百花繚乱
百合ひろし:作

■ 第10章 記念試合4

「!」
さくらはブラジャーを外されてはたまらないので嫌々立ち上がった。ジュディはさくらの頭が上がらないようにツインテールを下向きに引っ張りさくらの頭を下げさせ、もう片手はさくらのブラジャーのベルトを持ったまま鉄柵の中に連れて来た。そして、鉄柱にさくらを叩き付けた。
「あぶっっ!」
さくらは叫びそのまま崩れ落ちた。ジュディは今度は椅子を持ち出し、鉄柱の隣で横向きに倒れているさくらをもう一度起こし、今度は鉄柵にフェイスクラッシャーをした。
「あうっ!!」
さくらは両手で鉄柵を掴み、両膝を付いた状態で鉄柵にもたれかかっていた。するとジュディはがら空きになったさくらの背中に向かって椅子を振り下ろした。
「ああああああ…………っ!!」
さくらは声が枯れる位の大声で叫び背中を反らせてそのまま後ろに倒れこみ、両膝を立てた仰向け状態になった。背中を反らして開いた空間に手を入れ、両手で背中を押さえて目をきつく閉じて歯を食いしばっていた。顎は完全に上がり、さっきからの攻撃で涙が出て来た。
『いいざまね。この間やりきれなかった分も含めてまだまだたっぷりいたぶらせてもらうわ。あなた―――Fuckin' bitchだからね』
ジュディはさくらの両足を取った。そしてさっき亜湖に対して香がやったように両足を左右に叩き落した。
「あああっ!!」
さくらは股間を押さえ叫んだ。首を左右に振り、さらに技を掛けようとするジュディに手を出し、降参の意思表示をしようとした―――。しかし、その時、リング上から亜湖の叫び声が聞こえてきた。
さくらは、センパイが耐えて頑張ってるんだから自分がここで降参するような真似は出来ない、と思い直した。もっとも場外で試合権利の無い自分が降参しようとしても効力は全く無いし、同じく試合権利の無いジュディがやめるとも思えない。原因は何だか分からないがジュディは自分を標的にしているのはもう分かっていた。
さくらはうつ伏せになりそこから上半身を起こし、鉄柵に掴まってジュディに背中を向けた状態で立ち上がった。立ち上がったと言っても、膝をきちんと伸ばしたがガクガクしていて、前屈みの状態だった。そして後ろを振り返り、
「椅子でも何でも……やればいいじゃない……早くやってよ!私は立ち上がったよ」
と目に涙を溜めながらも挑発した。ジュディが自分に注意を向けていればその分亜湖への攻撃は軽くなる。少なくとも三人に集中攻撃される事は無い。さくらはそう思い、ジュディの攻撃を一手に引き受ける事に決めたのだった。
「生意気なヤツ。気に入らないね!」
ジュディはそう言い、持っていた椅子を振りかぶり、さくらの背中に叩き付けた。
「ああああっっ!!」
さくらは叫び、膝を付いた。背中はもう何度も椅子攻撃を食らい真っ赤になっていたが、鉄柵を強く握り首を振って震える足に気合を入れてもう一度膝を伸ばした。
「早く……!どうしたの……?私を……叩きのめしてよ。ほら……、まだ立ってるよ!」
さくらはもう一度挑発した。ジュディは、
「お望みならそうしてあげるわ―――」
と言い、もう一発椅子をさくらの背中に叩き付けた。さくらは、
「あああああっっ!!」
と悲鳴を上げ鉄柵を放してしまい、背中を押さえながら転げ回った。
「うぐ……ぁああ……うっ、ううっ……」
やせ我慢は限界だった。目をきつく閉じ歯を食いしばって耐えたが、あまりの痛みに涙が止まらなかった。背中の皮が剥け、手には僅かに血の感触が伝わった。

美紗は動かなかった。相手陣にいる香との睨み合いが続いていた。一方香は美紗と睨み合いをしながらもリング内で闘ってる―――いや、栄子が一方的に攻撃している、と言った方がいい―――亜湖にも視線を向けていた。さくらに関しては無関心といっても良かった。場外から聞こえるさくらの悲鳴を聞けば状況は分かる。それだけで充分だった。

