百花繚乱
百合ひろし:作

■ 第12章 大先輩6

それからさくらの合図で練習試合が始まった。生徒会長と亜湖は一歩間合いを詰めて暫く静止した後、手四つに組み合った。生徒会長は亜湖の力を確認し、
『暫く受けてみようかな』
と思った。そして、押し込む亜湖に抵抗しながら少しずつ後ろに下がった。そしてロープに背中がつくと手四つをほどき両手を上げた。
それから仕切り直しになり、また手四つに組み合ったが生徒会長は素早く亜湖の首を決めに行った。亜湖は逆にそれをほどくように生徒会長をロープに振り、追い掛けた。亜湖は生徒会長がロープから跳ね返るや否や浴びせ蹴りを決め、生徒会長はそれを受けて倒れた。亜湖は生徒会長の髪を掴んで素早く起こした後、もう一度ロープに振り、今度はパワースラムを決め、そのままフォールした。
「ワン!」
さくらがカウントを取ったが生徒会長はカウントワンで軽々と返した。亜湖は生徒会長の髪を掴んで起こし、今度はコーナーに振った。生徒会長は、コーナー手前で向きを変え、背中から激突し、そして直ぐに突っ込んで来た亜湖のジャンピングニーをまともに受け、反動で前に倒れた。
『え……? おかしい……』
亜湖は思った。自分を潰すと言ったのにも拘らず、生徒会長は防戦一方。しかも亜湖自身攻撃が下手なのは分かっていたし、生徒会長も亜湖に対して、受けるタイプ、と言っていたのでなおさらおかしいと思った。生徒会長はさっき香とやった時の疲れが残っているのではないか、とか色々思った。しかし、実際に生徒会長はうつ伏せに倒れていて動かないので、攻撃を続けるしかなかった。

亜湖はもう一度生徒会長の髪を掴んだが生徒会長は起きなかったので、腕も掴んで起こした。そしてコーナーに振ると、生徒会長はフラフラした足取りで走って行き、さっきと同様に背中から激突した。亜湖は同じ様に反撃の隙を与えない間隔で追いかけて今度はタックルを入れた。生徒会長の腰が少し落ちたので、それを見て髪を掴みに行った―――が、

逆に倒された―――。

生徒会長は素早く亜湖の足を取り、太腿の裏側に強烈なローキックを入れた。
「あああっっ!!」
亜湖は声を上げ蹴りが入った所を押さえた。生徒会長はもう一度足を取り、膝十字を決めた。亜湖は、
「ああっ! あああーっ!!」
と声を上げながら暴れた。生徒会長は、
「ちょっと亜湖ちゃんの攻撃力を見させて貰ったよ。ごめんね」
と笑って言った。そして亜湖がギブアップしない程度に膝十字の力加減をした。亜湖の声が止んだら力が弱すぎると言う事で強く掛け、亜湖の声や暴れ具合を見て、これ以上強く掛けたら怪我させてしまうとかギブアップさせてしまうと思ったら掛ける力を弱めた。
亜湖がやっとの思いでロープブレイクすると、生徒会長は直ぐに技を解き、亜湖の髪を掴んで、
「なかなか我慢強いんだね。普通の人―――そうだな、草薙先輩ならギブアップの強さで掛けたんだよ」
と嬉しそうに言った。そして亜湖が起き上がると股の間に手を入れて持ち上げ、そのまま勢い良くボディスラムで叩き付けた。亜湖が声を上げ反動で上半身が起き、背中を押さえた所、その手を払い除け、ブラジャーのホックの辺りにローキックをお見舞いした。
「ああああっっ!!」
亜湖は大声を上げて仰向けに倒れ、そして背中を反らして手で押さえた。そして歯を食い縛りながら軽く首を左右に振っていた。
生徒会長は亜湖の髪を掴んで起こす振りをした。亜湖が起きようとした所、背中に踵を落とし亜湖が声を上げながら倒れた所に、腕絡みを入れ、そこからグラウンド技のコンビネーションを入れて最後に胴締めスリーパーに入った。
「ギ、ギブ……?」
さくらは亜湖の腕を取り、亜湖に意志を確認した。亜湖はさくらの手を握り返して左右に振り、さらに、
「ノ、ノー!」
とギブアップしない意志を示した。さくらは、亜湖の手を離し様子を見た。生徒会長はある程度掛け続けた後、胴締めスリーパーを離し、今度は亜湖の髪を掴んで場外に放り投げた。亜湖は場外に転落してうつ伏せになった。
生徒会長はひらりと場外に降り、辺りに亜湖に攻撃できそうな物を探した。練習室の場合、試合のリングとは異なり、鉄柵や攻撃用の椅子は置いていない。つまり普通に何かするとなると、鉄柱攻撃かマットに向かって投げ捨てるくらいしかないのだが、生徒会長はリングの下に椅子が幾つか仕舞ってあるのを見つけた。それを素早く取り出して横に置き、亜湖の髪を掴んで起こし、鉄柱攻撃をした後、鉄柱に掴むように寄り掛かり、背中を見せている亜湖に向かって思いっ切り椅子を振り下ろした。
「ああああーっ!」
物凄い音と共に亜湖は声を上げ勢い良く倒れた。さっきと同じ様に背中を少し浮かせて手で背中を押さえ、目をきつく閉じ歯を食い縛って痛みに耐えていた。生徒会長はにっこりと笑い、
「いい音♪」
と言った。さくらはその言葉を聞いて、生徒会長は何処か壊れてしまっている人なのかも知れない、と思った。香も美紗も、それに亜湖を滅茶苦茶にして満足した良にしたってこんな笑顔で亜湖を痛めつけたりはしない。精々恥辱技を掛けてその時にニヤリと笑う程度である。
―――しかし、生徒会長は違う。さっきから、いや―――、香に技を掛けていた時も、もうそれが楽しくて仕方が無い、そんな無邪気な笑顔を見せているのだ。笑顔で椅子を打ちつける、そんな人なのである―――。
「さくらちゃん、次は何がいい??」
生徒会長はさくらがそんな事を思っている事を気付いたのか気付かなかったのか、リング上に居るさくらに話を振った。さくらは左手の人差し指でパンティを直しながら、
「え……? あ……、ゆ、弓矢で」
と答えた後、つい乗せられた事に気付きハッとして両手で口を押さえた。生徒会長は、満面の笑顔で、
「亜湖ちゃん聞いた? さくらちゃん亜湖ちゃんに弓矢掛けて欲しいんだって。ああ見えてやらしいね」
と言って、亜湖の髪を掴んで起こし、髪を掴んだまま腹に膝を入れて顔面をリングに叩き付けた後、腕とパンティを掴んでリングの中に入れた。亜湖はそのまま仰向けになり、パンティを直した。その間に生徒会長はリング内に素早く戻り、亜湖の側に歩いて来て亜湖の肩に膝を落とした。
「あぐっ!」
亜湖が声を上げると生徒会長は、更に腕を取ると見せかけてエルボーを落とし、そのままフォールした。
「ワン、ツー」

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