百花繚乱
百合ひろし:作

■ 第13章 お嬢様の試練2

5分後―――。試合は美里とさくらに変わっていて、さくらより小柄な美里が攻撃していた。
さくらをコーナーに振り、すぐに体当たりをした。さくらの腰が落ちた。美里はさくらのツインテールを掴み、もう一度コーナーに振った。しかし、直ぐに攻撃には行かずにさくらがコーナーに背中からぶつかってから走った。

―――技を受けて返すのが基本だが、わざとらしいのは返せ―――
丸紫の理念に従い、さくらは突進してきた美里にハイキックをお見舞いした。そしてキックを受けた顔を押さえている美里にネックブリーカーを決めた。そしてフォールした。
「ワン、ツー」
美里はカウントツーで足を振り上げて返した。美里はさくらの反撃数発でカウントツーまで追い込まれた。というのは美里は亜湖は勿論さくらや身長が167cmあるかえでより遥かに小柄で155cmしか無いからだった。
さくらは美里の髪を掴んで起こした。そしてロープに振ったが、その時かえでが美里に顎を親指で触るサインを出していた事に気付かなかった。
美里はロープに背中から当たるとそのまま両腕でロープを抱えこみ跳ね返らなかった。さくらは跳ねかえらなかった美里に向かって突っ込んで行って、そして飛び付いた。

ブッ!

その時さくらの視界は瞬時に奪われた。その後美里は避けた為、さくらはロープに横向きでまともに飛び付いてしまう格好になり、肩から胸、腹、股間を強打した。
「ああああっ!!」
さくらはそのままマットに落下し顔と股間を押さえてのたうち回った。美里はさくらを仰向けにし、顔を押さえてる手を払い除け、馬乗りになって真っ黒に染まったさくらの顔を両手で鷲掴みにした。
「あああっ! ああああっっ!!」
さくらは予想以上の握力で顔面を掴む美里の力、目が開けられない辛さ、股間や胸の痛みに声を上げた。
「美里は握力だけは強いんだよね。体小さいから全部は無理。だから握力を徹底的に鍛えたのよ……」
かえでは呟いた。

毒霧という目潰しで一瞬で劣勢になったさくらを助けるため亜湖はロープをくぐり、カットに走った。しかし、そこをかえでは狙っていた。
「ああっ!!」
かえでも飛び出して亜湖に毒霧を浴びせた。先程の美里がさくらに浴びせた毒霧よりも綺麗に亜湖の顔面に掛った。
視力を失った亜湖は左手で顔を押さえ、右手でロープを探しながらフラフラと歩いた。そこをかえでは捕まえた。
「顔にクリーンヒット。フフッ……気分はいかが?」
と不気味に笑いながら呟き、亜湖を持ち上げ、
「安心しなよ! 可愛いブラとパンティは汚さないから。あんた顔はどうせモザイクなんだから関係ないでしょ? でも可愛いブラジャーとパンティはしっかり見せないとね。だから汚さない」
と言いながら亜湖を担いでロープ際まで歩いた。亜湖は首を振りながら、
「レ、レフリー! は、反則じゃ……」
と言った。レフリーは、視界を奪われた亜湖には見えなかったが首を振って、
「届出がある以上、反則じゃないよ」
と答えた。かえでは続いて、
「そういう事。私たちの事ろくに調べもしなかった貴方達が悪いのよ。調べれば毒霧使う事位載ってるんだから」
と意地悪そうに笑って言った。亜湖はそれを聞いて諦めてこのまま闘うしかないんだ……、と思った。
かえでは亜湖をロープに向かって先程さくらがロープにぶつかった時の様に横向きに放り投げた。
「あああっっ!!」
顔、胸、腹、股間をロープに打ち付けた亜湖は部屋中に響く大声を出し、落ちないようにロープに掴まろうとしたが、その瞬間、かえでにロープを蹴られた為掴む事が出来ずに落下し、リングサイドに腰を強打しそのまま場外に転落した。
「あはははっ! いいザマ! お下劣な下着姿の娘なんて場外で大の字になってるのがお似合いね!」
場外で腰を押さえて倒れている亜湖を眺めてかえでは嘲笑した。
「う……ううっ……」
亜湖は右手で腰を押さえながら、左手で目頭を押さえた。あまりにも打ち付けた所が多く、しかも目が見えない状態だったので受け身も取れず、ダメージが大きすぎた。その為涙を抑える事が出来なくなっていた。
亜湖は右手を腰からパンティに移し、パンティを直した後、腰に戻した。その時に気付いた。
―――泣けば、涙でインクを洗い流せる―――と。
何とか起き上がり四つんばいになって鉄柵を探した。そして鉄柵に掴まり体を起こした。

「くっ……美味しい役やりやがって!」
試合を見ていた良は悔しがった。一方香は平静を装っていたが、やはり良と同様に上手に亜湖苛めをしているかえでに対して感じるものがあった。しかし、毒霧などという手段は性に合わない。
「私なら―――、かえでは甘いわね。あそこで場外で亜湖を痛めつけないと下手すると回復されるのに……」
香はそう呟いた。一方美紗は、
「おい生徒会長。あの後亜湖とさくらが勝つにはどうすればいいんだ?」
と聞いた。生徒会長は、顎に手を当てて、
「さくらちゃんが頑張らないと無理なんじゃないかな?」
と答えた。美紗は、
「何でだ? さくらにゃ厳しいだろ」
と聞いた。生徒会長は、
「かえでは始めから亜湖ちゃんの顔を狙ってたみたいね。美里は流れで―――、サインか何かでさくらちゃんに毒霧した。その差だよ―――。さくらちゃんの目にはそんなにインク入ってないよ」
とニコッと笑って答えた。美紗は、
「そんなもんか? 同じに見えるが」
と言った。生徒会長は、
「ううん、亜湖ちゃんは顔しか汚れていない―――。でもさくらちゃんは顔だけじゃなくて首とかブラジャーにも少し掛かってる。つまり、美里の毒霧は顔の下側中心に掛かってる。だから目にはそれ程入ってないよ。亜湖ちゃんは試合終了まで目が見えないかもしれないけど、さくらちゃんはじき、見えるようになる」
と答えた。香はそれを聞いて、
「さくらが二人の相手をしながら持ち堪えないといけないって事ね?」
と聞いた。生徒会長は、
「うん、その通り」
と笑って答えた。

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