百花繚乱
百合ひろし:作

■ 第五章 タッグマッチ2

2番カメラが見下ろす香を映し、3番カメラが亜湖の様子を映した。場外で仰向けに倒れている亜湖を足の方から捕らえ、スニーカー、靴下、足を少しずつ上へと移動し、汗で濡れ始めた太腿、そして新品の薄い水色のパンティを映し、そこで止まった。アクセントとして付いている濃青のリボンや、継ぎ目、模様などはっきりと映し出した。その時にパンティを右手の親指と人差し指で直したのでその手も映った。そして再び上へと移動し、へそ―――早くも呼吸が乱れていたのでお腹が出たりひっこんだりという動きもはっきりわかった。そして汗も。更に上に行くと胸―――パンティとセットの薄い水色の新品のブラジャーを映し、そこでまた少し止まり、模様やアクセサリをはっきりと映し出した。そして更に上に行き、首、そして顔―――顔はモザイクを掛けるので配信時には分からないが、カメラにはバッチリ入っている。この時は左手で顔を覆っていたので表情は良く分からないが、口を小さく開け、ハァハァ、ハァハァと呼吸が乱れているのが分かった。
「まだまだ始まったばかり。立ちなさいよ」
香は亜湖に聞こえるように言い、亜湖の髪を掴んで起こした。そして亜湖を鉄柵に振った。亜湖はさっきコーナーへ振られた時と同様に背中から鉄柵にぶつかり、大きな音を立てた。
「ああーっ!」
亜湖は声を上げ、痛みに耐え、腰が落ちそうになるのを何とか踏ん張っていた。香は追いかけ、ラリアットを入れる振りをしてから亜湖の髪を掴み今度は鉄柱に叩き付けた。亜湖は崩れそうになったが、香が髪を掴んだままだったので片膝をついた状態で何とか立っていた。香は亜湖を立たせてリング内へと戻した。
亜湖はリング内に戻されても直ぐには起き上がれなかった。鉄柱攻撃を受けクラクラしていたので、頭を押さえていた。香は亜湖をうつ伏せにした後腰に膝を乗せ腰をロックし、足首もロックし亜湖の首に手を回した。その後、後ろに倒れ、弓矢固めを入れた。表のプロレスのようにゆっくり掛けたりはしない。この間の動きが素早すぎて亜湖は外す事が出来ず、なすがままにされてしまった。
「あああっ! ああっ!! ああああ……っ」
新人戦の時さくらにやったように膝を使って亜湖の体を揺すった。
「さくらより胸がある分、揺れるわね―――」
香は思った。さくらにこの技を掛けた時は劣情がムクムクと顔を擡(もた)げているのに気付き、動揺したが、今は物凄く落ち着いてるのが可笑しかった。
場外ではジュディがさくらを攻撃していた。さっきから鉄柵に打ち付ける音とさくらのやられ声が聞こえて来ているので良く分かった。

ジュディは柵の外から椅子を取り、右手で持ち、左手でうつ伏せに倒れているさくらのツインテールを掴んで起こそうとした。さくらはゆっくりと体を起こしよつんばい状態から鉄柵を掴んで前屈みの状態になった。
さくらは完全に息が上がっていた為、息を整えようと鉄柵を掴み、そのままの体勢でいた。
『背中ががら空きよ!』
ジュディは英語でそう叫びながら右手で持っていた椅子を両手で持ち、思い切り振りかぶってさくらの背中に打ち付けた。
「あああああっっっ!!」
さくらは大声を上げ、ビクンと体を反らせ、右手で背中を押さえ、そして片膝をついた。左腕は肘を鉄柵にかけ、余りの激痛に涙が出たので左手で涙を拭っていた。
ジュディは椅子を床のマットの上に落とし、さくらのツインテールを掴み、自分の方を向かせるや否やさくらの股間に腕を入れ持ち上げた。さくらは足をバタつかせたがジュディは構わず椅子の上にボディスラムで投げ捨てた。
「あ…―――っつ!」
さくらは声を上げた後、目をきつく閉じ、歯を食い縛って耐えた。右手で背中を押さえて右膝を少し持ち上げた。持ち上げようとして、ではなく無意識に―――。
『サクラを標的にしたら試合が終わっちゃう―――か、成程ね』
ジュディはそう呟き、さくらのツインテールを掴み起こそうとしたがさくらは頭を持ち上げるだけで起き上がらないので腕も掴んで強引に起こした。さくらは起き上がったが頭を右手で押さえ、足取りがフラフラしていた。ジュディはさくらの髪を掴んだままバンティの後ろ、尻の部分を掴み、さくらを転がすようにリング内に入れた。さくらはそのまま仰向けの状態で片膝を立て、右手でパンティを直した後、両手で顔を覆っていた。それからジュディは自軍のコーナーに戻り、香の試合の進めかたを眺めた。

香はさくらがコーナーでグロッキー状態になってるのと、ジュディが自軍のコーナーに戻っているのを確認した。―――つまり、亜湖にどれだけ攻撃を入れてもさくらはカット、いわゆる邪魔をする事が出来ない―――という事だった。

「亜湖……、どれだけ耐えられる?」
香はそう呟いた。中盤から亜湖に照準を絞る作戦だったが、運良く序盤から亜湖とさくらを分断出来、しかもさくらは動けなくなっている。こうなるとほぼシングル戦の様に闘える。タッグは初めての香にとって実に理想通りの願ってもない展開になった。香は横向きに倒れて息が荒れている亜湖を仰向けにし、足をとるなり肘を落とした。そしてすぐに立ち上がりもう一発落とした。
「あああっ!」
亜湖は声を出して痛みに耐え、太腿を押さえた。香はもう一度亜湖の足を取った。亜湖は膝を曲げたり伸ばしたりして振りほどこうとしたが香は離さず、更にもう片方の足も取った。そして両足が椅子に座る時の様に腰から九十度曲がる所まで足を上げさせ、そこから―――、
ダン!
という音を鳴らし、左右に一気に落とした。
「あああああっっ!!」
亜湖は大声を上げ、股間を両手で押さえながら足を閉じ、膝から下をバタつかせた。―――股裂きである。

「かーっ。エグイ技かけるな、アイツ」
事務所のモニターで試合を観戦していた美紗は額に手を当て呆れていた。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