百花繚乱
百合ひろし:作

■ 第18章 亜湖 vs 香1

亜湖は友達といつものようにさくらを待ち、さくらが教室に来ると一緒に帰った。さくらが高校に入ってずっと一年以上―――、つまりさくらが二年になっても続いているのである。
「さくらちゃん友達いなくて寂しいの?」
友達の一人が意地悪く聞いた。さくらは、
「えっ? そんなことありませんよ」
と少し膨れてるのを見て亜湖はクスッと笑った。
自分達はこれからまた地下に行って闘いの為の練習をするなんて友達は露程も思わないだろうな、と思うと何か秘密を持ってしまってる自分自身が悲しい生活してるなと感じ、自嘲気味に笑った。


友達と別れ、さくらと二人で丸紫へ向かった。今の自分の在り方を考えても仕方ない、まだ自立出来ないうちにそれを否定したら待っているのは闇だけである。
兎に角今出来る事を精一杯やるだけだと思った。
「あなたが勝手に裏切られたと思っただけじゃないですか?」
「私は最初から嫌いでした」
社長とさくらの言った事が繰り返し頭の中に流れた。今出来る事―――それは香を倒す事だった。
実力差から考えれば不可能に近い。香がどこか故障していてそれを隠して試合したり、高熱を出していたり―――、そんなことがない限り不可能に見えた。
「センパイ?」
さくらは心配そうに声を掛けてきた。亜湖は、
「え?」
と返した。さくらは、
「凄く難しそうな顔してたから―――」
と言った。亜湖は、
「ううん、大丈夫。ありがとう」
と答えた。

二人は丸紫に着くと事務所に顔を出した。そこにはレフリーのゴスロリが事務作業をしていたので挨拶した。ゴスロリは、
「こんにちは」
と返し、事務作業を続けた。そして、社長と銀蔵は今日はいない事と、生徒会長が来てる事を教えてくれた。
亜湖とさくらは更衣室に行き、制服を脱いだ。さくらは、
「可愛い? センパイ」
とブラジャーを指差して笑顔で聞いた。さくらは水色の縞模様のブラジャーとパンティのセットだった。亜湖は笑って、
「似合ってる。可愛いよ」
と答えた。

二人が練習室に行くと生徒会長とかえでと美里の三人がが待っていた。亜湖とさくらは挨拶した。
「二人とも可愛いね」
生徒会長はニコッと笑って素で言った。一方かえではそんな生徒会長に呆れる様な態度だった。何年付き合ってもこの性格だけは理解できないといった具合だった。

「練習の前に一つ確認していいですか?」
亜湖が聞くと生徒会長は、
「なーに?」
と返した。亜湖は、
「香さんに勝つ方法を―――いや、勝てるようにしてください」
と言った。生徒会長はそれを聞いて顎に指をあてて一瞬困った様な顔をしてから、
「方法も何も―――亜湖ちゃんなら勝てるよ」
と答えた。亜湖は、
「え?」
と言葉が出なかった。こんなにあっさり勝てるよなんて言われるのは全く想像していなかった。さくらは、
「適当に答えないで下さい。センパイは真剣なんです」
と不快感を表した。生徒会長は、
「適当じゃないよ。だって25分持てば、って条件付きだから」
と答えた。亜湖は、
「に……25分―――?」
と驚きを見せた。香のシングルの試合でそこまで長いのは無い。ほぼ不可能と言われてるのに等しかった。さくらも同じ気持ちだった。
「それでも勝ちたいの? それとも今回は諦めておとなしく負ける?」
生徒会長は目を細めて少し意地悪そうに聞いた。亜湖は唾を飲み込み、
「や、やります……」
と答えた。さくらは、
「センパイ―――」
と心配そうに呟いた。
「Ok―――じゃ、かえで。手伝って」
生徒会長が笑顔で言うとかえでは、
「わかったわ」
と答えた。そして、
「ちなみに私はどうすれば勝てるかしら?」
と聞いた。生徒会長はニコッと笑い、
「言ったら怒るでしょ? そのドレスがネックだなんて」
と言った。かえでは呆れて、
「言ってるじゃない。怒る気にもならないわ」
と両腕を広げて首を傾げた。亜湖はそのやり取りを見てクスッと笑った。
生徒会長は、
「かえでの場合は亜湖ちゃんとは逆に短期決戦ね。場外と関節はやらずに受け合いに持ち込んで先に倒れない事かな。体を活かさないとね」
と言った。かえでは、
「それしか―――ないか」
と言った。

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