百花繚乱
百合ひろし:作

■ 第九章 記念試合に向けて1

亜湖とさくらの基本値が上がった。これは、試合の勝者に支払われるファイトマネーや賭け金の配当に影響するものであり、これに係数や倍率がかかり前者がファイトマネー、後者が配当となる。とは言っても中堅レベルと比べてもまだまだ低いが亜湖とさくらの評価は確実に上がった。
亜湖は人気がある為倍率が高かった。理由は一言で言うと、大人しくてエロいからだった。

「松本さん―――」
香は社長に呼ばれた。香は、
「はい」
と答えた。社長は、
「高校卒業と大学合格おめでとう。それを記念して一つ試合を組んだわよ」
と言った。社長の説明に因ると、六人タッグマッチでの試合をするという事だった。しかも香がパートナー二人と対戦相手側三人を決めて良い、という条件だった。条件なんて言葉が悪い―――。香にとっては願ってもない言葉だった。
「返事は明日でよろしいですか?」
香は聞いた。社長は、
「いいわよ」
と答えた。香は考えるのに時間が欲しい訳では無かった。ただ、相手三人に話がしたいだけだった。
実際、社長に話を聞いた瞬間に相手側を誰にするかは決めてしまった。パートナーはジュディとあと一人、誰にしようかというのはあったが―――。

香は更衣室で着替えて、体操服とハイレグブルマ姿になった。髪型はロングのストレートでメガネを掛けたままで相手になるだろう三人を廊下で待った。
暫くするとジェネラル美紗が来た。香は美紗を呼び止め大方の内容と、美紗を対戦相手に選んだ事を告げた。
「面白いじゃんか。六人タッグなんて珍しい」
美紗は言った。香は美紗を沈めることを何よりもやりたかったので美紗との対戦の機会を狙っていた。
「亜湖と組むのはどう?」
香は美紗に言った。美紗は意外に思った。
「亜湖に興味あるならお前が組みゃいいじゃないか」
ととりあえず返した。香は、
「あなたと組みたく無いのと同じよ。相手じゃないと意味無いわ」
と否定した。香は美紗は先ず倒すべき相手、そして亜湖は技を掛けて掛けて掛けまくる為の相手―――。つまり香の欲望を満たす為の相手だった。一瞬香の目が、いじめっ子の様な感じに輝いた。
「まあ、あたしも亜湖には興味があった所だ。あの受けの強さはいいな。パートナーも悪くない」
と言って承諾した。香は、
「後一人はさくらね、あなたと亜湖、さくら。悪くはないでしょ?」
とさらっと聞いた。美紗は、
「何だよ。さくらはお前にとってはついでか?」
と聞いた。香は、
「さくらにその力が無いのは分かるでしょ? 亜湖戦では亜湖が受けるつもりだったからよ」
と答えた―――あくまで冷静に。

香は亜湖とさくらにも同じ内容を告げた。
「分かりました。でも香さん、私達は香さんや美紗さんと試合するにはレベルが低いとこの間―――」
と言った。香はうるさいなと思いながら、
「私が今回は決める権利があるからよ」
と答えた。そして、
「美紗もあなた達と組む事に興味示してるわ」
と言い、第一練習室を指した。亜湖は、何を意味して香がそこを指したか理解して、
「ありがとうございます」
と言った。そしてさくらを連れて入っていった。


「試合の日が楽しみだわ―――」
香はそう呟いた後、第二練習室に入った。

第二練習室にはジュディともう一人、身長は美紗より高く185cmあり、丸紫至上最も長身で古参である小林栄子という人が待っていた。香は美紗と亜湖を潰すために同じく第一線で闘う栄子を指名した。因みにシングルでは二勝三敗と、リーチの差が出てしまいやや分が悪かった。
栄子は髪を後ろで二つに縛っていた。さくらのようなツインテールではなく、いわゆるおさげ髪だった。そして服装は制服―――と言えばいいのだろうか?
自分の学校の制服を着ては学校が割れるリスクがある。その為、香はブルセラショップで体操服とブルマを買った。実は栄子も同じだった―――ブルセラショップではないが―――。百貨店にある制服を取り扱う店で扱われている"何処の学校用でもない制服"―――いわゆる私服で通学する高校に着ていく"なんちゃって制服"だった。
栄子は当時はリアルで高校生だったが既に8年前の事である。試合用や練習用等数着持っていて、ワイシャツやミニスカートはきちんとアイロンがかけられて綺麗に着ていたが大分古びた感じになっているのはわかった。
因みに当時はそんなに過激―――下着姿なんて勿論ブルマ姿さえもいなかった―――、衣装も地味という訳ではないが、例えば制服にしてもスカートの下にはスパッツやブルマを穿いてパンティが見えないようにしていたものだが、同期の洋子が以前、亜湖に言ったように、賭けに破れて一試合限定で下着姿でやってから段々過激になっていった。
―――もっとも亜湖とさくらは勿論、香もそんな経緯知る訳無いのだが―――
香は早速作戦会議を持ち掛けた。総合力では上回る、経験はジュディは亜湖とさくらに少し毛が生えた程度だが、香と栄子がカバーしてやれば良い。
向こうは美紗しかまともに攻撃出来るのがいない―――ましてやさくらなど―――。しかし、香はこの間のタッグ戦同様にさくらに照準を合わせない様に言った。
「何故?」
栄子が聞いた。栄子も亜湖に似て大人しい性格である。しかし、受けるタイプでは無かった。正確に言うと、攻撃が苦手だからこそすぐに試合を終らせる闘い方をした。相手も自分も楽になる様に―――。
しかし、香は美紗と亜湖にこだわりを持っていた。
「さくらは悪いけど人数合わせよ。本人は亜湖と組めるから満足してるけどね。私は美紗と亜湖を倒したいの」
と答えた。栄子は特に反対もせず、
「分かったわ」
と承諾した。

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