ボクの中のワタシ
羽佐間 修:作

■ 第1章 目覚め3

 ― ブログ


――明菜、、、

 遅い昼食を摂ってオフィスに戻ると、ビルの入口で明菜とばったり出くわした。

 別れて以来、何度か仕事で顔を合わせた時と同じで、明菜はプイっと顔をそむけ立ち去っていく。

――ふっ。 僕は浮気男だよっ

 何となく寂しくて時々頭をもたげた明菜への未練を『こんな身体で会ったら何を言われるかわかったもんじゃないしな』と自分に言い聞かせて心を静めていたのももう過去の話だ。

 再び目覚めてしまった女装の魅力に竜之介は夢中になっている。 そして何より絶対人には知られたくない女の女装してするオナニーの快感をしばらくは失いたくない。

 別れてすぐ、どうせならと、女装するたぴに気になっていた脛毛や腋毛をすべて綺麗に剃ってしまった。 もともと体毛は薄く、髭も殆ど生えない体質なのだが、今ではショーツからはみでる体毛が無様に思えて、ビキニラインまで綺麗に処理するようになっている。

 足全体の無駄毛を処理して初めてパンストに足を通した時、そのすべらかな感触のなんともいえない気持ち良さが竜之介を虜にした。

 女装を再開したした頃は誰に見られるわけでもないのに脛毛を隠すために濃い色のパンストを選んで履いていたのだが、今ではほとんど透明に近いベージュのストッキングが大好きで膝からまっすくに伸びたストッキングに包まれた足を眺めるのがお気に入りの時間だ。

 幼い頃から凝り性で、何にでもとことん突き詰めるタイプの竜之介は、化粧方法が載った女性誌を買い込み夜毎、”女性の顔を造る”ことに没頭していた。

 使い方はもちろん呼び名すら分からない様々なメイク用品や洋服、下着を片っ端から通販で買いまくっている。

 自分で身につけることを想像しながらネットサーフィンをすることの楽しさにすっかりはまっていた。

 今日も、宅配業者から通販サイトで購入した商品が届いているとメールがあった。
――どれが届いたんだろう?!

 目につく物をやみくもに注文しているのでどの商品の配達通知なのかわからなかったのだが、小包を開封し、身に付ける時のトキメキを思うと気もそぞろだ。

 だが竜之介のマンションには宅配ボックスがなく、両隣の住人とはあいさつ程度しか交わさないので預かって貰うわけにもいかず、配達してもらって手にするのは週末になる。

 今夜はどうしても待ちきれなくて、仕事を早々に切り上げ宅配の集配センターに寄り道して小包を受取って帰宅した。

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