百花繚乱
百合ひろし:作

■ 第10章 記念試合3

―――幸い美紗は香のポニーテールを掴んで起こした後、自陣のコーナーに叩き付け、亜湖にタッチした―――。
亜湖は美紗からタッチを受け、リング内に入ると香のポニーテールを掴み、逆側のコーナーに振り直ぐに追い掛けて、背中からコーナーに激突した香にジャンピングニーを決めた。香は食らった反動で前に倒れ、うつ伏せになった。亜湖は香のポニーテールを掴み起こした。香はブルマを直しながら起き上がった。
亜湖は香を持ち上げそのままボディスラムを入れた。
「あああっ!!」
香は背中を押さえながら声を上げた。亜湖の身長から投げられたダメージは大きかった。
その後亜湖は香のポニーテールを掴もうとしたが、腕を逆に取られて引っくり返されてしまった。
「あああっ!」
腕十字が決まった。勿論完璧に決まってしまったらギブアップしかなくなってしまうので、そうならない程度に力を調整した。
亜湖は体を引きずり、ロープに足を掛けた。レフリーはそれを見て香を制止した。香は腕十字を解き、亜湖の足を取ってリングの中央まで引きずってきた。それから太股にストンピングを一発入れた後、もう片方の足も取り、持ち上げた後左右に叩き落とした。
「ああーっっ!!」
亜湖は声を上げ、股間を押さえ、足をバタつかせた。
「お楽しみはこれからよ」
香はそう言い、亜湖の足をもう一度取り、美紗とようやく立ち上がったさくらに視線を送った。
そして太股にサッカーボールキックを入れてからアキレス腱固めに入った。
「ああっ!あああー」
亜湖は声を出しながら固めてる香の足を掴んだり叩いたりした。香は、
「うざい!」
と言ってより強く掛けた。亜湖は両手で顔を覆ったりバタバタさせながら声を上げた。そして香ごと引きずりながらロープを目指した。香はリング中央に引き戻す事はせずに、ロープブレイクしたら技を解き、次の技を掛ければいいというやり方をした。
亜湖がロープに手を掛け、レフリーが止めると香は素早くアキレス腱固めを解き、亜湖の髪を掴んだ。亜湖はゆっくりと起き上がり、右手で白のパンティを直した。
「……痛っ」
アキレス腱固めで痛めつけられた足を引きずった。香は前屈みになり左手でアキレス腱を押さえている亜湖を無理矢理髪を引っ張りフェイスクラッシャーでリングに叩き付けた。
「あああっっ!」
亜湖は声を上げ、両手で顔を覆いころげ回った。そしてうつ伏せになり、
「う……」
と声にならない声を喉から出していた。さくら戦の前の練習もそうだが、香は本気で技を掛けているのが分かった。
香は亜湖の背中と腰に一発ずつストンピングを入れると素早く亜湖の足を固め、腰の上に膝をのせた。亜湖は逃げようとしたが香の技の入りが素早く、逃げられず、顎を取られてしまった。

弓矢固め―――

亜湖の体が文字通り腰を支点に弓のように反り返り、見た目も綺麗に決まった。
「ああっ!ああああっ」
香が下から揺さぶるとその度に痛みが走り亜湖は声を上げた。
「揺れるのね……」
亜湖は顎を決めている香の腕を外そうとしているので亜湖の脇は開いていた。そこから少し胸が見える。パンティと同じ白のブラジャーを着けているが、腰より上半身は逆さまの状態でブラジャーは下から支えるモノなのでこの場合はあまり意味を成さなかった。
「あああー!ああっ、あああっ!」
香は兎に角亜湖の体を揺さぶり続けた。亜湖は顎を決める香の手を外そうとしたり、ダメージがたまって来た腰に手を当てがったり両腕を広げて耐えたり、顔を覆ったりしていた。
するとそれに我慢できなくなったさくらが出て来て香の頭にヘッドバットを入れた。
「うぐ……」
香は亜湖を離してしまい、両手で額を押さえた。そして亜湖は香から離れ、腰を押さえながらうつ伏せになっていた。さくらは亜湖に視線を送ったが特に亜湖を起こしたりはせず、香のポニーテールを掴み起こした。そしてコーナーに振った。香はコーナーに背中から激突し声を上げた。そこにさくらは走り込み、そのまま体ごと香にぶつけた。香はさくらが離れると腰から崩れ落ち、足を前に投げ出して腰をマットにつける格好になった。さくらはそれを見て香のポニーテールを掴んで起こし、今度は香を逆側のコーナーに振ろうとしたら、振り返された。その瞬間―――、
ゴスッと衝撃を受けてさくらは後ろに倒れ、叩き付けられた勢いで倒立状態になったが背中から落ち、大の字になってしまった。
「邪魔するからよ……」
香は気絶してしまったさくらを見下ろしてパンパンと掌を叩く様に叩き、ゆっくりと歩きながらジュディにタッチした。ジュディはさくらを自陣側のロープの下に転がして、それから腰を押さえている亜湖の髪を掴んで起こした。亜湖は髪を掴んでいるジュディの左手を右手で掴み、左手で腰を押さえながら起き上がった。ジュディは亜湖の髪から手を離すや否や素早く回り込み、亜湖の腰にミドルキックを入れた。
「ああっ!」
亜湖は声を上げて、勢いを逃がす為に後ろに倒れて受身を取った。そこにジュディはエルボを入れ、そのまま押さえ込んだ。
「ワン、ツー」
カウントツー丁度で亜湖は返した。ジュディは、栄子にタッチし、亜湖の髪を掴んで起こした。栄子が出て来るのを待ってからロープに振った。亜湖が跳ね返ってきた所、栄子がハイキック、そしてジュディはドロップキックを同時に決めた。亜湖はリングの中央で二人の攻撃を受けたにも関わらず、吹っ飛ばされてロープ際で大の字になった。亜湖は頭を打った訳では無いが肩から首を通じて頭へ衝撃が伝わった為、一瞬強烈な頭痛に襲われた。その為目から額を両手で押さえ、そして片膝持ち上げて立てた。
ジュディは亜湖の髪を掴んで起こした。亜湖は立てた膝の方から反対に体を回して起き上がった。ジュディは亜湖が立ち上がるや否や腕も掴んでそのまま場外に転落させた。

