百花繚乱
百合ひろし:作

■ 第三章 新人戦5

ファミレス―――。
香は薄いオレンジに近い黄色のシャツの上に青いジャケットを着て膝下までのスカートと黒いニーソックスを履いていたので生足は全く出ていない状態だった。一方亜湖は白いジャケットに同じく白のミニスカート、ジャケットの下にはピンク色のシャツを着ていた。
「良く考えたら、下着姿以外を見るのは初めてね。かわいいんじゃない―――?。下着姿もかわいいけど―――」
香は出て来たジュースを上品に飲みながら言った。上品に飲んでいる姿と話している事のギャップに亜湖はどう反応すればいいのか分からなかった。
「ちょ、ちょっと香さん、こんな所で……」
亜湖は顔を赤らめながら顔の前で手を振り言った。香はさらに一口飲んだ後、ストローを口から離し、
「近くに人が来てるかどうか位見てから言ってるわ。大丈夫よ……」
と澄ました表情で言った。
その後二人は会話らしい会話を殆どせず、ただひたすら食べていた。ファミレスの店員も驚く位の量を食べ、食べ終わった食器を下げるのが間に合わず二人席のテーブルが食器で一杯になっていた。まさかこの二人が闇プロレスをやっているなんて誰も思わないだろう―――。
「じゃ、帰ろうか」
香は亜湖に言った。その表情は少し笑っているように見えた。そして会計を済ませた後、帰り道についた。
香は自宅に、そして亜湖は丸紫の上のマンション、と住んでる場所が違うので途中で別れるがその別れ際―――。
「付き合ってくれてありがとう、楽しかったわ―――でも」
と言った。亜湖は、
「でも?」
と聞き返した。すると香は、
「さっきさくらに言ったことだけど、亜湖、あなたにも当てはまるから注意してね。私との試合が近くなったらあんまり気軽に話しかけない事」
と言った。亜湖は、
「は、はい。分かりました」
と答えた。香は体の向きを変え、
「今日はこうやって誘ったけど、馴れ合うつもりはないから。じゃ、また」
と言って自分の家に帰って行った。亜湖は、香の姿が見えなくなるまでそのままずっと立っていた。


―――新人戦の日が来た。
第一試合が宮田さくら vs ポニー(松本香)、そして第二試合が長崎亜湖 vs ジェネラル美紗。
挑戦者側の控え室には亜湖とさくらが、そして挑戦を受ける側に香と美紗が入り準備をしていた。
「さくら、頑張ってね。負けて元々だけど、少しでも長く試合してね」
亜湖はそう言ってさくらを励ました。さくらは、
「はいっ、頑張りますっ。センパイ」
と答えてにっこりと、そう。亜湖や友人を癒したさくらのかわいらしいスマイルを見せた。

一方美紗と香は、会話らしい会話をしなかったが、香がリボンを口にくわえながら足を台に乗せてスニーカーの紐をきつめに縛ってる時に

美紗が、
「どんな試合をするのか楽しみにしてるよ」
と言った。香は美紗を睨みつけた後視線をスニーカーに戻し、
「しつこいわね。楽しませてもらうって言ってるじゃない」
と答えたが、視線を戻した後は口が笑ってるようにも見えた。スニーカー左右両足の分縛り終わり、最後にポニーテールにリボンを着けた。そして、
「じゃ、行って来るわ」
と言い、美紗に背を向け片手を上げた。

さくら、香の両者が入場した後、メイド服を着たレフリーがボディチェックをした。チェックをしながらレフリーがさくらに、
「あなた達は未成年だから顔にモザイク入ります。安心して闘いなさい」
と言った。さくらは驚いた。モザイクが入るなんて聞いていなかったから、有料サイトとはいえ、ネットに顔を晒す事になると思って緊張していたからだった。
社長の方針で未成年の顔にはモザイクを掛ける事にしたのだ。だから香の顔にもモザイクが掛った状態で放映されているのだった。香も新人戦の時にその事を聞いたのだった。
さくらは下着姿なので、ブラジャー、パンティ、靴下、スニーカーしかなく、すぐにチェックは終わった。
レフリーは香のボディもチェックした。そして両者共に凶器を持っていない事を確認すると試合開始の合図をした。
さくらと香が一歩間合いを詰めた時にゴングが鳴り響いた。香はゴングに合わせて歩みを止め、その場でさくらを待った。一方さくらは手四つで行くのか、それとも体当たり系で行くのか、迷ったが、香がガードも下ろしてるので、いきなりハイキックで行った。香は右によけ、左腕で足を掴み、前に放り投げた。
「中盤で使いなよ…」
香は尻餅をついたさくらに向かって言い、立ち上がるよう促した。さくらは立ち上がり、今度はきちんと手四つに組み合った。

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