百花繚乱
百合ひろし:作

■ 第二章 香2

もう勉強も手に付かない、しかし、やらなければ成績は下降して行き周りに付いて行けなくなり、最悪退学しなければならなくなる―――。分かっているのだがしかし、この悶々とした感情が抑えないと、いや、最悪この感情の正体がなんだか分からないと抑えられそうに無い。自分の勉強机に教科書とノートを広げたが、先に進む事が出来ずメガネを外して突っ伏していた。
しかし、突っ伏してしまったのが間違いだった―――いや、自分の感情の正体と向き合う事になった、と言えば正解なのか―――。寝るつもりも無い時に目を閉じると、また妄想の虜になってしまう。クラスメートの姿が浮かんでは消え、そしてその中の何人かにプロレスで見た技を自分が掛けている、そして、クラスメートは苦痛の叫びを上げている―――。突っ伏して両手を枕にして頭を乗せていた筈が、気が付いたら左手はそのままだったが、右手は熱くなった下腹を弄っていた―――。
もうこうなってしまったら止められない。心臓の鼓動が上がり、そして吐きそうになる。香はこの訳の分からない状態に耐え突っ伏したまま、右手でズボンのボタンを外し、椅子から尻を上げ、膝まで下ろした。自分でも何故そうしたのか良く分からなかったし何をしようとしているのかも分からなかった。だが、そうせずにはいられなかった。下半身はビキニのようにサイドが浅く薄い青色をしたパンティ姿になり、そのパンティの上から股間に触れた。
「ぬ……濡れて……る……?」
もう意味が分からなかった。しかし、止める事は出来なくなっていた。パンティの上から愛撫を始め、愛撫をすると更に濡れて来る―――、頭の中は相変わらず気持ち悪い状態が続いていたが、その中をくすぐったいというか、何と言うか股間から頭に突き抜けてくるものがあった。

――― 快感 ―――

しかし、それが快感だとはまだ気付いていなかった。とはいえ気付いていないのは香の理性だけであったので、本能の方はもう、快感を維持する為に愛撫を続けろ、と手の動きを止めさせる事は無かった。
「う……あ……あっ……あっ…ああっ……」
香は何故自分は声を出しているのか分からなかったが、今家には家族がいるのでなるべく声を殺し、そしてパンティの上からの愛撫を続けていた。そして、上半身は普通に服を着ていて、下半身はズボンを下ろしたパンティ姿で椅子に座って突っ伏している状態で自分の股間をクチャッ、クチャッ、と音を立てて愛撫している―――そんな自分をいやらしい、と思った。否、いやらしい、というのはこういう事なんだ―――、と理解した、というのが正しいかもしれない。
そして、その快感は頂点に達した。今迄突っ伏してて枕代わりにしていた左手は近くにあったシャーペンをギュッと強く握り、そして伏していられなくなり頭を起こして背中を背もたれに押し付け体を反らせた。
「あっ、ああっ、あっ、あっ、あぐっ!」
最後は声を抑える事は出来なかった。そしてその瞬間、股間からはさっきアレだけ液が出てパンティをぐっしょりと濡らしてしまっていたにも関わらずまた大量に液が出て来て、更に今度は今度はビクッ、ビクッと股間を中心に痙攣した。
「ハァハァ……ハァハァ……」
香はガタン! と音を立てて再び上半身を前に倒し、机の上に転がっていたメガネを拾い掛けた後、左肘を付いて前に倒れないように上半身を支えた。そして今迄股間を弄っていた右手を持ち上げ机の上に左と同じ様に肘をを付いて眺めた。
「私……」
右手はぐっしょりと濡れていた。言葉が出なかった。まだ股間は痙攣していた。

香は暫くそのままでいた。暫く経つとパンティがヒンヤリとしてきたが、今迄ずっと自分の心を支配していた悶々とした感情は無くなって、すっきりしていた事に気付いた。香の初めてのオナニー体験だった。
そして更に、人が技を掛けられている姿を見たり、男子相手だろうが女子相手だろうが自分がクラスメートに技を掛けたりしている事を想像するとそういった性的な欲求が来る、という事を理解したのであった。


香の一時的に落ちた成績は、まだ高校に入ってばかりだった、という事もあり、一気に今迄の分を取り返しまたトップクラスに返り咲いた。しかし、またクラスメートに技を掛けたりしている事を妄想し始めると妄想に支配され元に戻ってしまう可能性もある―――。それを香は恐れた。ならばまたオナニーしてすっきりすればいいじゃないか―――?
しかし香は、まだそのオナニーという行為はこの間の一回きりのもの、という認識だったのでそういう風に考える事は出来なかった。
香は以前は自分は成績優秀で、スポーツも得意という見本みたいな自分に誇りを持っていた。勿論こうなってしまった今もそれは変わらない。成績優秀スポーツ万能なクラス委員長であり続けたい、と思った。しかし、そう有り続けるにはふつふつと湧いてくるこの妄想―――高校に入ってから見つけた新たな自分自身―――をどうにかしなければならない、と思ったのだった。

ならば実際に好きなだけ技を掛けられる所に行けば良いではないか。香はそう考えたのである。しかし、プロレスに関してはこの間の男子生徒の見ていたプロレス雑誌の写真が切っ掛けでこうなってしまったのだけれども、プロレス自体に対する考え方は以前とは殆ど変わっていなかった。グダグダな試合で、マイクで口先だけで叫んでいる―――という印象で、電流爆破なんて興醒めの最たるもの。そう―――香が動画で見ていたのはそういう試合展開とかではなく、あくまでも自分の欲望を処理する為に技を掛けられてる選手を見ていただけに過ぎないのであった。

プロレスはプロレスでも、もっとガチンコで闘えるプロレスっていうのは無いのか、自分も上達すれば好きなだけ技を掛けられるようなプロレス―――そう思って、インターネットで探す事にしたのだった。幸い自分は身長が164cmとそれなりにある。大きくは無いが少なくとも小柄では―――無い。
最近学校の裏サイトの事が良くニュースに上がってくるようになり、香も裏サイトがどういうものか、それなりに知っていた。表のプロレスが駄目ならば話は簡単。裏のプロレスだったらどうだろうか? 裏の情報を探すのだったら裏サイト以外に有り得ない―――。そうして調べに調べ、辿り着いたのが、

生徒会長

だった。相生高校という近所の公立高校の生徒会長が闇プロレスを2年半前に引退したという噂だった。香は真っ先に闇プロレスという言葉に飛びつき、掲示板やその他から情報を引き出そうとした。それを調べるのに数日掛かったがようやく出て来たのは、繁華街の外れにある小さいマンションの地下でやっている、という情報だった。おまけに書いてあった事だったが、そのマンションの住民は地下に施設がある事等知らない、という事だった。
香はその住所も特定した。そこは法律上はきちんとした会社だったので、会社の名前さえ分かってしまえば住所の特定は簡単だった。そして意を決して向かったのである―――。運動神経には自信がある、もし自分の望むプロレスだったらやろう、と決意して。

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