百花繚乱
百合ひろし:作

■ 第15章 壁4

「一瞬で美紗に流れが戻った! 今までB子に話し掛けたりしてたけど、やはりパートナーだから教育してたという事なんでしょうか!」
体操着にブルマ姿のコスプレをしている実況の亜希子はマイクに向かって言った。
美紗はさくらのツインテールを掴んだがさくらは起き上がろうとはするものの、起き上がれなかった。
美紗は暫くその場に立っていた。レフリーはそれを見てさくらが気を失ってるか確認に入った。
さくらはレフリーに握られた手を握り返し、意識を保ってることをアピールした。レフリーはそれを確認するとさくらから離れた。

美紗はもう一度さくらのツインテールを掴んで起こした。そしてさくらが起き上がると場外に振った。さくらは転落し、うつ伏せに倒れた。美紗はゆっくりと場外に降り、さくらを捕まえた。ツインテールを掴んで起こし、思い切り鉄柵に振った。さくらは激突して、
「ああああっ!!」
と声を上げた。美紗は追撃せずに、もう一度さくらのツインテールを掴んで立たせた後、担ぎ上げ、鉄柵の外に出て、実況席に向かった。
そして実況している亜希子の机に向かってさくらをボディスラムで叩き付けた。
「ああーーっ!!」
さくらは背中を押さえて大声を上げた。そして机の上で仰向けで横たわるさくらをカメラは捕えていた。さくらは只でさえ下着姿で恥ずかしいのに更に机の上で仰向けという恥ずかしい格好を晒しているので顔を赤らめた。早く机から降り、立ち上がればいいのだが、体が言う事を聞かなかった。
亜希子は机の下に置いてあるヘルメットを手に取って被り、マイクを持って避難しようとしたが、美紗に捕まり抱えあげられてしまった。
「み、美紗は……! わ、私をどうするつもりなのか!」
それでもネットで見る観客の為に実況を続けた。
「こうするんだよ」
美紗はそう言って亜希子をさくらに向かってボディスラムした。
「あぶっっ!」
さくらは鈍い声を上げた。一方亜希子は床に滑り落ち、左手で背中を押さえてうつ伏せになっていた。しかし、右手はしっかりマイクを握り、苦しみながらも実況を続けた。
美紗はさくらのツインテールを掴み無理矢理立たせて引きずり、鉄柵の中まで戻り、膝を一発入れた後に担ぎ上げ、足で乱暴にマットを剥がした後、さくらをボディスラムで叩き付けた。
「―――!!」
さくらは声が出なかった。背中を反らし右手で押さえ、左手で目頭を押さえた。


控え室では遅れて来た亜湖と次の試合の為控えている香がモニターで観戦していた。
「さ……、さくら……」
美紗の容赦ない攻撃に亜湖はさくらの名を呼ぶ事しか出来なかった。一方香は、
「随分エグいわね。さくらクラスにやる攻撃じゃないわよ」
と冷静に見ていた。しかし―――、それは表面的にである。内心はさくらをあれだけいたぶれる美紗が羨ましかった。
「まあいいわ―――そのうち私も対戦申し込むから。仕上げたいし」
香はフッ、と笑って言った。亜湖は、不思議そうに、
「対戦って誰とですか? 仕上げって?」
と聞いた。香は亜湖の方を向いて、
「何でも無いわ」
と答えた。―――お前だよ、と思いながら―――。真横に下着姿の亜湖がいるのだから意識せずにはいられなかった。

美紗は仰向けに倒れているさくらを眺めて、
『やっぱりさくらは受けが弱いな。そういう性格だから仕方ないけど少なくても亜湖と同じは無理だ……』
と思った。場外へ引きずり出したのは攻撃に対する耐性を見る為だった。
まず、受け戦法を極めようとしている亜湖に比べて体力が低く、体格、体重も劣る。それだけでなく、美紗や栄子みたいに明らかに大柄な人を除いて、攻撃型でランクの高い香、かえで、プルトニウム関東等に比べても身長は兎も角、体重や筋力が劣るので彼女達の重い攻撃は受けきれないと感じた。
美紗はさくらの状態を見て、今回はこれで試合を終わらせるのがいいと思った。しかし、その前に一つだけさくらにやらせたい事があった。その為さくらのツインテールを掴んで起こした。さくらはゆっくりと手を付いてフラフラと立ち上がった。左手でパンティを直し、乱れたツインテールを気にした。
美紗はさくらの頭を下げさせたまま、マットに一回叩き付け、それからリングに入れた。それから美紗も戻り、さくらのツインテールを掴んで起こした。
それからコーナーに振り、ボディアタックで追撃した。さくらは反動で前に崩れ落ちそうになったが、そこを捕まえて背中を軽く叩いた後今度はロープに振った。そして、
「攻撃しろ、さくら!」
と発破を掛けた。さくらはロープで反動を付け、美紗に向かって走り、ジャンピングニーをした。美紗はそれを受けたが、体力が無くなってるさくらの攻撃は高さも威力も無く、効かなかった。
そして着地したさくらを待っていたのは美紗の右腕―――ラリアットだった。さくらは何とか受け身を取ったがラリアットの威力は凄まじく、マットに叩き付けられた後体が反動で一回浮き上がりそして落ちた。
美紗は軽くさくらの右足を左腕で固めてフォールした。レフリーは直ぐにカウントに入る―――。
「ワン、ツー、スリー」
さくらは全く動けずに負けが決まった。
美紗はフォールを解き、そのまま立ち上がり、勝ち名乗りを受けた。それが終わった後も引き上げずにそのまま立っていた。
レフリーは場外に水を要求し、ペットボトルが投げ込まれるとそれを開けてさくらの顔に掛けて起こした。さくらは気付き、ゆっくりと上半身を起こした。
「負けたんですね―――」
さくらはすぐに状況を理解して言った。美紗はさくらの腕を掴んで起こし、肩を貸した。
「頑張ったけどまだまだだよ」
美紗は一言だけ言った。さくらは、
「はい……。もっと頑張ります」
と答えた。

控え室に戻ると亜湖が待っていて労ってくれた。
「さくら、お疲れ様」
さくらはそれを聞いて、
「ありがとうセンパイ。私もっと頑張ります」
と答えた。そこに香が入って来て、
「五分四秒―――。褒めてあげるわ。超えたことには変わり無いから」
と言って試合に向かっていった。

因みに香の結果はというと、中堅で、ウエイトレス風のコスプレをした砂原ひかりを相手にし、僅か四分三十秒、ポニードライバーで沈めてしまった。

倒れてるひかりを仁王立ちで見下ろしながら、
「フフッ……。亜湖、さくら。次は貴方達の番よ」
と邪悪な笑みを浮かべて言い、そのまま引き上げた。


「あ〜あ。さくらちゃんやっぱり負けたか」
生徒会長は自宅のパソコンで試合を見て言った。もっともさくらが美紗に勝つ可能性など無いと思っていたが―――。
「千円スッちゃったけどまあいっか。強くしてあげれば」
とニコッと笑って言った。この試合は賭けが成立せず、配当無しになる可能性があったが、生徒会長はあえてさくらに賭けた。少しであるが自分が教えてる訳だし、もしさくらが勝てば千円が数十万になるから、というのもあった。


次の日、早速さくら、そして亜湖も生徒会長のコーチを受けて練習した。
それは、さくらの身体能力だけでなく、性格も考えての上でどうこれから闘っていくといいのか、というのも考えてのものだった。

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