僕の転機
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■ 第12章 落胆12

 VIP BOXに着いた5人を迎える老紳士。
 昌聖のお爺さんは、5人を見て相好を崩す。
 静かに会談が始まるかに見えた時、
「あ〜っ! お爺ちゃま! 昌聖様のお爺さんだったの? …やだ…私2回もフェラしちゃった…」
 美由紀は、見覚えのある老人に驚き、精液集めの調教で出会った事を告げた。
「は〜っ? 何それ…父さん…じゃなかった、爺ちゃん…どう言う事…!」
「なに! まさか、マスター自身があんな事に参加したなんて…。こりゃ問題ですよ…」
 昌聖と宗介が同時に突っ込む。
「いや…ほら…宗介がな…。面白い事をするって聞いたもんで…いや…面目ない」
 お爺さんは、しどろもどろになった後、頭を下げた。
「しかし、みんな驚くほどの美しさじゃな…。これが、3人とも昌聖の奴隷か?」
 顔を上げ話題を変える爺さん。

 昌聖の爺さんは、3人の顔をマジマジと見詰め、真ん中に座る美咲に戻る。
 するとニヤリと笑い、宗介に話しかけた。
「宗介…。お前、今回の件。話しは、どこから来た…」
 爺さんの質問に、宗介は首を傾げ答える。
「へっ? 普通に本部からヨーロッパ支部経由で流れてきたけど?」
 宗介の答えにくくくくっと笑いながら、美咲に向き直り。
「お嬢ちゃん、爺の事憶え取るか…?会うのはこれで3度目じゃ…」
 唐突に投げ掛けられた爺さんの質問に、戸惑い首を振る美咲。
「なに? 爺ちゃんまさか、美咲にも手を出したんじゃないだろうね!」
 昌聖が腰を上げて、飛びかかろうとする。
「ばか…このお嬢ちゃんにあったのは、小さい小さい頃じゃ…(まだ、この子の両親が生きている。な…)」
 爺さんが呟く。
「あの…。私の事をご存じなんですか…?それは、いつぐらいの事ですか…?」
 美咲も気になり、質問を投げ掛けてくる。
 しかし、爺さんはその後、黙して語らなかった。

 その後食事が運ばれ、最初はぎこちないながらも、30分もすると歓談に変わった。
 昌聖は、爺さんのトークの妙技に舌を巻き、少女達は笑いが絶えない晩餐だった。
 一人宗介だけが、何かをずっと考えていた。
 食後のコーヒーが出た時、爺さんがポツリと呟く。
「宗介。お前もまだまだよのー」
 宗介が顔を上げた時には、爺さんは別の話題を振り、盛り上がっていた。

 全ての食事が終わり、審判の時が来た。
「儂にすれば…、昌聖お前は合格じゃ…。但し、この決定が受け入れられるかは、別問題じゃ…」
 爺さんの言葉に、宗介と昌聖が食って掛かる。
「どうしてですか? 保護者であるギミックマスターが了承すれば、全てはOKの筈…」
「なんで…、どうして駄目なの? …この子達じゃ不満だって言うの?」
 2人の言葉を何処吹く風と受け流し
「今に解るわ…」
 そう言うと1人席を立ち
「馳走になったな宗介…。じゃあまたな…」
 そう言ってレストランを出て行った。

 後に残った5人の間に、沈鬱な雰囲気が流れる。
「どう言う事だ…。くそ…、これ以上ない準備は、したはずだ…」
 宗介の言葉に、昌聖は項垂れ
「宗介さん…。やっぱり僕のせいかな…?僕がこんなだから…」
 昌聖の言葉に
「そんな事は断じてない!そんな理由なら、俺はお前を誘ったりはしていない!…すまん。…今日は解散しよう」
 宗介は、自分の中ですら解決できない問題に苛立っていた。

 ホテルのロビーに降りた5人は、帰路に着こうとしたが、宗介はタクシーを手配し4人を乗せる。
「昌聖…。悪い先に帰っててくれ…、解散しても、家を使っても構わない…。俺は、このままじゃ終われない…」
 そう言って夜の町に消えていった。
 宗介の家に着いた4人も、重い雰囲気でその後の事を決め兼ねていたが、昌聖の
「駄目だ…。こんな気分でお前達を相手にする訳にはいかない…。今日は、解散だ…」
 言葉に、3人とも頷く。

 そして、制服に着替え終わった3人を送り出した昌聖は、宗介の帰りを待つべくソファーに座り込み、テレビを付ける。
 テレビでは、山田商事の犯罪行為は、全て副社長の村沢の指示で営業本部長の歩美の兄が行っていた、と報道している。
(宗介さんの組織が動いてるんだ…。世の中って、一握りの都合で動いてるんだな…)
 昌聖がそんな事を思いながら、テレビを見ていると、ピピピピと言う警告音と共に、テレビの画面が変わる。
 テレビの画面には、庭から侵入しようとした、ライトグリーンのドレスを着た美由紀が植え込みに引っかかっている。

 すると、次に画面が切り替わり、勝手口を開けようと四苦八苦しているブルーのドレスを着た、佐知子が写る。
 最後は、ピンポーンと正面玄関のインターホンを鳴らす、真っ赤なドレスの美咲。
 昌聖は、くっくっくっと笑いを込み上げ、涙を流した。
(そうだよ…。僕にはこいつらが居る…。後…、何も必要無いや…。ごめんな、みんな…)
 昌聖は、奴隷達をそれぞれ回収した。

 回収した奴隷をリビングのソファーの前に並べて、昌聖は静かに質問した。
「お前達今日は解散だって言ったろ…。それに制服に着替えたはずなのに…、何で今ドレスなの…」
 昌聖のゆっくり、落ち着いた言葉に
「はい。昌聖様があまりに落ち込んでらしたので、私で気張らしして頂きたいと思い…。戻って来ました…。ドレスは…、昌聖様に喜んで欲しくて…」
「私も、昌聖様を少しでもリラックス出来ればと思い…。ドレスは…、昌聖様に似合うと言って頂いたので…。お借りしました…」
「美由紀も…、ご主人様が少しでも元気になれば良いかな〜と思って帰って来ちゃいました。…ドレス破れちゃったどうしよう…」
 落胆した昌聖を口々に気遣う奴隷達に、胸が熱くなり、昌聖はソファーから床に跪き、3人をきつく抱き締めた。

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