拾った女
横尾茂明:作

■ 記憶の目覚め3

次の朝…目覚めたとき、女が腕の中で安心したように眠っていた…。
剛は何故かホッとする…。
(あぁぁ…夢じゃないんだな…)

裸で俺に縋って眠る女が、こんなにも愛しいと感じるのは…。

本当に端正な顔立ちだと思う…品のいい唇…綺麗すぎる鼻の筋、そして長い睫…。

…そっと毛布をはぐってみた…。
乳房が美しく、太腿と尻が素晴らしかった…。

宝物のような女…そう剛は感じる…。
おとぎ話のかぐや姫のように…幾人もの高貴な男達が恋いこがれ…貢ぎ物を持って足繁く通った話を思い出す…。

かぐや姫…そう、この女はかぐや姫なのかもしれないと唐突に思った。
(もうすぐ…月…いや…見知らぬ男の胸に帰ってしまうんだろうナー)

そう思うと剛は胸を掻きむしる思いに苛立つ…。

(監禁…そう…この女が記憶を取り戻したら監禁してしまえば…)

(ダメだ…嫌がる女を監禁してまで留め置くなんて…)
(俺はこの女に恋いこがれてしまったようだ…たっ二日で)

その時、女の目が開いた…澄んだ瞳は青く濡れ光っていた…。

「ご主人さまー…また私に見惚れていたんでしょう…ウフフ」

「さーお主人さま…今日は何して遊びましょう…またイッパイHなことして遊ぶの?」
痴人の愛を思わせる、その愛らしい瞳に見つめられ…剛は思わず抱きしめる…。

「お前…記憶を取り戻したら、何処かに行っちゃうんだろう…」

「お前の居ない世界なんか…俺にはもう考えられないが…」

剛は乳首を吸った…女は優しく頭を撫でている…。
「私…記憶が戻っても…出て行きません…だから…安心して下さい…」

「私…よく分からないけど…ご主人さまのこと…スキ…だから…」

「絶対に出て行かないと約束してくれ…なっ…頼む…」

「ハイ…絶対出て行きません…約束します…」

剛はこの言葉を百万回聞いてもなんの保証にもならないことは分かっていた…
しかし…女の口から出る言葉で少しでも不安を和らげたかったのだ…。

「じゃー約束!」

お互い小指を出し合って…絡めた。

「朝飯…食うか?」

「ええ…私作りましょうか…」

「お前…出来るの…?」

「うん…何となく…思い出せそうで…」

「じゃぁ…一緒に作ろうか!」

「ハイ」

二人は服を着て階下に降りる…女は必ず手を繋ぐことを忘れない…。

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