百花繚乱
百合ひろし:作

■ 第11章 凶悪タッグ4

とりあえずダブルの攻撃はここまで―――。プルトニウム関東は自陣に下がり、良の攻撃になった。良はうつ伏せに倒れている亜湖の髪を掴んだが亜湖は起き上がらなかったので、髪から手を離し、見下ろした。
亜湖にバックドロップを食らって負けたあの日から兎に角辛かった。良の倍率は大きく下がり、その結果ファイトマネーは落ちた。それだけではない。一部の中堅選手から、新人に負けたと言う事でナメられる様になった。それが苦痛だった。兎に角亜湖に復讐をし、またジェネラル美紗に挑戦する切っ掛けを掴みたい―――そう思った。
良は精神的にムラがあり、根は真面目なのだが練習をしない日も結構あった。軽口を叩いたりする性格も災いし、不真面目な選手というレッテルを貼られた。その為に倍率が下がったのだった。

亜湖に負けた次の日から良は兎に角練習した。トレーニングも病気の時以外は計画通りにやった。得意のグラウンド戦に磨きを掛け、そして打撃練習にも力を入れた。プルトニウム関東に声を掛けられてからは重量級対策という事でプルトニウム関東の技を受ける練習もした。プライドの高い良が服を乱して練習室のリング上で大の字になる、なんていう日が続いた。しかし、良はそれでも亜湖に復讐し中堅から上位の選手に上がる為にそれを受け入れたのだった―――。

そしてその成果が今の亜湖の姿―――。
「でも、もっともっとやってやる」
良は呟いた。

―――良とプルトニウム関東が手を組んだ時、亜湖とさくらのプラジャーを外してやろうと目論んだのだが、組んでから一週間後、つまり今から一週間前、良がその実験台を買って出たのだった。プルトニウム関東と練習室に入るや否や、シャツと半ズボンを脱ぎ捨てて下着姿になり、
「どうやったらブラジャー自然に取れるのか、あたしで試してよ。トコトンやっていいからさ」
と自分のプライドを捨てて亜湖とさくらに屈辱を与える方を選んだのである。良はそれからは今迄以上にプルトニウム関東に毎日ボコボコにやられ、その上毎日ブラジャーを外されパンティ一枚にされたが、それでも亜湖とさくらに屈辱を与えられるなら、と思ってそれさえも受け入れた。それだけでなく、プルトニウム関東のブラジャーの外し方が不自然だったりしたら、
「……ダメ。故意に見える」
とダメ出しまでしたのである。ルール上はブラジャー外しは構わない。しかし、勝利を狙いに行くのには関係ない行為なので、わざと相手のブラジャーを外すのはガチで闘い貪欲に勝ちを狙うという丸紫の方針からは感心しない―――。だからわざとではなく試合の流れでそうなった、という風に見せ掛ける必要があったし、わざとやるよりそういうハプニングが起こった、という方が盛り上がると良、プルトニウム関東共に判断した為だった。

これだけの屈辱を受け、プライドまで捨てたのだからもっとやってやらなければ良の気持ちは収まらない。良はうつ伏せの亜湖の足を素早くロックした。そして投げ出された両腕も取りそのまま後ろに倒れ、あっという間にロメロスペシャルを決めた。
「ああっ! あああーっ!!」
亜湖は気付いた時には既に腕を取られていたので脱出出来なかった。良は下から揺すりダメージを増やした。出来るだけ長く揺すり続けたが、体格で劣る良が亜湖の体重を支えて下から攻撃し続けるのはきつかった。
「あああーっ! ああーっ」
良は最後にもう一度力を入れて揺すった。亜湖は声を上げて耐えた。激しく揺すった為、亜湖の胸が揺れた―――良からは見えなかったが。
良はロメロスペシャルを解き、立ち上がった。亜湖は腰に手を当てていた。良はそれを見て、亜湖の髪を掴んで立ち上がらせると素早く上半身を固めて同時に足をからめて、一瞬でコブラツイストを決めた。良は丸紫でただ一人のコブラツイストの使い手である。
繰り返しになるが丸紫では基本相手の攻撃を受けて返す事を醍醐味としているが、隙が大きすぎるもの、わざとらしいものは返せ、とある。
だから先程、亜湖をコーナーに振った時、良はすぐに追い掛けてコーナーにもたれかかった亜湖に攻撃をし、さらにプルトニウム関東は良を利用して自分の姿を見えなくし、良が避けた瞬間に亜湖に攻撃を入れたのである。
今回のコブラツイストも普通のプロレスでは足から入るが良は逆に相手の脇の下から入りながら足を絡ませる。つまり、足が絡まった瞬間にガッチリ入っているのである。

これはレスリングセンスの良い良にしか出来ない入りである。

「あああっ!」
亜湖は声を上げて耐え、レフリーが腕を掴み、ギブアップか確認すると亜湖は首を振り、
「ノ、ノー!」
と言った。背の低い人が掛けるコブラツイストは効かなそうだが、良のコブラツイストはしっかりと亜湖の体を押さえ付けて腰に着実にダメージを与えていった。亜湖は何とか体格で勝る点を活かし、少しずつ技を掛けている良ごと引きずりながらロープを目指し、ロープブレイクした。良はロープブレイク成立を確認するとコブラツイストを解いた。
亜湖は腰を押さえてロープにもたれかかった。その時、場外で上半身を起こして頭を押さえているさくらを見た。さくらも亜湖に気付き、
「センパイ、危な……!」
と言ったが既に遅かった。プルトニウム関東の蹴りが亜湖の背中にヒットし、亜湖は声を上げて倒れた。プルトニウム関東は亜湖の髪を掴んで起こし、それから抱え上げ、ベアハッグの体勢に持って行った。
「あああっっ! ああああっ!!」
亜湖は背中を反らしたりまた、プルトニウム関東の頭や極めている腕を掴んだりして離させようとしたが、プルトニウム関東は掴まれると余計力を入れ亜湖はもがき苦しんだ。プルトニウム関東は自陣のコーナーを亜湖越しに見てニヤリと笑ったが、亜湖は声を上げて耐えていたのでそれに気付かなかった。
良がトップロープから亜湖のがら空きとなった背中にドロップキックを入れ、その勢いを利用しプルトニウム関東は亜湖を後ろに放り投げ、亜湖はリングのど真ん中で大の字になった。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