百花繚乱
百合ひろし:作

■ 第八章 亜湖対さくら5

「セ、センパイッ! は、離せ」
さくらは叫び、亜湖の手を振り解こうとした。しかし亜湖はさくらの顎を決めないとリバースインディアンデスロックが外せないので構わず引っ張った。さくらは滅茶苦茶に暴れ、亜湖の手を外そうとした―――。
昔、亜湖がこの髪型にしたさくらをみるなり、かわいいね、と言ってくれた髪型―――。その為さくらはツインテールが何よりも気に入っていた。それをその亜湖自身が解こうとしている。勿論亜湖は故意ではなく、さくらのリバースインディアンデスロックを外す為であるのだが、それでもその事を受け入れる事は出来なかった。
さくらがあまりにも暴れるので亜湖は手を離してしまった。しかし、ツインテールは片方解けてしまった。さくらは上半身を起こし、落ちたゴムを拾うとそのまま立ち上がり、もう一度後ろに倒れた。
「ああああっ!!」
さっきよりさくらは亜湖の足を固めている方の足の膝を伸ばしてきつく掛けた。亜湖は声を上げ何とか耐えていた。さくらは直ぐに立ち上がり、解けた方の髪を纏め、ツインテールにし、解けてない方も乱れていないか触って確認した後、もう一度後ろに倒れた。
「あああっっ!!」
亜湖はまた声を上げた。さくらはリバースインディアンデスロックを解き、足を押さえて横向きに倒れている亜湖を見下ろした。そして亜湖の髪を掴んで起こすなり、
パン!!
と張り手を入れた―――。先日香が手の平をさくらに見せてツンツンと逆の手でさした仕草―――、平手打ちをしろ、という事だったのだ。さくらは感情的になっていた。張り手を受け膝をついた亜湖の髪を掴みもう一発張り手を入れた。
さくらはピッと涙を拭き、亜湖の手を掴んでコーナーに振った。そして亜湖が跳ね返ってくるとジャンピングニーを入れ、倒れた亜湖をフォールした。
「ワン、ツー」
亜湖はさっきと同様に正確にカウントツーで返した。さくらは乱れたパンティを人差し指で直し、亜湖の髪を掴んで、
「センパイ、まだまだですよ」
と言った。平手打ちをした事で感情的になったのは収まった。亜湖だってわざとツインテールを解こうとしたのでは無い事位分かってる、試合なんだからさくらが技を掛ければ、それを解こうとするのは当然なんだ―――。今のさくらは亜湖にとっては敵なんだから。
さくらは亜湖を持ち上げロープに向かって放り投げた。ギロチンホイップ―――。そして声を上げて跳ね返って仰向けになった亜湖にギロチンドロップを入れた。

「ギロチンだと? さくらってあんなラフファイトしたっけ―――?」
美紗が香に聞いた。香は、
「しないわよ。亜湖が受けてるから出来るだけよ」
と答えた。さくらの技を受け切ると決めた亜湖、そして体力が続く限り攻め続けようと決めたさくら―――。正反対の戦法を取った二人だからこそ出来る試合展開だった。
「でも、さくらの技は軽いし甘いな」
美紗は言った。香は頷き、
「そうね。確かに亜湖は痛いだろうけど、解けてしまえばその部分にはそんなにダメージは残ってないわ」
と答えた。

さくら相手に騙し気絶は使えない―――、亜湖はそう思っていた。いつも一緒に練習してきたからさくらは直ぐに見破れる。亜湖センパイは騙し気絶は使わない―――、さくらはそう思っていた。使っても見破る方法を知っているから。
試合時間は十分を超えた。技を受け続けてきた亜湖は汗びっしょりになりリング上で片膝を立てた状態で倒れていた。ブラジャーもパンティも、靴下も汗を吸い取り湿っていた。一方さくらもずっと技を出し続けた為同じく汗びっしょりになり肩で息をし始めた。亜湖と同じ様にブラジャー、パンティ、靴下それぞれ汗を吸い、縞の水色の部分が少し濃く見えるようになっていた。
さくらは亜湖の髪を掴んで起こすと、場外に放り投げ、直ぐに追いかけるようにトップロープを飛び越えそのまま仰向けに倒れている亜湖の上にボディアタックをした。
「ああああっ!!」
二人の声が響き渡った。トップロープを飛び越えたから、亜湖に攻撃したさくら自身もダメージを受けた。さくらは腹を押さえながら亜湖の横に仰向けに倒れ込んだ。しかし、直ぐに起き上がらないと亜湖に反撃の機会を与えるからという事でさくらは腹を押さえながら起き上がり、亜湖の髪を掴んだ。亜湖は起き上がりながらパンティを直し、そしてフラフラした足取りでさくらに引き摺りまわされ、鉄柵に振られた。
「あああっっ!」
鉄柵に背中から激突し亜湖は声を上げた。すると直ぐにさくらが突っ込んで来た。まともにさくらのラリアットを受け、そのままドスンと腰から落ちた。

しかし、気絶しない―――。

さくらはそう思った。美紗も香も亜湖を気絶させた。それ位の時間は闘ってる―――端から見ればさくらが一方的になぶってる様だが―――にも関わらず気絶しない。

さくらは腰の落ちた亜湖の髪を掴んで起こした。亜湖は呼吸は乱れていたが立ち上がった。さくらは前屈みになると亜湖の脇の下に素早く頭を入れ、そのまま亜湖を後ろに放り投げた。亜湖はマットに背中を叩き付けられ、
「ああ……ううっ」
と声を出し、背中を反らして手を当てた。仰向けだったがそのまま横向きに転がった。
さくらは亜湖の髪と腕を掴んで起こした。亜湖は右手で背中を押さえ左手でパンティを直しながら立ち上がった。ここでも亜湖は辛そうにはしてたものの立ち上がるのに時間を掛けなかった。その為、さくらは亜湖の疲れ具合いが段々分からなくなってきた。

練習ではお互いが交代で技を掛けていたので結果的に長い時間やっていても、休む時間もある。その時でもさくらがバテてしまってリングに大の字になっていても亜湖はドリンクを飲んだりしていた。しかし今はさくらがずっと攻撃している状態なのでその時の事は参考にならなかった。

さくらはリングに亜湖をフェイスクラッシャーの様に叩き付け、急いで鉄柵の外から椅子を取った。そして背中を向けて鉄柱に掴まっている亜湖の背中に椅子を振り下ろした。
「ああああっっ!!」
鈍い音が響きわたると同時に亜湖は声を上げ、背中を押さえながら膝を付き、前に倒れ、そのまま半回転し仰向けになった。亜湖は右手で背中を押さえ、左手で顔を覆い、軽く歯を食いしばってる状態だった。そして右膝を立てて腰を浮かせたりマットの上に落としたりしながら背中をさすっていた。

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