百花繚乱
百合ひろし:作

■ 第11章 凶悪タッグ6

こういう展開になるとさくらが投げ勝ち、それから亜湖を助け二人で反撃―――と思うだろう、表的な見方をすれば亜湖とさくらは典型的なベビーフェイス。一方良は兎も角プルトニウム関東は典型的なヒールである。
だからベビーフェイスの二人が後半反撃すれば盛り上がる―――と。しかもトップロープからのブレーンバスターの掛け合いになれば《リング内に投げる方が勝つ》と。

しかしここは丸紫。掛け合いになれば純粋に強い方が勝つ―――。
良とさくらは膠着状態になったが、良はさくらが力を込めようと息を吸い、力が少し抜けた瞬間に片足をセカンドロープに下ろし、それから力を入れ、逆にさくらを持ち上げた。さくらは持ち上げられた事に驚いた。良はこの位置からは場外にしか投げられない。場外にこの高さから投げれば良自身も大ダメージを受ける。それなら大人しくさくらに投げられてしまった方がいい―――と思うに違いないと判断したからだった。しかし、実際に持ち上げられてるのはさくらだった。
さくらは、この状態で暴れて良がバランスを崩して変な所に落ち、打ち所が悪ければ死んでしまう為抵抗せずに良が投げるのを待った。その時丁度プルトニウム関東にパイルドライバーの体勢で逆さに持ち上げられている亜湖を見た。
「センパイ……」
さくらは良に聞こえない位小さな声で呟いた。

「あたしに構わずにやっちゃって!」
良は叫んだ。そしてさくらをどこに落とすか、を見れる範囲で探した。真後ろが一番楽だが、トップロープからのブレーンバスターで背骨を鉄柵に強打してしまったら最悪背骨を折って死んでしまう。あくまでプロレスと言う"競技"であり殺すのが目的ではない。相手を倒す、スリーカウントを奪うのが目的であるのでそうならない場所を探した。
うまくやれば体を捻ってリング内に投げる事も出来るが、亜湖はいいにしろプルトニウム関東にも激突していわゆる同士打ちに近い形になってしまう。それにさくらを持ち上げた状態で体を捻れば良の体に架る負担が大きい。その為―――。

良は左後ろに投げた。

プルトニウム関東の視界から良とさくらが消え、直後にドスンと鈍い音が響いた。その音を合図に亜湖にパイルドライバーを決めた。亜湖はゆっくりと左に崩れ落ち、横向きに倒れ、痙攣していた。プルトニウム関東は亜湖を小突き、仰向けにさせた。亜湖は大の字になり、ビクッ、ビクッと痙攣する姿を眺めた。
それから亜湖の髪を掴もうと手を伸ばすとレフリーが止め、試合がそこで止まった。そして亜湖の状態を確認してから急いで場外に降り、良とさくらの状態も確認した。
良は背中を強く打ち付け、その衝撃が首を伝って頭に来た為、背中を打ち付けた瞬間に飛び上がる様に半回転してうつ伏せになり、頭と背中を押さえて足をバタつかせていた。
一方さくらは良以上にダメージを受け、背中、腰を押さえたかったが全身動かせない状態になっていた。大の字になり呼吸に合わせて胸が動いているだけだった。そして時々目をきつく閉じ、歯を食い縛って涙を流して耐えていた。
レフリーは二人共意識はしっかりしてる事が確認出来た為、場外に控えているトレーナーに二人を見てるように指示した。そしてリングに戻った。
プルトニウム関東は大の字になっている亜湖の両足の間に立ち、痙攣している亜湖を見下ろしていた。見下ろしていただけで何もしなかった。
「しかし、コイツホントに楽しませてくれるぜ。良が伸びてるのが残念だな」
と呟き、良が落ちていった方へ歩み、場外で倒れている良に向かって、
「オイ、良! 足バタつかせてんなら起きろ! おもしれーぞこっちは!」
と叫んだ。良は、その声を聞いて、片手をついて上半身だけ起こし、頭を押さえながら首を振った。そしてゆっくりと立ち上がりフラフラとリングサイドに歩き、リングに手をついて顔を上げて中を見ると―――。
「うそ……やった」
と呟いた。丁度亜湖は良に足を向けて倒れていた。大の字に足を開いているので良からは亜湖の両足の奥には股間が見え、汗でパンティが濡れ始めているのが分かった。太股〜濡れ始めたパンティ―――腰が、ビクッ……ビクッ…と痙攣しているのがまた何とも言えないいやらしさを見せていた。
良は背中を押さえながらも、今の場外へのブレーンバスターのダメージがみんな吹っ飛んだ感覚になった。これが見たかった。これで亜湖に一つ屈辱を与えられた。身を犠牲にしてさくらを場外へ投げ捨てたのは無駄では無かった―――。
良はリングに上がり、ロープに寄りかかって座り亜湖の痙攣をじっくり観察した。テレビのドアップもいいが、間近に見るのはまた違った。
レフリーが亜湖についていて攻撃出来ないし痙攣している間はする気も無い。場外のさくらを確認するとまだ大の字のままで、ようやく片手で顔を覆っている、といった状態。まだ暫くは上がってこれないだろうから、安心して亜湖を観察出来た。
亜湖の足、股間〜パンティの向こうには胸が見え、顔は横に向けていた。レフリーが時々亜湖にピシャッと軽く頬を打っていたが、再び打つと今度はそれに合わせてビクッと大きく痙攣し、亜湖は首を振って気が付いた。最後の痙攣では胸も揺れた。
「じゃ、次は仕上げかな〜」
良は立ち上がり、自陣にゆっくりと戻った。
レフリーは試合を再開させた。プルトニウム関東は既に逆のコーナーに移動していて、試合再開のコールを聞くと同時に走り込んで亜湖に向かって肘を向けてジャンプし毒針エルボーを叩き込んだ。亜湖はプルトニウム関東の位置を把握していなかったので把握した時には既に真上から降ってきた時だった。
毒針エルボーを亜湖はまともに受けてしまい、その衝撃で足と腰が浮いた。
しかし、プルトニウム関東はフィニッシュ技を決めたにも関わらず、フォールに行かず、良にタッチした。
「そろそろ仕上げようぜ」
「だね、二人ともね」
良はそう返事してリングに入った。

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