明の復讐
あきよし:作

■ 明と遥3

キーン コーン カーン コーン
授業の終わりを告げる鐘が校内に響き渡る。生徒たちがいっせいに下校する。もちろん部活に所属しているもの、教師はまだ校内にいる。俺は七色学園の制服を身にまとっていた。転校する時に捨てようか迷ったが念のためにとっておいたのが役に立った。俺は何食わぬ顔で正門を通り校内に入っていった。
「明君?」
ドキッ。心臓が止まりそうなくらい俺はその声に驚いた。声の主は遥だ。しかも女友達が3人も一緒にいる。
「明? ………もしかして転校した柳生君?」
と遥の友達が言う。俺は遥の腕を引っ張り人目のつかないところに移動した。
「遥。あいつ等には言うんじゃないぞ? 二人だけの秘密だからな? わかったか?」
「うん。わかった。それより何してるの?」
『二人だけの秘密』と言うフレーズがよかったのか遥はとても機嫌がよかった。
「絵里の家をつきとめる。そして絵里がいなくなるのを見計らって侵入する。」
「えっ? それって犯罪じゃないの? 捕まったらどうするの?」
「大丈夫だ。俺はこう見えても頭いいんだぜ?」
「ふふ(^^)そうだね。気をつけてね。」
「おう。今日は多分遥の家には行けそうにない。」
「うん。毎日は来れないでしょ。それに明君はもうこの街の人じゃない。家に帰らなきゃ行けないでしょ?」
「ああ。高校卒業したら一緒に住もう。そして大学に行こう。」
そんな会話をして俺は職員室に向かった。会話を聞かれていたことに気づいていなかった。
「へぇ。何企んでるのかしら? 遥と……柳生君。」
職員室に入った俺は絵里がいないことを確認して絵里の机の上にGPS機能のついたある物を置いた。

3時間後

俺の持っている機会が反応をキャッチした。絵里が動き出した。20分ほどたった頃だろうか。絵里の動きが止まった。俺は急いでその場へ向かった。
「ここが絵里の家か。」
絵里は10階建てのマンションに住んでいるみたいだ。反応は5階から出ていた。扉の前に立つと声が聞こえた。
「どういうつもりですか?」
絵里の声だ。俺は鼓動を高ぶらせた。しかし、相手の声は聞こえない。絵里は一人暮らしだと聞いているから恐らく電話で話しているんだろう。さらに俺は聞き耳をたてた。
「約束が違います。あんなもの机に置くなんて。もし誰かに見られてたら私は………私はあの学校で教師が出来なくなります。」
絵里の声はほんのわずかだが涙声だった。
(どういうことだ? あんなもの? それは恐らく俺が手紙と一緒に置いたペ○ス型のバイブ。手紙には『これをマ○コに入れて帰れ。主人様より。』と書いた。誰か違う奴の仕業だと思ってるのか?)
「はい。ご主人様。」
絵里の言った言葉に俺は凍りついた。
(ご主人様? 絵里は誰かにそう呼ばされている? おかしい。あの絵里が?)
考えていても始まらないと思った俺は取り合えず遥の家に行くことにした。

ガチャガチャ
家には鍵がかかっていた。俺は遥に貰った合鍵を使うことにした。遥の部屋から話し声がする。
「ねぇ遥。さっきの柳生君でしょ?」
友達が来ているらしい。
(余計な事喋るなよ?)
心の中でそう祈った。
「違うよ。」
「あんた彼の事好きだったでしょ?」
「な、何言ってんのよ。」
「見てたらわかるよ。それに彼もあなたのこと気になってたみたいだし。いつから付き合ってんの? あんたに会いに来たんじゃない?」
「えっ? 気づいてたの? 誰にも言わない? 約束よ?」
「言わないわよ。約束する。」
「わかった。裕美(ひろみ)になら言っても大丈夫そう。私たちね。」
(まずい。)
コンコン
俺は後先考えずに部屋をノックしてしまった。
「えっ? 誰?」
遥は怖がった様子でドアを少し開いた。
「ちょっと来い。」
俺はボソッと遥にそう言い遥を部屋から連れ出した。
「よかった。明君だったんだ。」
「よくねぇだろ。今言いそうだったろ? あのこと。」
「で、でも裕美なら大丈夫だよ。」
そのとき俺は誰かがこっちを見ているような寒気がした。和田 裕美(わだ ひろみ)か。危険な女だな。和田は前に一度同じクラスになったが何を考えているのかわからない奴だった。今回のことも何か裏があるそんな気がしていた。
「遥。和田に帰ってもらってくれ。」
「えっ? なんで? 人数は多いほうがいいじゃん。」
「頼む。」
俺は頭を下げて頼んだ。それだけ和田という存在は今の俺の心には大きかった。
「ごめんね。裕美。明日学校でね。」
「うん。ばいばーい。柳生君とお幸せに。」
「だからそんなんじゃないって。」
二人のやり取りを見ていてなんら不思議はない。だが、俺を見るときの和田の目は背筋が凍りそうなくらい殺気立っている。
「もう和田とは遊ぶな。」
「な、なんで?」
「もしまた和田と遊ぶなら別れよう。」
「そ、そんな。酷いよう。裕美は親友だし明君も好き。明君も私が好きなんじゃないの?」
「好きだよ。だけどあいつはやばい気がする。」
「わかった。裕美が大丈夫だってわかったらいいんでしょ?」
「どうするんだ?」
「明日裕美の家に行く。もちろん明君も一緒に。」
「お、俺と一緒に?」
「そう。大丈夫だよ。裕美はいい人なんだから。」
「わかった。なら俺はもう帰らないと明日は学校行かないとな。」
「そうだね。でもその前にキスして?」
「キス?」
「うん。明君が私を好きだって証。」
チュ
遥の頬にそっとキスをした。
「えっ? 口じゃないの?」
「そう怒るな。また今度な。」
そんなこんなで俺は家に帰った。明日あいつに会って確かめる。もしかしたらあいつが……和田が絵里のご主人様かもしれない。俺はなんの根拠もないのにそんなことを考えながら眠りについた。

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