僕の転機
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■ 第13章 僕の転機11

 その頃地下のコントロールルームで、大の男が3人集まって密談をしている。
「ねえ…そろそろ行かなきゃ、雰囲気的にやばく無いっすか?あの目かなり本気だよ…」
「フェッフェッ…昌聖も昌也と一緒で奴隷に甘いわい…まだまだ…ほんに毛の生えそろわんガキだ…」
「んだぁ〜…もう止めちまうのか?…詰まんねーな…」
「そんな事言ってると、本気で妹さん口聞いてくれなく成りますよ…」
「構わねえよ…あんなデブの奴隷になる奴なんざ…知ったこっちゃねぇ」
「こりゃ!デブは言い過ぎだ…甘ちゃんでも儂の可愛い孫だぞ!」
「良いから!こんな所で言い合ってないで!本気で考えて下さい!(全くガキじゃ無いんだから…)」
「ちっ、行くか…世話の焼けるお子ちゃま達だ…」
「本当は、昌聖に嫉妬してるだけでしょ…」
 宗介の言葉に、睨み付ける優瞬、それを後ろで笑う爺さん。
 3人は揃ってコントロールルームを後にする。

 場所は変わって、リビングの5人。
「歩美…お前は僕がずっと最後まで、可愛がってやる…ううん…この先4人でお前の事を大事に愛してやる…」
「そうよ…昌聖様の言うとおり…私達が貴女の事を支えてあげる…」
「ええ…私もお姉様と同じ意見…私も出来る限りの事をするわ…」
「あたしも、あたしも一緒よ!これからも、仲良くしていくわ!」
 5人は歩美を中心に堅い結束で結ばれる。

 そこに現れる今回の悪役。
「はい、はい、はい友情ごっこは終わりね!宗介お前、おかしいぞ…こんなのを鍛えてどうにか成ると本気で思ってる?」
 パンパンと派手に手を叩きながら、優瞬が登場する。
「ええっ、一般人のレベルから見ると、昌聖は突出しています。鍛えれば必ずマスターレベルに届きます」
 宗介が優瞬に頭を下げながら言う。
「爺の目から見ても、贔屓目なしに儂の跡を継げるのは、こいつ位しかおらん…」
 爺さんが宗介に同意する。

 なにが起こったか、全く解っていない5人に、宗介が
「昌聖…お前の最終試験だったんだ…これ…」
 頭をかきながら、呟く。
「はぁ〜〜っ…って、いつから〜っ!」
 昌聖は大声で、宗介に聞き返す。
「試験自体の始まりは…宗介の登場からだ…しかし、最終試験の始まりは、ほれ、その男の登場からだ…」
 爺さんは、優瞬を指さしながら言った。
「この試験を申し込んだのは、宗介。推薦人がお前の爺さん。そして試験官は日本支部。採点官が俺」
 そう言って宗介を指し、爺さんを指し、地面をさして、最後に自分を指さす優瞬。
「事の起こりは、普通に以前言ったとおり何だが…途中でこの人が面白がって、趣旨が変わって…昌聖すまんな…」
 宗介が頭を下げ優瞬を指さすが、昌聖の頭はまだ停止したままである。
「お兄ちゃん…どう言う事なの…ちゃんと説明して…でないと…私本気で怒るわよ!」
 美咲が優瞬に怒りの目を向け、問い質す。
「おいおい、可愛い胸揺らしながら怒るなよ…要はこの僕が、組織に入ってそれなりのポジションに就けるかどうかの試験だ…。言ってみれば採用試験、平で入るか幹部で入るかの差だ」
 昌聖を指さしながら、優瞬が言った。
「そんな事のために…そんな事のために…あんたは、歩美の人生を無茶苦茶にしたのか!」
 昌聖が身を翻して、優瞬に掴みかかった。
 優瞬はそんな昌聖に一瞬で威圧を掛ける。
 しかし、昌聖は動じず優瞬の胸ぐらを掴む。

 だが、昌聖の行動も其処までだった、優瞬の右手が動いて昌聖をはじき飛ばす。
 吹き飛んだ昌聖に、美咲が飛びつき安否を気遣う。
 しかし、昌聖は美咲を押しのけると、再び優瞬に飛び掛かった。
 優瞬の出す威圧感は、以前の獣のようなモノとは別次元に成っていたが、それでも昌聖は怯む事をしなかった。
(こいつただの馬鹿か…それとも…)
 優瞬が考えたその瞬間、昌聖の手が優瞬の頬を掠る。
 そのときの昌聖の目の奥を見て、優瞬は決意した。

 飛び込んできた昌聖を再びはじき飛ばした優瞬は、宗介に目配せをする。
 三度飛び掛かろうとする昌聖は、自分の体が動かない事に驚く。
「そうなるように打ち込んだ…俺とお前ではこれ程違う…この差を乗り越えてから、俺に文句を言え!」
 優瞬の言葉に、昌聖は歯を食いしばり立ち上がった。
 そして、優瞬に向かって一歩踏みだし、意識をブラックアウトさせた。

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