明の復讐
あきよし:作

■ 明と遥1

俺は日記を読んですぐに書いてあった番号に電話をした。
プルルルルル
俺の心臓はドクドクと脈を打っていた。
「もしもし?」
遥の声が聞こえた。俺は暫く話す言葉を選んでいた。黙っていると遥が俺の心を焦らすように文を続ける。
「どちら様ですか?」
遥の携帯に俺の番号は登録されていない。もちろん俺の携帯にも遥の番号は登録されていなかった。俺たちは付き合っていながら番号交換さえしていなかったのだ。
「もしもし。あの…………。明……だけど……。」
「えっ!? 明君??」
遥は声を荒げていた。思いもよらぬ男から連絡があっては無理もないだろう。
「日記…………読んだよ。」
そう言葉を放つと遥は黙り込んだ。
「遥??」
「うっ。うう………。」
遥は泣いていた。俺はなんて言葉をかけたらいいのかわからなかった。どんよりとした重い空気になりつつある中、遥が先に言葉を発した。
「明君が………。明君が悪いんだよ? わたしのことなんてなんとも思ってないくせに付き合ってくれたりしたから。明君も私のこと好きだと思ってたのに…………。遊び半分だったんだね。最低だよ……明君。」
遥の言葉が俺の胸にドシッとのしかかる。電話からはいまだに遥の泣き声が聞こえてくる。
「あのさ。明日ひまか?」
「なん……で?」
「会って話がしたいんだけど。」
「馬鹿にしないで!! 私は話なんかない。明君の話なんか聞きたくない。」
「お前が電話しろって日記に書いたんだろ?? 黙って聞いてると好き勝手言いやがって!! ムカつくやつだな!!」
「ごめんなさい。うう……。勝手なのはわかってるけど確認したかったの少しくらいは私のこと好きでいてくれたのかなって。本当にごめんなさい。どうせもう会わないからいいよね。じゃあね。」
「待ってくれ! 悪い。言い過ぎた。遥はもう俺のこと嫌いになったか? そりゃそうだよな。最低……だよ…な。俺。でも、会って話したいんだ。たとえ遥が俺のこと嫌いになったとしても。明日10:00に駅前に来てくれ。」
ブチ ツーツーツー
俺はそう伝えると電話を切った。

翌日

時刻はすでに13:00になっていた。遥が来る気配はない。俺はあきらめて帰ろうとした。
「明君!!」
聞き覚えのある声に俺は立ち止まった。振り向くとやはりそこには遥の姿があった。俺はゆっくりと遥の元へ歩いていった。
「きてくれたんだな。まずはお前に誤りたい。すまない。」
「なんで明君が誤るの? 昨日は私が悪かったのに。」
「違う。昨日のことじゃない。助けてやれなくてすまなかった。遥の言ったとおり俺は遥のことなんて見てなかった。でも、遥を失って気づいたんだ。俺は遥の事が………。」
次の言葉を言う前に俺は遥に抱きついた。
「俺とよりを戻してほしい。お前のことが好きなんだ。」
そして生まれてはじめての告白をした。
「な…何言ってるの? 言ったでしょ? 馬鹿にするなって。」
「日記に書いてあったろ? 『私の夢は彼とやること』だって。それにチョコについてた手紙。『義理でごめんなさい。ちょっと忙しくて。これだけは知っててほしいって思ったから。私は明君が本当に好きでした。』結構うれしかったぜ。あの言葉。」
「ううっ。ごめんなさい。私……私は…本当に勝手な女。今度はずっと私だけを見ていてくれる?」
「ああ。もう遥を泣かしたりしない。」

