ボクの中のワタシ
羽佐間 修:作

■ 第3章 みちる7

 -野外露出 -

「みちるちゃん。 遅くなってごめんなさ〜い」

「お帰り〜」

 日曜日の夜、接待ゴルフに駆り出されていた恵理がマンションにやってきた。

 竜之介は恵理に抱きつき、キスをせがむ。

「うふふっ。 まるで新婚の若奥様みたいね、みちる」

「えへへっ。 私がお部屋で仕事帰りの恵理を迎えるなんてパターンは初めてだもん。 ちょっと嬉しくなっちゃったぁ」

 長いキスの後、唇の離し際に恵理が竜之介の鼻をペロリと舐めた。

「あっ! やだぁ〜! 恵理ったら、、、」

「うふっ。 たっちはいつもこうやって私を苛めてたでしょ〜」

「もぉ〜〜」

   

 竜之介はふくれっ面を装うが恵理とじゃれあうこの瞬間が楽しくて仕方がない。

「怒らないのぉ〜。 ちゃんとお土産があるんだから」

「えっ、なあ〜にっ?! あ〜〜っ! またHなやつでしょう?!」

「うふっ。 それは後のお楽しみよっ」

”みちる”に夢中になっている恵理は、少し前からア×ル用の卑猥なグッズを通販で手に入れては竜之介に試していた。

「え〜っ! いじわるねっ、恵理ったら」

 竜之介は非難めいた口調で言ったものの、期待で胸が膨らみ腰の辺りが疼くような気がした。

「それより恵理はお腹空いてるんでしょ?! 夕食、パスタで良かったかしら?」

「嬉しい。 お腹ペコペコだったの」

「直ぐに出来るから、座ってて」

 竜之介は嬉々としてキッチンに向かい、準備していたパスタをまたたく間に仕上げた。

「はい、お待ちどうさま〜。 どうぞ、召し上がれ」

「わっ、美味しそ〜〜! いただきま〜す」

 美味しそうな表情を浮かべる恵理と目が合うと竜之介は幸せな気持ちに包まれた。

「ホント、美味しいわ! ご褒美に食事が終わったらドライブ行こうね、みちる」

「えっ、、、 あっ、うん、、、」

 竜之介は、頬が紅く火照るのを感じながらパスタを口に運んだ。

   ◆

「え〜っ、、、 2ヶ月も?!」

「うん、最悪ならビザなし期限いっぱいの3ヶ月、、、 寂しいけど仕方がないわ。 ごめんね、みちる、、、」

 恵理は夜の街中を走る車の中で、社長のお供でシアトルへ2ヶ月の予定で出張に出ると告げた。

「じゃあ戻ってこれるのは7月か8月ってこと?!」

「そうね、、、」

「で、いつ出発するの?」

「来週の水曜日からなの」

「え〜っ!水曜って3日後じゃない、、、 随分急なのね、、、」

「じゃあ、またJULLYの撮影には立ち会ってもらえないね、、、」

「あっ! 撮影、決まったの?!」

「うん。 さっきメールで連絡があったの。 来週の日曜日、どうですかって、、、」

 竜之介は携帯を操作し、恵理にメールを見せた。

「あ〜〜ん、残念、、、 また撮影現場、見れないわね、、、」

「私、、、 断ろうかなあ、、、」

「えっ?! どうして?!」

「なんか独りだとすごく恥ずかしくって、、、」

「え〜〜?! もったいないわよ。 それに雑誌掲載を女装の卒業記念にするって決めてたんじゃないの?!」

「う、うん、、、 そうなんだけどね、、、」

「うふっ。 卒業したくなくなっちゃった?! ダメよ。 綺麗に撮って貰ってきなさいね。 みちるが載ったJULLEY、見てみたいわ」

「う〜〜ん、、、 わかった、、、」

「雑誌が出たら送ってね」

「そうするけど、、、 ねっ、、、 シアトルには社長と二人で行くの?」

「ううん。 他にも二人一緒に行くよ」

「ふ〜ん、、、 ねえ、普通、秘書ってそんな長期出張にも附いて行くもんなの?! 今日だってゴルフで一緒だし、、、」

「ケース・バイ・ケースだけど、今回は社長は英語があまり得意じゃないから通訳兼ってとこね」

「そうなんだぁ、、、 社長ってオジイサン?!」

「ううん。 50過ぎのナイスミドルよ」

「会社の中ではいつも一日中一緒に居るの?」

「いいえ。 他にもいくつか会社を経営されてるし、出張も多い方だから、会社に来られるのは月に多くて10日位かしら」

「ふ〜ん、、、」

「うふっ。 どうしたの、みちる?!」

「、、、別に」

「あ〜〜っ! もしかしてみちる〜?! ヤキモチ妬いてるの〜〜!?」

「そ、そんなんじゃないわ」

「うふふっ。 解りやすい人ね〜っ! それとも私がいない間”みちる”を楽しめないから寂しいのかしら?!」

「そっ、そうじゃないわ、、、」

「ホントの事を言いなさいな」

「そんなんじゃないもん、、、 会えないのがただ寂しいんだもん、、、」

「うふふっ。 永く会えない分、今夜はたくさん”みちる”を虐めてあげるからね」

「もう、、、恵理ったら、、、」

 竜之介は今からの恵理との時間を思うと胸がざわめき、出掛ける前に埋め込まれていたア×ルディルドウを思わず喰い締めた。

   ◆

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