栄子は亜湖を持ち上げ、バックブリーカーに持って行った。亜湖はそれなりに大柄だが、栄子は更に大柄なので簡単に亜湖を持ち上げてしまった。
「あああっ!!あーーっ!ああああっ!!!」
亜湖は声を上げて耐えた。栄子の肩の上で綺麗に弓なりに体を反らせられた状態で、後は耐えるしかなかった。幸いな事に亜湖は運動神経が良いだけでなく、体も柔らかかった。その為、固い人に比べればバックブリーカーのダメージも小さかった―――あくまでも、固い人に比べたらの話だが―――。
ここで美紗が出て来た。バックブリーカーはロープブレイクが出来ないのでギブアップしなければ半永久的に掛け続けられる。逆に言えば、亜湖がギブアップするまで続くのである。それは防がなければならないので美紗はカットをしにリングに入った。栄子はバックブリーカーを解き、亜湖を落とした。亜湖は背中と腰を押さえてリング中央で横向きに倒れていた。
美紗は栄子が亜湖を離した事を確認すると自陣に戻ろうとした。その時後ろから組みつかれ、そのままコーナーに叩き付けられた。
「ぐあっ!…っの野郎」
美紗は後ろを振り向き言った。香はこの時を狙っていた、美紗がカットに入り、そして戻る所を―――。
香は、不意打ちを食らって怯んだ美紗の髪と腕を掴んでコーナーに振った。コーナーに向かって走った美紗の眼前に突然亜湖が現れ、二人はお互い避ける事が出来ず正面衝突した。美紗はその場に倒れ、亜湖は弾き飛ばされた。
香が美紗をコーナーに振ったのを見て栄子は亜湖を美紗にぶつけたのだった。亜湖は体重が自分より遥かに重い美紗と激突し吹っ飛ばされた。
栄子は仰向けに倒れた亜湖を押さえ、フォールした。
「ワン、ツー、ス……」
レフリーは三回マットを叩こうとした所で手を止めた。亜湖の足がロープに掛っていたからだった。
一方香は美紗を場外へ放り出し、ジュディと二人で鉄柵に振った。それから直ぐに香は追い掛け、鉄柵に背中から激突してそのままもたれかかっている美紗に体ごとぶつけた。美紗は腰を落とした。
ジュディは立っているのもやっとなさくらのツインテールと腕を掴み鉄柵に振った。さくらは抵抗する気力もなく振られるまま鉄柵に向かって走った。すると目の前に香がいたのでさくらはチャンスと思い、気力を振り絞り飛び付いた―――。しかし、香の姿は突然消え、目の前には鉄柵と下の方に何かを見付けたが既に遅かった。
さくらは落下しながら鉄柵に正面から激突した。
「あぐうっ!!」
声にならない音を喉から絞り出し、鉄柵にぶつけた胸と股間を押さえて転げ回った。一方美紗は頭を押さえて倒れこんだ。さくらの股間が美紗の頭にヒットしたのだった。
美紗にしてみれば香の攻撃を受け、そして香が目の前から消えたかと思ったら、眼前に突然黄緑色のパンティを穿いたさくらの股間が現れぶつかってきたのだからどうにもしようが無かった。
香とジュディはその場を去り、自陣に戻ったので美紗は立ち上がり、さくらの腕を引っ張って起こし、肩を貸した。さくらは股間と背中を押さえ、俯いた状態で首を振った。
「あの外人は……私に止めさせて……センパイを守らないと……」
美紗はさくらの気持ちが折れてない事を確認するとニヤリと笑い、
「わかった。きっちり仕返しさせてやるよ」
と言い、さくらの腰を支えてリングサイドにに登らせた。さくらはロープを掴んでもたれかかり、体力の回復に努めた。
「しかし……ホントにエロいな、コイツ等」
美紗はリングサイドに登りながら下から下着姿のさくらの後ろ姿を見て思った。

リング上では栄子が亜湖の髪を掴んで起き上がらせていた。そして亜湖の後頭部を左手で押さえ右手を開き喉輪を入れる様に喉を押さえ付けた。そして巨体のパワーを活かして亜湖をその体勢のまま強引に持ち上げ、左手を離して勢いを付けて、亜湖の後頭部をリングに叩き付けた。
「ヤバイ!」
美紗は叫んだ。美紗は栄子との対戦で十勝四敗と勝ち越しているが、負けたうちの三つは今、栄子が亜湖に入れた技―――喉輪落とし―――を決められていた。
栄子は相手が大柄、目安として身長が170cm以上、だと喉輪落としを使う。相手の体重を利用してダメージを与えられるからである。亜湖も喉輪落としを出すだけの大柄選手、と栄子は判断した。因みに香には栄子は三勝二敗と対美紗とは逆に勝ち越しているが、香は165cm程なので喉輪落としは出さず、ネックブリーカーやフルネルソンスープレックスを使っていた。

喉輪落としを完璧に食らってしまった亜湖は大の字になって動かなくなってしまった。栄子はゆっくりと膝を付いてフォールしに行った。そして香とジュディが飛び出して、美紗とさくらのカットを防ぎに来た。
美紗とさくらはカットしに自陣からロープをくぐったが香とジュディに捕まり同士討ちさせられてしまった。さくらは頭を押さえてコーナーにもたれかかり、美紗もロープにもたれた。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