百花繚乱
百合ひろし:作

■ 第三章 新人戦7

「ああああっ! ああっ!」
さくらはだいぶ声が枯れ出なくなっていたが、それでも耐える為に声を出し、首を振っていた。香は最初の弓矢固めのときと同様にさくらの体を揺すり、そしてさくらに屈辱を与えたが、その時ふと―――しかし、はっきりと新たな劣情を抱いた。
もしブラジャーが”取れたら”、あくまでも取れたら胸がもっと揺れて面白いんじゃないかと―――。そしてブラジャーの有無で同じ技掛けて比較するのも良いんじゃないかと。
香は顔を赤らめた。確かに、下着姿の娘のやられ様は確かにやらしさが半端じゃない、とは思っていたが、ここまでは思っていなかった。
ロメロを掛け下にいた香はずっとさくらのブラジャーのホックのあたりを見ていたのだ。それを見続けることによってこのような劣情を―――。さっき弓矢固めを掛けた時にドキッとしたのもこの劣情が芽生え始めていたからだった―――。
香は腕を離し、ロメロスペシャルを解いた。が、その顔は真っ赤になっていた。
「くっ……」
下腹の方から熱い感覚が来る。香は、倒れて腰を抑えているさくらの横で膝を付き下腹を押さえた。
「な……、なんでこんな時に……私……」
香はこの感覚に耐えながら、
「と……兎に角、早く試合を……終わらせないと」
と呟き、さくらの髪を掴み起こした。さくらは腰を抑えながらフラフラと立ち上がった。香はさくらの頭を自分の股に挟みポニードライバーの体勢に持って行った後、さくらをカナディアンバックブリーカーの体勢に持って行き、そしてそのまま落としてタイガードライバーのようにさくらの両足を押さえた。
カウントが入る。
「ワン、ツー」
さくらの足が香の両肩に乗っていて、香はさくらの足を腕で固めて押さえる。そして足先は香の背中の後ろだった。さくらは膝から先をプラプラと動かすのが精一杯だった。
「スリー」
試合時間は13分23秒。ポニードライバーで香の完勝だった。

香は勝ち名乗りを受け、そしてリングをゆっくりと降りた。まだ、リングの中央で倒れているさくらの方は見なかった。見てしまうとまたさっきの劣情に支配されそうだから―――。
「こんな所で―――するわけには行かないじゃない……」
香は呟き、そして少しフラフラしながら控え室に戻った。控え室に入るや否やポニーテールを解き、顔を洗った。ジェネラル美紗が、
「随分とえげつない試合だったじゃんか。で、楽しめたかい? ま、最後は調子おかしかったみたいだが」
と聞いた。香は、
「見ての通りよ。楽しませてもらったわ」
と椅子に座って少し前かがみになって呼吸を整えていた。そして、
「で、最後? 生理痛よ。あなたにもあるでしょう?」
本当は昨日だったが―――香は冷静を装って答えた。まさか美紗には、いや、誰にも言えまい、こんな感情―――。

さくらはレフリーに介抱されながら起き上がった。最後のポニードライバー、受け身は取っていたから、というよりは香が力を入れらなかったので威力が弱まったから―――と言った方がいいかも知れない。
その為意識は何とか飛ばなかったが、今までのダメージの蓄積と疲れ、そこにポニードライバーの衝撃と来てしまっては返す事は出来ず、更にすぐには起き上がれなかった。
レフリーが呼んだ救護係に肩を借りて立ち上がり、周りを見渡したが既に香の姿はそこには無かった。
そして控室に戻り、亜湖と目が合うと、
「センパイ……いい試合、出来ませんでした…」
と言った。亜湖は、
「う、ううん。さくら頑張ったよ。私も頑張るから見ててね」
とさくらが落ち込まないように笑顔を作って言った。


リング内では点検、清掃が行われていた。飛び散った汗を拭き取った後、安全確認をし、更に場外の整理整頓だったが、常に試合を握ってた香が場外戦を仕掛けなかったので場外は乱れず、その為点検だけで終わった。

香は美紗がリングに出る前に更衣室にメガネを取りに行った。というのは美紗の試合をモニターで見る為だった。さすがにモニターはメガネ無しでは見る事は出来ないから取に行き、控室に戻って来てメガネをかけた。それを見て美紗は、
「亜湖が10分持ったら約束通り出してやるよ。ラリアットでもパワーボムでも」
と言った。香は軽く目を閉じ、右手を頬の横で振って
「無理よ。新人があなた相手にに10分なんて」
と言った。香は今まで亜湖とさくらの練習は何度も見てきた。亜湖はさくらよりも成長が早く、さらに受けが上手だった。だからといって美紗に対して通用などしない。
香自身、新人時代、成長が早いと言われたが美紗に無様に負けて所詮今までの新人と比較して、というレベルだったと気付いたのだった。だから亜湖も無理だと思った。更に練習を見てて思ったのは、
亜湖もさくらも攻撃が不得手だった事―――。美紗に対してこれでは試合にすらならない、と思うには充分だった。
「じゃ、行ってくるよ」
美紗は軽く左手を上げて控室を出てリングに向かい、香は見送った。

ひとつホッとした事があった―――、美紗と話している間に下腹のうずきが消えていたから―――。

リングでは亜湖と美紗の入場が終わると、選手紹介し、その後ボディチェックが行われた。レフリーはさっきさくらに説明したように、亜湖にも未成年の顔にはモザイクを掛ける件を伝えた。
そしてレフリーは試合開始の合図をして、試合開始のゴングが鳴った。美紗は香が新人だった時と同様、亜湖に対し人差し指を立ててクイッと、かかって来いよと挑発した。亜湖は時計回りに90度程回った後、手四つに組みに行った。美紗はそれを受けて立つ。そして、新人の頃の香ではなく、今の香に対して掛けている力と同じ力を亜湖に掛けてみた。
「何気に、香のヤツ、お前を買ってるからな。試してさせてもらうよ」
美紗は亜湖に聞こえるように言い、どんどん力を入れた。亜湖は下がらないように、―――そう、1ヶ月前の香対美紗の時に香が取ったポーズを取り、美紗の圧力を受けようとした。

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