百花繚乱
百合ひろし:作

■ 第18章 亜湖 vs 香4

二日後、亜湖は廊下で香と会ったが両者は無言で擦れ違った。香の闘気に飲まれそうになったが、ぐっと堪えた―――。亜湖から見て、香が何やら愉しそうに笑った様に見えた。


それから一週間、亜湖も香も試合に備えての練習、トレーニングを積み、二人とも試合の三日前からトレーニングをやめ、練習も軽めにした。潰し合いをするにあたって疲労を残すのは禁忌だからである。
「ねえ、あんたはどちらに賭けるの?」
かえでは電話で生徒会長に聞いた。生徒会長は積極的に賭けをしている事を知っているからだった。

かえでの試合でも賭けていて、時々かえでの相手に賭ける事があり、不快に思った事を言うと、
「かえでに賭けたいけど、相性悪すぎだからスッちゃう」
とオブラートに包む事無しにストレートに言った。かえでは呆れて、
「今度は勝ちますわよ」
と言ったがやはり負けた―――相手は美紗だった。

「今回は賭けないよ。だって弟子同士だもん。可愛さでは亜湖ちゃんだけどね」
電話の向こうで生徒会長はとても愉しそうに答えた。かえでは、
「ハイハイ」
と呆れた。そして、
「それがメインイベントなんだけど、私の試合も忘れないでよ」
と釘を刺した。かえで、美里対プルトニウム関東、良のタッグ戦である。生徒会長はそれを聞いて、
「それも微妙〜。草薙先輩にも頑張って欲しいから―――。でもかえでに賭けるよ」
と答えた。かえで自身は良の事は嫌っているが、生徒会長が良の事を尊敬している事を知っているので、良にも賭けたがっている事については何も言わず、
「ありがとう。美里の為にも勝つわ」
と言って電話を切った―――。


試合当日―――。亜湖はさくらと一緒に学校から帰ると更衣室でいつもの様にブレザー、ネクタイ、スカートそしてワイシャツと順番に脱いで下着姿になった。そして紺の靴下と革靴も脱いで裸足になった。
濃い赤のリボンをアクセントにした薄いピンク色の可愛いブラジャーとパンティに赤い靴下と黒のスニーカーを履き、鏡を見てパンティやブラジャーを直し、髪を整えた。
「よしっ」
と言って頬を叩き気合いを入れた。
さくらは対照的に水色の下着姿で、
「センパイ、勝って下さい」
と言った。亜湖は、
「うん。勝つよ」
と答えた。迷いを絶ち切ったせいかいい表情をしていた。そして亜湖は控え室へ、さくらは事務所へと別れた。
一方香は普段着から体操服とブルマ姿に着替えたがこの日は体操服の袖部分とブルマは真っ赤なものにした。そしてポニーテールに髪を縛り、その上にリボンを着けたがそのリボンも赤だった。更に靴下も靴も赤―――。
赤は情熱の赤―――の他に血の赤だった。この試合で亜湖を血祭りにあげてやろうと考えていた。
かえでは私の敵、亜湖とさくらは玩具。とかえでには言ったが、その玩具で楽しく遊べる時なのだから好きなだけ遊んでやろうと、そういう事だった。


亜湖が控え室に行くとそこには前の試合に出る良とプルトニウム関東が出番を待っていた。良は入ってきた亜湖に気付くと、
「楽しみにしてるよ。かえでと美里を半殺しにしてゆっくりと観戦するよ」
と言った。プルトニウム関東も、
「可愛い下着にしやがって。あたしらが相手じゃないのが残念だけどよ」
と亜湖が香に目茶苦茶にされるのを期待した。亜湖は顔を赤くして恥じらいながらも、
「覚悟は出来てます。でも……簡単に負けるつもりは無いです」
と答えた。それを聞いて良はピュッと口笛を鳴らし、プルトニウム関東は、
「せいぜい頑張んな。無理だと思うけど、勝ったら」
と言い掛け、
「いや、言うと勝ちそうな気がしてきたからいい」
と言った。その時時間が来たので、二人は控え室からリングへ向かった。

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