俺たちは抱き合っていた。
「お前の夢。」
「えっ?」
「お前の夢を叶えてもいいか?」
「どういうこと?」
「今から遥の家に言ってもいいか?」
「な、急にそんなこと言われても……。部屋散らかってるし……。それに……。」
俺は遥の言葉を遮るように言った。
「俺が行くと迷惑か? 俺なんかが遥の家に行くと迷惑か?」
「ずるいなー。明君。私が言うと駄目だったって言ったくせに。迷惑なわけないじゃん。明君だって知ってるくせに。私は本当に…………。」
またしても俺は遥に最後まで言わせずに言葉を発した。
「わかった。ごめん。もう何も言うな。」
そうして俺たちは遥の家に向かった。はじめてみる遥の家はごく普通の一軒家だった。もっとお嬢様の住んでいそうな洋風の家を想像していた俺は期待を裏切られた気がした。何を隠そう俺はそういう類の家が大好きなのだ。かなりマニアックだがそういう所でやるのは気分が最高潮になる。まぁ本来は相手がよければ全てよしといった感じだろうか。中に入るとリビングに案内された。ソファーの前にテレビがあり、一通りの生活家具は揃っている。一人暮らしの女の子にしては充実している。遥はソファーに腰を下ろし、テレビの電源を入れた。プチッと音をたてて映ったのは昼ドラのちょうど濡れ場だった。俺は焦って遥の顔をチラッと見た。すると遥もこっちを見ており目が合った。きまづい空気が流れる中で、俺は勢いよく遥を押し倒した。
「やめて!! 明君。どうしたの?」
「どうしたのって。言ったろ? お前の夢を叶えてやるって。」
「で、でもこう言うのって雰囲気とかって重要じゃない?」
「雰囲気だと? よく言うぜ。自分はそんなもん関係なしで見ず知らずの男に抱かれたくせして。」
(はっ。しまった。俺は何言ってんだ。)
だが、気づいた頃にはもう遅かった。遥の顔からは大粒の涙が流れていた。
「そ、そんなこと……。好きで抱かれたわけじゃないもん。やっぱり明君は私なんか見てないじゃない。本当は性欲を満たしたいんでしょ? 明君はいつでも彼女できるもんね。もう、もう帰って!! 帰ってよ。」
遥はそのか弱い腕で俺の胸を叩いていた。俺はそんな遥を力強く抱きしめた。そして耳元で囁く。
「ごめんな。つい力任せに……。暴言も誤る。ごめん。でもわかってくれ。悪意があって言ったんじゃない。遥の気持ちなんか何にも考えてなかった。本当に最低だな。俺はダメ男だよ。だからってお前が嫌いなわけじゃない。何にも見てないわけじゃない。俺の本当の気持ち。俺はずっと前から遥を見ていた。登校してくる時、掃除してる時、友達と喋ってる時。ずっと見てたんだ。お前のこと。遥に告白してもらった時、めちゃくちゃ嬉しかった。でも、いつしか俺は自分の気づかないうちに俺は遥じゃなくて絵里……いや、『悪魔の女教師』を追うようになっていた。そして遥を心で見ないようになった。デートをしてても先生のことを考えてた。馬鹿だよな。生徒と教師が結ばれるわけもないのに。後悔してる。今更こんなこと言っても遅いのはわかってる。遥を守れなかったのは俺が……俺の心が弱かったからだ。だからさっきの言葉……忘れてくれないか? 俺はお前が好きだ。」
「それ本当? 本当に本当? 信じられないよ。明君の言葉なんて。」
「わかってる。でも、信じてくれ。俺は遥が好きだ。」
「じゃあ私の部屋いこ。」
そう言って俺は遥の部屋に案内された。遥の部屋は女の子らしくピンク色で1色だ。ベッドにカーテン、机もピンクで統一されている。
「あの。明君。しつこいかも知れないけど私でいいの?」
「本当にしつこいな。あんまりしつこいと怒るよ?」
「ご、ごめんなさい。」
「ふっ(^^) 冗談だよ。そんなに怖がらなくてもいいだろ? そんなに俺は怖いか?」
「そんな事ない。明君はとっても優しい人だよ。」
「そっか。抱いてもいいか?」
「うん。」
遥が顔を赤らめて頷いた。

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