ボクの中のワタシ
羽佐間 修:作
■ 第2章 新しいボク3
- コメント -
金曜の夜、日付が変わる頃に竜之介はマンションに戻り、バスタブの湯の栓をひねった。 初めての女装外出から1週間経った。
待ち遠しくて仕方がなかった明日の買い物に備え、丁寧に身体の手入れをするつもりだ。
こんどこそ自信を持って女の子として一人で買い物に出かけられる! その愉しみを休日出勤なんかでつぶされたくない一心で、竜之介はこの一週間、毎日遅くまで残業して、押し気
味になっている開発案件に取り組み、完全Offの週末を確保した。
お湯を張っている間にブログのコメントのチェックをしようと、パソコンを立ち上げた。
寄せられているたくさんのコメントに、いつものように一人ずつに丁寧な返信コメントを書いていく。
Hit数が飛躍的に伸びているのは、写真の出来栄えもさることながら、この返信コメントにもその因があると思っているので、竜之介は遅れながらでも必ず書くようにしていた。
《ピーッ、ピーッ、ピーッ》
バスタブの満水アラームが鳴った。
竜之介はウキウキした気分で慌ててバスルームに向かう。
リムーバーを塗り、一週間ぶりに股間のタックを解く。 あらわになった陰のうの皮膚に伸びかけた陰毛がプツプツと浮いていた。
ゆったりとお湯に浸かり、ボディシャンプーで身体をくまなく洗ってから全身のムダ毛を丁寧に処理をした。
風呂上がりの火照った身体にローションをたっぷりと擦り込み、しっとりとした肌触りに竜之介は満足を覚える。
可愛いパジャマに着換え、再びパソコンの前に座った。
残りの返信コメントを書いてから、先週のネットカフェでの記事を書くつもりだ。
先週の日曜日にカフェから戻って直ぐに公開したくて仕方がなかったのだが、週に一度の記事更新をブログの決めごとにしていたし、金曜日にも更新していたので今週のネタするつもり
で書かないままにしていた。
つい取り込んでいたカフェでの写真を開いて見てしまうと、一週間前のドキドキが蘇り、いまだにワクワクしてしまう。
――ダメダメ! 先にちゃんと返信書いちゃわなくっちゃ
竜之介は誘惑に負けず、次々と寄せられたコメントに返信を付けていく。
「ん?!」
時々寄せられる非公開設定で書かれたコメントの中にずいぶん長文のものがあった。
「ホリグチ、、、 初めての人だ、、、」
読み始めると竜之介の顔からみるみる血の気が引いていく。
「うそだろ?!」
<コメント 始め>
たっち様
はじめまして。
堀口と申します。
先日、私が利用したネットカフェ・プレシオ元町店のブースで差したままになっているメモリスティックを見つけました。
その中にこのサイトに掲載されている画像と同じファイルが多数記録されていましたので、貴方の物ではと思いましたので書き込みします。
気づいた時にお店の方に渡せばよかったのですけれど、ついつい中を開いてしまいました。
ゴメンナサイ。
管理人様の持ち物ならお返ししたいと思います。
1.ご住所をお知らせいただいて郵送
2.プレシオに忘れ物として届ける
3.お会いして手渡しする
お返しの仕方をご連絡ください。
今さらお店の方にお渡しするのもどうなのかな?!と思ったりしますし、あなた様のモノかどうかを確かめてお返しするべきなのかとも思います。
たぶんあのお店をご利用なら私のお近くに住んでいらっしゃる方なのかなと思いますので手渡しするほうがよいのかなと考えています。
それとも、データを消去してしまう方が良いのならそのようにします。
どうすれば良いのかご連絡ください
メアド eri_horiguchi@docomobank.ne.jp
※あなた様の忘れものでないのでしたらこの書き込みのことは忘れてください。
<コメント 終わり>
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