僕の転機
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■ 第13章 僕の転機5

 ソファーには、昌聖と美咲が座り、ソファーにもたれ掛かるように、佐知子と美由紀が床に座って、昌聖の正面に歩美が正座していた。
 正座した歩美は、昌聖に求められ、自分の身に起こった経緯を話し出した。
「御主人様がお帰りに成られた後、私達もホテルを出て、自宅に戻りました」
 俯きがちに、記憶を探るような表情で
「次の日の早朝、私を迎えに組織の人が来て、目隠しをされ1時間ほど車で走り、調教部屋に入れられました」
 歩美はポツリポツリ、話し出す。
「着いて直ぐに、私は着ている物を脱がされて、この入れ墨を入れられました」
 歩美は下腹部を指差して、続ける。
「この意味は、組織の奴隷、極東の350273番だそうです…」
 昌聖はその数に驚いた。
「そして、それが終わった後は、私はもう物でしか有りませんでした。物のように扱われ番号で呼ばれました」
 歩美は、淡々と話しているが、身体が小刻みに震えている。
「一日18時間、所有者になる方のために口、オ○ンコ、アナルを開発され続け、寝ている時も睡眠学習で、物としての心構えや作法を徹底的に教え込まれました。気が触れそうになると、心理療養士が来て思考を拡散していきます」
 歩美の瞳からボロボロと涙が流れ落ちている。
「食事も身体の中を変化させる調教でした。薬品を混入され皮膚の質や脂肪の質を柔らかくし、快感中枢を刺激するように、催眠や針灸もされました。私の身体は、今では有り得ないくらい、感じるように変えられました」
 歩美は、腕をユックリとさすり俯く。
「催眠術を使用した調教では、所有者の言葉に身体が意志を越えて、反応するように何重もの暗示を掛けられ、言葉だけでどんな風にも反応させられるように作り替えられました」
 歩美は嗚咽を漏らし始めた。
「気が狂う事も、人間として生きる事も、死ぬ事もあそこにいる間は出来ません。組織の人達は、あそこを加工所と呼んでいました」
 歩美は一つ大きく啜り上げ、
「あそこは…工場です…人の形をした肉人形を作る…」
 声を詰まらせながら、一息で言った。
「そして出荷が決まり、物としての最終加工がこれです」
 乳首とクリトリス、それに大淫唇のピアスを指差す。
「処置を施され催眠術師に、加工所以前の記憶を、完全に封印されて出荷されるんですが、私の時は誰かの指示で、解除のキーワードも植え付けられました」
 歩美がそこまで話すと、フーと一息吐き昌聖を見詰める。
「そして御主人様に、催眠を解いて頂き奴隷の端に加えさせて頂きました」
 歩美はそう言うと深々と一礼をした。
「美咲…。もう歩美を許してやれ…、こいつは充分に罪を償った…」
 昌聖は美咲に、ポツリと呟いた。
「私は今では歩美を恨んではいません…むしろ感謝しています。あの生活が有ったから、私は昌聖様の奴隷に成れたんですもの…」
 美咲は昌聖の腕を、キュッと捉まえニッコリ笑って言った。
「私も美咲様と同意見です…歩美に脅されたのも少しも気にしていません…今が幸せですから…」
 佐知子も目を伏せながら、同意する。

 一人だけ歩美に脅された過去のない美由紀が、いじける。
「美由紀は…脅されてないけど…みんなと…一緒だもん…」
 ブツブツと呟く、美由紀の頭を昌聖が優しく撫でる。
 美由紀はゴロゴロと昌聖の足に縋り付いて、顔を擦りつける。
 それを見ていた、佐知子はソファーの後ろに回り込み、首に抱きついて自慢の乳房を押しつける。
 美咲は、昌聖にしなだれかかり、シャツの隙間から手を差し込み、昌聖の胸を愛撫する。

 あっと言う間に昌聖に甘え出す3人を、呆気に取られた表情で、歩美が見ている。
「フフフッ驚いたか?これが僕の意志…。甘える時はとことん甘え…、罰は思いっきり激しくだ…。憶えて於いて」
 昌聖が微笑みながら、歩美に話した。
 どうして良いか解らない歩美に、手を差し伸べる昌聖。
 昌聖の足の間に膝立ちになった歩美は、何を望まれてるか理解し、手をチャックに伸ばそうとする。
 すると、昌聖は歩美の手を制止し優しく首を振ると、歩美の頭を優しく抱きかかえ、お腹の上に載せると、頭を撫でる。

 歩美の思考は、一瞬停止した。
 自分の教わった事に、こんなモノは存在しなかったからだ。
 驚く歩美の心の隙間に、昌聖の声が優しく響く。
「良いんだ…力を抜いて…甘えなさい…」
 昌聖の命令で、歩美の思考は命令を即座に受け入れる。
 しかしその感触は、歩美の今まで受けてきた命令と違う反応を身体に起こさせた。
 歩美の身体は小刻みに震え、全身がおこりを起こしたようになり、歩美の目は大きく見開かれていた。

 昌聖はそんな歩美に、優しく優しく語った。
「良いんだ…心を解放しなさい…我慢しなくても…良いんだ…」
 昌聖の言葉を聞いた歩美は、泣き出した。
 あらん限りの声を振り絞り、大泣きした。
 何時までも何時までも途切れぬ涙。
 その間昌聖は、優しく歩美の頭を撫で続けた。

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