美紗は全く動かない―――。自陣のコーナーに寄りかかり、試合の流れを見ていた―――というより香を牽制していた。
一方香も美紗を牽制していた。本当なら場外に出て亜湖に椅子でも叩き付けてやりたい所だが、美紗が自分の陣で香の動きを警戒しているので、亜湖を攻撃することで余計な体力を使う訳には行かなかった。その為今はジュディと栄子に任せた。

栄子は先程ジュディが自陣に転がしておいたさくらを捕まえて場外に引きずり出そうとした。さくらは引きずられる事で気が付き、ロープを掴んで抵抗したが、栄子の長い足で背中に踵落としされ、思わず声を上げて背中を押さえた所で、引きずり出されてしまった。
ジュディは亜湖を鉄柵に振った。亜湖はさくらと栄子の前を走って行き鉄柵に背中から激突して、
「ああああっ!」
と声を上げた。栄子は直ぐにさくらを鉄柵に―――いや、正確に言うと亜湖に向かって振った。
さくらは止まろうとしたが、すぐそばで、しかも栄子に物凄い力で振られたので止まれず、そのまま鉄柵にもたれかかっている亜湖に正面から激突した。その時二人の声が重なった。

ナイスハーモニー。

ジュディは更に栄子の腕を取り鉄柵に―――勿論亜湖にもたれかかって背中を向けているさくらをめがけて―――振った。亜湖はそれに気付いたがさくらが被さっていたのでどうにも出来ず、さくらに避ける指示を出す間も無かった。
栄子はさくらに背中から激突―――否、攻撃した。亜湖とさくらは栄子に押し潰され、声を上げながら崩れ落ちた。
『フフッ、いい眺めね』
ジュディは軽く腰を降りながら英語で呟いた。ジュディの足元で亜湖とさくらは重なるように大の字になっていた。
ジュディはさくらのツインテールを乱暴に掴み引き起こした。さくらはその手を掴みながら起き上がり、もう片方の手でパンティを直し、頭を押さえて軽く首を振った。
栄子は亜湖の髪を掴んで起こし、一回リングに叩き付けてからリング内に入れた。亜湖は仰向けになり両手で頭を押さえて、軽く歯を食い縛っていた。

『さて、楽しい時間の始まりネ』
ジュディはさくらを抱え上げ、鉄柵の外に出て目指したのは何と亜希子の実況席。亜希子は慌ててマイクを持って席を立った。するとジュディはさくらを机に向かって反動を付けて投げつけた。
「ああああーっっ!!」
さくらは大声を上げて机の上で仰向けの姿を晒した。まさに諺の《俎板の上の鯉》状態だった。横たわっているのは鯉ではなく下着姿のさくらなのだが―――これはこれでなかなかいやらしいシチュエーションだった。ジュディはビキニのショーツを直してからニヤリと笑い、ダメージを負って動けなくなっているさくらにエルボを落とした。すると机は曲がり、さくらは床に滑り落ちた。
「う……あぐっ……うっ……うっ……」
さくらは仰向けの状態で、エルボを受けた胸と背中を押さえながら呻き声を上げながら何とか痛みに耐えていた。ジュディは構わずさくらのツインテールを掴み起こそうとしたが、さくらは頭を持ち上げるだけで起きなかった。
「オラ立てよ!」
ジュディは日本語で怒鳴り、さくらのツインテールを強く引っ張り、もう片方の手でブラジャーのベルトを掴んだ。

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