百花繚乱
百合ひろし:作

■ 第11章 凶悪タッグ2

そして二週間後―――。試合の日が来た。良はトレーナー相手に徹底的にグラウンド技を鍛え直し、この日に備えた。元々グラウンドは得意で鍛えてもいたのだが、いつもの倍はやった―――という意味である。
香は時々偵察を兼ねて練習相手をしたが、軽口を叩いたり相手を馬鹿にしたりしないでかつ、この時のようにグラウンドに徹した良とは戦いたくないと思った。香から見てもそれだけ良はレスリングセンスがあった。

控室に向かう途中で良と香がすれ違った。良は、
「タップリ楽しませてもらうよ」
と言った。香は表情を変えずに、
「私に断わる必要はないわ」
と返した。良は、
「それはどうかな? 何か"亜湖は私のもの"ってオーラ出しまくってるからさ」
と立ち止まって言った。香はそれを聞いて、
「こんな所で下着姿で闘うんだから……。誰だっていじめたくなるんじゃないの?」
と答えた。良は、
「まあそうだよね」
と一応納得した表情を見せ、
「勝敗予測して見てよ。誰が誰をフォールまで―――さ」
と言った。香は、
「あなたがさくらを、ね」
と言った。良は、
「面白い予想だね。じゃ、頑張るよ」
と言って控え室に入って行った。香は逆に事務所に向かった。良に対してああ言ったものの、亜湖やさくらで遊ぶのは自分だけ―――。ましてや良はともかく香から見たら下品で頭悪そうななプルトニウム関東にそんなことをさせたくない、
と思ったが、試合に出る訳でもない自分は何も出来ない事位分かっていた。仮に出られたとしても、プルトニウム関東や良にさせないために自分がパートナーになったら本末転倒である。
「馬鹿馬鹿しい……」
香は呟き悩むのをやめた。

亜湖とさくらが先にリングに入場した。そして先に、この日は珍しくメイドではなくスチュワーデスの制服のコスプレをしたレフリーにボディチェックを受けた―――もっとも凶器を隠す場所など靴下位しかないのだからすぐに終わったが―――。
ボディチェックが終わり、良とプルトニウム関東のチームを待っていた。すると良とプルトニウム関東は控室から勢い良く走ってきてリングに駆け上がり、亜湖とさくらに襲い掛った。
良は亜湖に平手打ちをし、その後髪を掴んで頭を下げさせ膝蹴りを二発三発と腹に入れた。プルトニウム関東は自慢の大きな手でさくらの顔面を掴みそのままコーナーに押し付けた。
「あああっ! あああー!!」
さくらは声を上げ、顔面を鷲掴みするプルトニウム関東の手を掴み離させようとしたが、離す訳がない。背中をコーナーに強く押し付けられ、段々腰が落ちてきた。
「おらおらおら! ああーしか言えないのか??」
プルトニウム関東はさくらの顔面を掴む手に力を入れ、更に前後に揺すったりしながら挑発した。
「お゛ぶっ!」
最後に顔面掻きむしりをするとさくらは声にならない声を上げ、コーナーに腰を下ろす形でもたれながら両手で顔を覆った。
一方良は膝蹴りの後、亜湖を場外に落とし、鉄柵に振った。その時、亜湖の腕とブラジャーのベルトを掴んだ。
「ああっ!」
鉄柵に激突して亜湖が声を出した時にゴングが鳴った。
ブラジャーのベルトを掴まれたら下手に抵抗出来ない。そのままおとなしく振られるしかなかった。そして亜湖がぶつかるや否や良は目の前まで走ってきていた。鉄柵に寄りかかっている亜湖にヒップアタックを決めた。
亜湖は声を上げ、そして腰から崩れ落ちた。良は素早く亜湖の髪を掴んで起こし頭を下げさせて反撃出来ないようにした。もう片方の手でまたブラジャーのベルトを掴んだ。亜湖は良のその腕を掴んで抵抗しようとしたが頭が下がっている為抵抗らしい抵抗は出来なかった。
良は亜湖の頭を一瞬上げさせた後、リングに顔面を叩き付けた。
「あぐっ!!」
亜湖は声を上げ、リングに寄りかかりながら両手で顔を覆った。良は後ろから亜湖を捕まえ、髪とパンティを掴んでリングに入れた。
良とプルトニウムの乱入で始まったので試合の権利は確定していなかった。良はプルトニウム関東に指示を出し、更にレフリーには自分が試合の権利を持っているとアピールした。レフリーはそれを了承し、良と亜湖に試合の権利を認めた。因みにこういう乱入形式は反則扱いにはならないものの、ボディチェックが出来ない事や試合開始時の両者のコンディション―――要はされた側は心の準備が出来ていない―――等差が出来てしまうのであまりやり過ぎると警告を受ける。もっともボディチェックに関しては試合が落ち着いた時にレフリーがそれとなくチェックしてしまうが―――。
良は、立ち上がり掛けた亜湖に至近距離からヒップアタックを入れて押し倒し、うつ伏せにさせてから素早く足を固め、リバースインディアンデスロックを決めた。亜湖は声を上げながらロープを目指し、ロープブレイクをした。

一方プルトニウム関東は良の指示を受けた後、さくらを場外に落とし、鉄柵、鉄柱攻撃に加え、椅子、さらには机等ありとあらゆるものを利用して攻撃した。そして、さくらを抱え上げた。
さくらは57kgと体重こそ軽いものの身長は165cm有り、決して小柄ではなく寧ろ中くらいである。良や香より高く、プルトニウム関東と同じである。そのさくらを軽々と持ち上げ、鉄柵の外に置いてある机に背中を叩き付けた。
「ああーっ!!」
さくらは叩き付けられた瞬間に電気が走るような痛みにビクッと痙攣して声を上げた。そして少し背中を持ち上げて手で押さえた。
「どう料理しようか、俎板の上のさくらちゃん。リング下の埃で顔真っ黒にしちゃおうか……」
プルトニウム関東はニヤリと笑って言った。さくらは長机の上に仰向けに横たわり片膝を立て、もう片足は机の外に投げ出し、背中を押さえて歯を食い縛っていた。
プルトニウム関東はさくらのツインテールを掴み、無理矢理上半身を起こした後、ツインテールを掴んだ手を離しすぐさま背中に斜めに蹴りを入れた。さくらは机から転落し、
「ああ……」
と弱々しく声を出すのが精一杯だった。蹴られた背中を右手で、そして転落した時に打ち付けた肩を左手で押さえ、歯を食い縛り耐えるしか無かった。

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