百花繚乱
百合ひろし:作

■ 第五章 タッグマッチ1

試合の日が来た。土曜日で学校は休みだったので亜湖とさくらはマンションから下りてきて、挨拶をしたあと、更衣室に入って服を脱ぎ下着姿―――この間、香と一緒に百貨店に買いに行ったものを着けていた―――になった。
その後、第一練習室が空いていたので、準備運動しながら時間が来るのを待った。

一方香は体操服にハイレグのブルマ姿になり、メガネを外した後、髪をポニーテールにまとめ、最後にリボンをつけた。この日はブルマもリボンも赤にした。
そして準備が終わるなり控室に入り、そこで準備運動をした。体を動かしながらモニターを眺め、オッズの動向を確認した。視力が悪いのでモニターに近付いて見ていたが。
そうしてる間にパートナーのジュディが星条旗のビキニ姿で入ってきて、香に作戦を聞いた。
「序盤は流れに任せて、中盤からは亜湖を標的にするわ」
香は答えた。ジュディは一週間で出来るだけ亜湖とさくらの情報を集めたのでさくらよりも亜湖の方が強い事は分かっていた。
タッグ戦は中盤から終盤に掛けて、相手を分断して弱い方を狙い、そして勝つものだ。それがプロレス、いや、少なくとも丸紫でのレスリングでの闘い方だ。それが一番効率がいいから。
しかし香は弱い方のさくらを外し、打たれ強い亜湖を狙うと言ったのでジュディは聞かずにはいられなかった。
「Why?」
『二人でさくらなんか狙ったら試合はすぐに終わるわ。それよりも賭け金上がってるし楽しんだ方がいいんじゃないの?』
香は英語で答えた。そして、
『とにかく亜湖を標的にするわよ』
と英語で言い、少し舌を出し、唇を舐めた。


時間が来た。亜湖とさくら、そして香とジュディが入場し、紹介の後、メイド姿のレフリーによるボディチェックが行われた。異常無い事を確認するとレフリーは試合開始の合図をし、ゴングが鳴った。
香組はジュディが出て、亜湖組は亜湖が出た。暫く距離を取っていたが、ジュディは突然反対側に走っていき、ロープの反動を利用して亜湖にドロップキックを入れた。そして亜湖が起き上がるのを見て首を取り、ヘッドロックの体勢になった。
そしてそのまま、自軍のコーナーに亜湖の頭をグリグリと押し付けた。
「ああ…」
亜湖が軽く声を上げると、ヘッドロックを解き、亜湖の髪を掴み、足を出して待ってた香に亜湖の頭を叩き付けた。
「あうっ!」
亜湖は短く声を上げ、叩き付けられた額を押さえた。その間にジュディは香とタッチし、ジュディはそのまま亜湖をコーナーへ振った。亜湖はコーナーに叩き付けられる直前に体の向きを変え、背中からコーナーにぶつかり、寄り掛かる体勢になった。その直後、走り込んで来たジュディの体当たりを食らい声を上げた。
ジュディが退くと、目の前に膝が迫っていた。
「あああっ!!」
亜湖は声を上げドスンと腰から崩れ落ちた。コーナーを背にし、両腕でセカンドロープを握って何とか倒れないようにしていたが腰がリングに落ち、足を前に投げ出していた。
膝を叩き込んだのは香だった。ジャンピングニーを亜湖の胸の辺りを狙って出したのだった。ボディプレスをしたジュディを盾にして自分の身を隠し、ジュディが退いた瞬間に叩き込んだのだった。
香は亜湖の腕と髪を掴んで起こし、もう一度コーナーに振った。亜湖がコーナーに向かって走ると香は少しだけ離れて後ろから追い掛けた。亜湖が先程と同じ様に背中からコーナーに激突すると、今度は背中からぶつかる感じで、肩と肘を亜湖の胸に叩き込んだ。
「あぐっっ!」
亜湖は声を上げ、攻撃を食らった反動で、体がコーナーから離れたので、胸を押さえながら、ニ、三歩ロープを掴み歩いた。香は直ぐに亜湖の髪を掴み、背中をコーナーに叩き付けた。
「ああっ!」
亜湖は声を出して耐え、両手でロープを強く握った。香は、亜湖の米神を強く握った―――アイアンクローである。
「ああっ!! ……あああああ」
亜湖はロープから手を離し、アイアンクローを外そうと香の腕を握るが香は当然離さない。アイアンクローをしながら膝を亜湖の腹に軽く入れた。すると亜湖の腰が段々落ちてきてまたさっきのようにマットに尻をつき、足を前に投げ出す格好になった。香はアイアンクローをする手により力を入れた。
「ああああ!! ああああっ」
香の握力は想像以上に強く、亜湖は声を上げて前に投げ出した足をバタつかせる事しか出来なかった。そして香のアイアンクローを外そうと香の腕を握った。香は、腕を握られるのがうっとおしかったので、アイアンクローをする右手の他に、左手で拳を握り亜湖の頬の辺りをグリグリと押し付けた。さらに膝で亜湖の肩を押さえつけて動けなくした。

「セ……センパイ……」
さくらは自軍のコーナーで心配そうに見守っていたが、亜湖がやられまくっているので、ロープをくぐり、カットに行こうとした。すると、ジュディが牽制するようにロープをくぐってきたので、さくらは仕方なく戻った。

香がアイアンクローを解くと亜湖は両手で顔を覆っていた。香は亜湖の髪を掴んで起こすや否や亜湖の首を左脇に抱え込み、右手は亜湖の太腿の付け根に添えるようにし、高速ブレーンバスターで投げた。そして投げ終わってから右手で亜湖のパンティを掴みブリッジの体勢で押さえ込んだ。
「ワン、ツー!」
レフリーのカウントがツーの時に亜湖は足を振り上げ、反動で返した。亜湖が反動を付けて返した瞬間香は右手を離した。そして直ぐに起き上がり、エルボを落とした。
「あぐっ!」
亜湖は声を上げた。香は亜湖の髪を掴んで起こし、今度は場外へ亜湖を追いやった。香は追いかけて場外へ下り亜湖の髪を掴んで起こすとそのまま持ち上げてボディスラムを入れた。
「あああっ!」
亜湖は声を上げて背中を右手で押さえた。香がもう一度亜湖を起こそうとした時に、我慢できずにさくらが来て香にストンピングを一発入れた。香は振り向きざまにさくらにお返しとばかりに張り手を一発入れてさくらがひるんだ隙に腕とツインテールを引っ掴んで腹に膝を入れた後そのまま鉄柱に叩き付けた。さくらはそのまま膝から崩れ落ち、うつ伏せに倒れ、頭を押さえていた。
「生意気なのよ……」
香はそう呟き、うつ伏せに倒れているさくらの背中―――丁度ブラジャーのホックの所を狙ってストンピングを一発入れた。さくらは声を上げた。それからジュディに指示を出し、ジュディも場外に下りて来て、さくらのツインテールを掴んで起こした。香は亜湖の髪を掴んで起こし、お互いに鉄柵に―――では無く、亜湖とさくらを正面から同士討ちさせた。
亜湖とさくらは崩れ落ち、場外で大の字になった。香はここで時計を見た。ここまでで4分。
「まだまだこれから……」
そう思い、倒れている亜湖とさくらを見下ろしていた。

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