僕の転機
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■ 第12章 落胆11

 風呂から上がると奴隷達は、地下の衣装部屋に集まりそれぞれのドレスを選ぶ。
 美咲は背中の大きく開いた真っ赤なパーティードレス、佐知子はシックなブルーのイブニングドレス、美由紀はライトグリーンの可愛らしいドレスを全裸の上から纏ってストッキングをガーターで留める。
 ヒールをそれぞれが履いて、衣装部屋を出ると、宗介が用事を済ませて帰ってきて、昌聖と立っていた。
「ヒュー…やっぱり女は着る物で変わるね…。ここまでしたらメイクもしてみないか? まだ時間があるし、どうだ昌聖?」
 宗介の言葉に昌聖は賛同しつつも質問する。
「それは、良いんだけど…メイクしたこと有るのみんな?」
 昌聖の質問に奴隷達は怖ず怖ずと答える。
「私、やったこと無いです…まだ高校生だし…」
「私も、本格的な物は無いです…」
「私は、有りますけど…。どうしても似合わなくて…下手くそなんです…」
 それぞれが、不得手だと告白する。

 すると宗介がフフフフッと含み笑いをしながら、腕組みし一歩前に進み出て
「俺に任せろ!」
 胸を昂然と張り自慢げに言う。
「え〜っ…宗介さん…出来るの…」
 昌聖は、胡散臭そうに宗介を見詰め、首を捻る。
「ばっ、調教したる者、メイクの一つや二つ出来なくてどうする…。まあ任しとけって…」
 そう言いながら、宗介は奴隷達を伴い、衣装部屋に戻っていった。
 宗介達が衣装部屋に入って小一時間すると、扉が開き出てくる。
「出来たぞ昌聖…会心の出来だ…見てみろ。さあ、出ておいで」
 宗介に呼ばれて3人が出てくる。

 昌聖は、その姿を見て口が開きっぱなしに成ってしまった。
 美咲は、ドレスに合ったスカーレットのルージュに、淡いブルーのシャドーを合わせ、睫毛や目尻に薄いラメが入って居て、瞳全体がキラキラと輝いて、縦に緩やかなウェーブの掛かった髪がとても大人びて見え、とても女子高生には見えなかった。
 佐知子は、髪をアップにまとめ上げ、全体に大人しめのメイクに押さえているが、真っ赤なルージュがその童顔を際だたせ、とても淫靡な雰囲気を醸し出し、アンバランスの中の安定を演出しゾクッとする程妖しかった。
 美由紀は、キュートな若々しさを全面に押しだしながら、髪の毛全体にボリュームのあるウエーブに仕上げ、その猫のような目を強調するアイラインとピンクのルージュが、エロティックで何処か幼い獣のような印象を与え、見る者を圧倒する。
「すっげー…宗介さん…凄いや…」
 昌聖は、ポツリと呟いた。
「おう! 素材が良いからな…。俺も力が入った…でも上出来だろ」
 宗介が昌聖の横に立ち、自分の仕事を満足げに見詰める。
「あ、あの…恥ずかしいです…そんなに見詰めないでください…」
「何か…違和感が有ります…私じゃないみたいです…」
「でも宗介さん凄いです…こんなに変わるなんて、ビックリです…」
 それぞれ違う反応を見せつつ、まんざらでもない奴隷達。
「どうだ…お前はこんな良い女達の御主人様なんだぞ…世間の男が知ったら袋だたきモンだぞ…」
 宗介の冷やかしも、一切耳に入ってこない昌聖。
(綺麗だ…美咲も佐知子も美由紀も…本当に綺麗だ…そして、それを作れる宗介さんは、本当に凄い…僕も宗介さんのように成りたい…いや、成る!)
 奴隷達の姿を見て、自分に課せられた責任と課題に改めて目覚める昌聖だった。
「お前達! もっと自分の姿をアピールしろ! 折角のドレスとメイクが泣くぞ! 胸を張れ!」
 昌聖は自分に対する叱咤と共に、奴隷達の不安や羞恥心を払拭する。
「はい、昌聖様。申し訳御座いません」
 奴隷達は一様に姿勢を正し、胸を張り色香を振りまいた。
「良し…その気持ちと立ち位置を忘れるな、お前達は僕が認める良い女だ! 背中を丸めたり人目を避けたら、きつい罰を与えるからな」
 昌聖は少女達に命令する。
「はい、昌聖様。承知いたしました、昌聖様のお心に沿うように振る舞います」
 少女達は深々と礼をしながら、昌聖の命令を受け取った。
「さあ、そろそろ時間だ…爺さんが待ってる…行こうか」
 宗介が昌聖に言うと、
「うん…これで僕のこれからが決まるんだね…気合いを入れなきゃ…」
 昌聖は正面を向くとキッと視線に力を入れた。
「行くぞ付いて来い」
 昌聖は少女達を従え、調教部屋を出て玄関に向かう。
「さて…あの爺さん一筋縄で行くかな…まあ、成るようにしか成らないか…」
 宗介が一人考えていると、昌聖の呼ぶ声がして、慌てて走り出す。

 5人を乗せた車は、ホテルの車寄せに滑り込み停車する。
 ドアマンが扉を開いて少女達が降り立つ。
 扉を開けたドアマンは、次々に降りてくる美女に度肝を抜かれ、硬直する。
 3人がその場に立った時ざわめきが起こり、一斉にその場の視線が、少女達に集まった。
 彼女達の醸し出す美貌と色気そして妖艶さ、全てに於いて他の者を圧倒して、見る物全ての時間を止めた。
 その女性達をエスコートする、美貌の青年と肥満児約一名。

 その場にそぐわぬ1名を伴いながら、1団はエレベーターへ向かう。
(くそ…!この中で僕一人だけ仲間はずれじゃん…。あいつらの目線のムカ付く事…)
 昌聖は、エレベーターの中で一人不機嫌になっていた。
 いち早くそれに気が付いた美咲は、昌聖に擦り寄り小声で耳打ちする。
「昌聖様は、私達の所有者様です…。私達は昌聖様の魂に、惹かれているのですからお気になさらず…」
 昌聖を気遣い囁いた後耳たぶに口づけする。
「おい…昌聖…奴隷にそんな気遣いをさせるな…俺の写真を見ただろ…今じゃない、先を目指せ!」
 宗介の叱咤に気持ちを入れ替え、決戦の場へ向かう。
 エレベーターが開きレストランに着くと、ボーイに予約の旨を告げる。
 奥からフロアーチーフらしき初老の男が現れ、恭しく案内を始める。
 レストランでもパニックに近いざわめきが起こり、それは奥のVIP BOXに消えるまで続いた。

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