拾った女
横尾茂明:作

■ 恥の喪失1

朝…誰かに揺すられた…。

「もうちょっと寝かせろよ!」
そー言って寝返りをうとうととして…気付く。
(女房は…出て行ったはず…)

剛は昨夜の出来事を思い出し…反射的に起きあがった。
「……………………」

美しい女が立っていた…一瞬夢かと思えるほどにその美女は輝いて見えた…。
昨夜はひょっとしたら竹内結子じゃないかと思ったが…今朝の女はそれ以上の女と思う。(この気品というか…気高さというか…ぅわー…一体何者なんだこの女は…)

「…お前…まだいたのか…」

「は…ハイ…」

「どうだ…自分のこと…思い出したか」
剛はパジャマのはだけを繕いながら飲みかけのボトルに口を付ける。

「全く…思い出せません…」

「そうか…そりゃ…困ったナー」

「しゃーない…今から警察に行くか…」

女の睫毛が不安げに揺れる…。
そのたおやかさは…男だったら抱きしめたくなるほどいじらしい風情…。
そして…女の体からはオーラが光っているようにも見えた…。

「警察…ですか…」

「警察は…いやなのか…」

「いやじゃありませんが…」

「じゃぁすぐに出よう…用意して!」

「…………………」
「あのー…すぐにじゃなくて…」

「何なんだ!…」
剛は、女の優柔な態度に少しイラつく…美人じゃなかったら罵倒していたかも…。

「少し待ったら想い出せるような気がして…」

「いつまで待てばいいんだ…」

「…………分かりませんが…4〜5日…」

「じょ…冗談じゃない…俺には仕事が有るんだ、今日明日の土日はいいとしても…」
「日曜の夜には出て行ってもらわんとなー」

「わ…わかりました……」


「ところで…お前、よく眠れたのか…」

「……頭痛が酷くて…思い出そうとしますと…」

「腰が痛いと言ってたが…まだ痛いのか…」

「少し和らいでいます…でもアザが出来てしまって…」

「そうか…ちょっと見せてみろ…」
剛は少し落ち着いてきたせいで…冗談が言えた…。

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