百花繚乱
百合ひろし:作

■ 第12章 大先輩10

「何も知らないくせに逃げたなんて言われて気分悪い。だから魅せ技は使わない、三分で倒す―――。自分の言った事には責任持ってね、さくらちゃん」
生徒会長はそう言った。さくらは恐怖でゾクッと身震いした。亜湖は生徒会長の表情を見て、
「せ、生徒会長さん……、さくらはまだ……」
と言った。生徒会長は、亜湖を見てニコッと笑い、
「心配しないで。殺人者みたいな言われようだけど、殺しはしないから……思い知らせてやるだけだから」
と言ってさくらに対して人差し指をクイッと引き寄せた。そして、
「洋子さん、レフリーお願いします」
と静かに言った。さくらは、
「怖い……、っでも……」
と言った。その時、洋子が試合開始の合図をしたので、さくらは生徒会長に突っ込んで行った。そして平手を一発二発と入れた。生徒会長はそれを避けもせずまともに受けた。さくらは生徒会長の腕を取りコーナーに振って、生徒会長が背中からぶつかると同時に体ごとぶつかって行った。それも生徒会長はまともに受けたが次の瞬間さくらは勢い良く倒された。
「あ……ぐっ……」
さくらは後頭部を押さえてのた打ち回った。生徒会長はそれを見下ろし、
「学習能力が無いと困るんだよね。私と亜湖ちゃんとの試合、何見てたの?」
と言った。そこから先は生徒会長の一方的な攻撃だった。亜湖とやる時に見せていた"間"は一切無く、畳み掛けるように攻撃して行った。
そして、動けなくなったさくらにフルネルソンスープレックスを決め、洋子がカウントを取るとカウントツーで自分からさくらを解放し、両足が頭の横に来て可愛いパンティに包まれた股間を見る形になったさくらの体を仰向けにし、その後、膝のサポーターを下にずらして、高くジャンプしてさくらにジャンピングにードロップを落とした。それからフォールに入り、洋子がカウントを取った。
「ワン、ツー、スリー」
勝負はあっけなくついた。2分35秒。生徒会長の勝ちだった。生徒会長は倒れたさくらの上に馬乗りになって殴る振りをした。亜湖が飛び込んできて、
「や、やめて下さい」
と言ってかばったので、生徒会長はニコッと笑って、
「最後は冗談だよ。指導と本気で潰す区別もつかないさくらちゃんでもコレで分かったでしょう」
と答えた。そして立ち上がった後、
「私は、亜湖ちゃんもさくらちゃんも好きだよ」
と言ってリングから下り、ペットボトルを取り出してリングに戻り、さくらの顔に水を掛けた。するとさくらは気が付いた。そして、亜湖に支えられて上半身を起こした。すると目の前で生徒会長がしゃがんでいた。さくらは、
「ご……ごめんなさい」
と謝った。すると生徒会長は、
「それだけじゃ、何に対して謝ってるのか分からないな」
と笑顔で言った。さくらは、
「生徒会長さん……、ただ潰したいだけじゃなかったって分かりました。潰すだけなら、今私にした様に亜湖センパイにやってた筈なのに私……、全然解ってませんでした……。ごめんなさい。あと、負け犬呼ばわりして……、ごめんなさい……」
と頭を下げた。生徒会長は、
「分かってもらえて良かったよ。うん」
とニコッと笑って言った。ウジウジ引っ張ったりはせず、さくらの全てを水に流してしまった。さくらは、
「ごめんなさい……」
ともう一度謝った。生徒会長は笑顔で、
「いつまでも気にしない」
と言って、そして後を洋子に頼んでリングから下り、練習室から出る時に、
「また来るから、その時は何時来るか前もって連絡するよ」
と言って部屋から出て行った。

生徒会長が帰った後、さくらは亜湖に、
「心配かけてごめんなさい。センパイの事だと……我慢できなくて」
と謝った。亜湖は、
「私の為にありがとう。ただ、熱くなり過ぎないでね。さくらは熱くなるとさっきみたいに触れちゃいけない所まで行っちゃうから」
と言った。さくらは、
「はい……気を付けます」
と答えた。横で聞いてた洋子は笑顔で、
「とにかくさ、二人共生徒会長にあそこまでやらせるなんて余程気に入られたんだね。普通初めて会った人にやらないから」
と言い、さくらの背中をポンと叩き、
「それとあんた時々凄い度胸見せるね、益々楽しみだよ。生徒会長にタンカ切れるのそうはいないから」
と言った。さくらはそれを聞いて恥ずかしくて顔を真っ赤にし、うつ向いてしまった。
「兎に角、生徒会長さんが時々来てくれるんだから頑張ろう……ね」
亜湖が言うとさくらは、
「ハイっ、センパイ」
と可愛らしく返事した。


「今のは―――生徒会長?? でも何で……」
練習室から生徒会長が、しかも現役の時と同じ格好で出て来たので、それを見たゴスロリ衣装でサイドテールにしている女の人が呟いた。
「練習室行ってみませんか?」
もう一人、ナース姿にコスプレした女の人が言った。ゴスロリサイドテールの人は、コクリと頷いた。二人は練習室のドアを少しだけ開けて覗いた。
「そういうこと……。じゃ、美里。やっちゃおうかしら」
ゴスロリサイドテールの人はナース服で髪をシニオンにしている美里―――羽富美里に言った。美里は
「はい、かえで様」
と答えた。ゴスロリサイドテールの女の人は佐々木かえでである。
「生徒会長が絡んだって事はこれから強くなるかも知れないから、今のうちに叩いておかないとね」
かえでは顎に指を掛けて言った。美里は、
「はい、かえで様。亜湖に負けた草薙がシングルで復讐の機会狙ってるし、草薙の前にやるのが良いかと」
と言った。そして二人はその場を去った。

二人が志願して亜湖、さくら対かえで、美里のタッグ戦が決まった。試合は二週間後になった―――。

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