百花繚乱
百合ひろし:作

■ 第16章 前哨戦2

一週間後―――。生徒会長は亜湖に教えに来たが、
「特にやることなんてないかな。あったとしても試合が決まってから対策じゃ無理無理。時間が無さすぎるよ」
とにっこり笑って言った。亜湖は、
「勝つ方法は無いんですか……?」
と聞いた。始める前から手詰まりなのかと思ってしまった。しかし、生徒会長は、
「12分耐えなよ。それでOk。後はキャサリンは派手な技が好きだから―――」
と言った後、
「その隙を突いて反撃しなよ」
と亜湖の胸を突いて悪戯っぽく笑って言った。亜湖は顔を赤くして胸を両腕で覆った。生徒会長は、
「可愛いブラしてるから―――触りたくなっちゃうじゃん」
とニコッと笑って言った。亜湖は下を向いてしまった。
「もう―――可愛いなあ〜。鈍臭いし真面目なのに下着姿なんてそのギャップが―――」
生徒会長は後ろを向いて呟いた、亜湖には聞こえないように。そして、さくらも居たので向き直って、
「とはいっても一回は彼女の攻めかた体験した方がいいでしょ。ちょっと上がって」
と言った。亜湖は、
「は、はい」
と返事した。生徒会長は前にさくらに見せた笑顔の無い目が据わった顔を一瞬見せ、
「気絶させるからね」
と断った。亜湖は恐ろしさにゴクリと唾を飲み込み、
「―――はい」
と意を決して返事した。生徒会長はニッコリ笑って、
「いい顔。その顔、最高に好きだよ」
と言った。


試合の日―――、亜湖はいつもの様にさくらと一緒に帰って来て丸紫に入った。社長と銀蔵、そしてすれちがった人に挨拶し、更衣室に入った。それから着替をした―――。しつこいようだが、亜湖とさくらは下着姿、ただ服を脱ぐだけであるが、それが二人の着替である。
「センパイ、頑張って下さい」
さくらは亜湖を元気付けた。亜湖は、
「うん、ありがとう。さくら」
と笑顔で答え、自分の姿を鏡に映して見た。そして、靴下、ブラジャーのストラップ、そしてパンティを直し、控え室に向かった。
『私―――下着姿の自分に酔ってた??』
亜湖は移動中に思い赤面した。鏡に向かって正面や後ろ姿を映し、何回も確認するように見ていたからだった。
しかも、試合で人に見られる時に薄い水色のお気に入りのを身に付けているから―――。


ランクの低い亜湖が先にリングに上がり、相手のキャサリンを待った。キャサリンが入場するとメイド姿のレフリーが二人のボディチェックをした。下着姿の亜湖にビキニの上にカウボーイ衣装を着るというお互い露出度の高い格好なのでボディチェックは直ぐに終わった。それから紹介が入った。

紹介の後にゴングが鳴り、試合が始まった。二人は直ぐに手四つに組み合ったが直ぐにキャサリンが嫌い、離れた。
そして再び組み合ったが、一瞬の隙にキャサリンはヘッドロックを決め、更にそれをすぐに解き、倒れ込みながら浴びせ蹴りを入れた。亜湖は後ろによろめいたがそのまま後ろに下がり、ロープの反動を利用して走った。
するとキャサリンは後ろ回し蹴りを決めた。
「ああっ!」
亜湖は声を出して倒れた。すぐにキャサリンの追い打ちが来た。キャサリンの膝が亜湖の首から胸に食い込んだ。
「あぐっ!」
亜湖は苦しそうに声をあげた。キャサリンはすぐにフォールに行った。
「ワン、ツー」
メイド姿のレフリーのカウントが入ったが亜湖は正確にツーで返した。キャサリンは素早く起き上がり亜湖の髪を掴んで起こし、ロープに振った。亜湖が跳ね反って来た所に、ジャンプしてドロップキックをした。亜湖はあまりにも大きなモーションだったので避けて、もう一度ロープに跳ね返った。
「え?」
いくらキャサリンが素早いとはいえドロップキックを空振りしたら、体勢を立て直すのに時間が掛かる。しかし、亜湖がロープの反動を利用しようと持たれかかった時には既に亜湖に向かって走って来ていた。そしてそれからすぐに、
パーン!!
と場内に響き渡る程の平手を決めた。亜湖はまともに受けるしか無かった。ロープの反動で前に押し出される力と走り込んできたキャサリンの勢いが合わさって普通の平手より何割か威力が上がった平手を食らった。
亜湖は前のめりになったが、キャサリンは倒れる間を与えず、後ろ回し蹴りを決めた。
前に倒れようという力の分だけキャサリンの蹴りの威力が増え、亜湖は斜め後ろに吹っ飛ばされ背中からマットに叩き付けられた。
「あああっ!!」
亜湖は声を上げた後、左膝を立てて左半身を浮かせて背中を手で押さえた。キャサリンは亜湖の髪を掴んで上半身だけ起こした後、背中に強烈な蹴りを入れた。
「ああーーっっ!!」
亜湖は蹴りを食らった瞬間両拳を握り大声を上げて耐えた。そして両手で背中を押さえながら仰向けに倒れた。


「さっき12分って半端な数字言ったのには何か意味があるんですか?」
亜湖は生徒会長に聞いた。生徒会長は、
「んー。大体彼女は10分以内に試合決めてるから、それよりも2分余分に見ればいいんじゃないかなって」
と答えた。キャサリンは大体10分以内に勝ち、長引くと不利になる事が多かった。生徒会長も対戦経験があるが、生徒会長自身も長い試合は苦手なので参考にならないが、7分半でキャサリンに勝利した。
「兎に角12分ね。じゃ、いくよ」
生徒会長はそう言って亜湖に向かっていった。

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