人妻の事情
非現実:作

■ その時は妻であらず1

「やあやぁやぁ、時間通りだねぇ〜〜」
「田崎さん」
「おぉ〜〜、今日も大胆だネェ〜理沙ちゃん〜〜」
「ンもぅ、ヤダ」

私は身体を捩らせつつも、扇情的に振舞ってみせる。
構内では忙しそうに行き交う人々で溢れかえっていた。
皆が皆、時計と構内の電光掲示板を気にしながら足早に消えてゆく。
ただ、行き交う人達は大体、私をチラ見して……。
今日の私はチョット大胆。
1サイズ小さい半袖の白いブラウスに、スリットが深く刻まれているタイトミニ。
足の付根部分まで深く刻まれたスリットのスカートは、通販で面白半分に購入したものだ。
無論貞淑な妻として、夫には目の触れないクローゼットの奥に眠らせてあった。
暑い陽気なので素足にミュールという姿。
先の電車内でも……寝たふりをしたサラリーマンが引っ切り無しに私をターゲットとしていたのだけど……構内でも一際私は視線を浴び続ける存在だった。

「んぅっふっふっふ〜〜いいねぇいいねー理沙ちゃん〜〜グッとくるよぉ?。
すんごいエッチだぁねぇ〜〜人妻とは思えない位にエロイねぇ。」
「んも、田崎さんたら……私は夕食の御飯を調達にしに来たのよ?」
「借金は完済しただしね〜僕もお金で理沙ちゃん買う必要無くなったんだよねぇ。」
「ええ…… ……そう、そうだったわ田崎さん。
これからは……お互いの趣味の世界だったわ?。」
「んふんふふ、奥さんと僕との趣味の時間かぁ〜〜。
良いネェ〜〜〜うん、実に良いよぉ〜〜。」

主婦であり、貞操な妻たる私。
愛する夫の為、健康管理に気遣い愛情タップリのオ夕食を作る為に繁華街へとお買い物。
でも…… …… …… ……。
その前に空白の時間、妻の自由時間のこの昼から夜までの時間は……。
夫には、いや、誰にも言えない秘密の私と田崎さんだけの淫夢の一時。
ここには金銭のやり取りは終わり無く、ただただ互いの欲求に溺れたいが為の逢瀬である。
私が田崎さんをこれ程までに信頼した1つとして、田崎さんはこれまでの私の痴態を映した写真を公開しなかった事。
秘密には徹した事だった。
誰にも邪魔されたくない、つまらなく刺激も無い妻である私が、女として再び輝ける堕落の時間だった。

「じゃあ行きましょっか?」

腕を取り、ワザとらしく胸を田崎さんの腕に擦りつけながら私は言う。

「んン〜〜〜〜〜〜〜……」
「どうしたの、田崎さん?」
「ねぇ理沙ちゃん……君の性癖は僕が教えてあげちゃったんだよねぇ?」
「ぇ、ぇ…… ……ぇぇそう……ね」

逢瀬の度、いつものホテルで私は様々な服に着替え色々なポーズで露出して……。
そして目覚めた、目覚めてしまった。
……自身が露出狂だという事に。

「だったらさ、だったらね?」
「?」

同じ言葉を繰り返す癖のある田崎さんは、迷っている風に見えた。
もうそれに馴れた私は次に発せられる言葉を待っていた。
そしてようやく吐き出された言葉は妻として。
そして女として……。
……露出が本能と自覚した私として。

「ぇ、と…ン、と……恥ずかしいけど……やってみよう……か、な」

田崎さんの耳打ちに、私は小さく頷いて言うのであった。
パァッと表情に花開く田崎さん。
俯きこれで良かったのかと自問するも、私はこれからの羞恥に期待を膨らませてしまう。
高い踵のミュールでなんとか手を引く田崎さんに付いて来た。
そこは主婦が寄り付く場所ではなかった。
風俗店が犇めき合う裏路地の雑居ビルの一室。

「いらっさい」

あまりやる気のなさそうな店員さんが私達を迎えた。
小さな部屋に所狭しと様々な衣服が並んでおり、古着屋に来たみたいだった。
店内は薄暗くそして狭いのだが、田崎さん馴れた足取りで奥へと進んでゆく。

「理沙ちゃんはかぁいいからねぇ〜〜〜んん、出来るだけかわぁいい服がいいね!」

田崎さんは興奮している。
だから私は……普段では着るとか……いや、こんなもの選ぶ事すら無い服を手に取っていたのだった。
私も興奮していたのだ。

「りさちゃ、いや奥さんっ……あのね…あのサ、もっと素敵な事をしない?。」

あの田崎さんの耳打ちは、私をより大胆にさせる起爆剤であった…… …… ……

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