家に着いた。
 どちらも重い足取りで奴隷達の待つ、宗介の自宅の扉を開ける。
 リビングに入った宗介と昌聖は、その惨状に目を覆った。
 少女達は、制服のまま自分達の身体を慰め合っていたのである。
「あっ、お、お帰りなさいませ…」
 美咲がはだけたブラウスの胸元を合わせながら、スカートの捻れを直す。
「おか、お帰りなさいませ…昌聖様…。あ、宗介様…」
 佐知子が乳房を左手で押さえ、右手でブラウスを手探りで探す。
「お帰りなさいませ…御主人様〜」
 美由紀は、スカートを履きながら、ブラウスを羽織る。
「何をしてるんだお前達は…」
 昌聖は溜息を吐きながら、美咲達をたしなめる
「いえ…昌聖様達のお帰りは、6時だと聞いていたモノで、少し親睦を深めようかと…」
「はい…お姉様とうち解けてこれからの役割について等…」
「美由紀は、新入りですから色々と教えていただこうかな〜と…」
 少女達は顔を真っ赤に染めながら、しどろもどろに言い訳をする。
「もう良いよ…それで、仲良く成れたの?」
 昌聖の質問に[はい]と3人がハモる。
 宗介は、4人の遣り取りを見てクスクスと笑っている。

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