百花繚乱
百合ひろし:作

■ 第18章 亜湖 vs 香5

一方香がもう片方の控え室に入るとかえでと美里が出番待ちをしていた。
かえでは黒を基調にしたゴスロリ衣装にサイドテールの髪型にしていた。試合開始前に解くのだが―――。
そして美里はいつもの様にナースのコスプレをしていた。
そんな二人が香と目が合うなり一触即発のにらみ合いになった。
かえでは両手をポケットに入れたまま壁に寄りかかりじっと香を見据え、美里もかえでに寄り添いながら香を睨み付けた。
一方香は両拳を握り締め、顔だけをかえでに向けて見据えた。
暫くその状態で動かなかったが、時間が来たのでかえでと美里はリングに向かったが、その時かえでは、
「低俗コンビはサッサと倒してゆっくりあなたの試合を見るわ。どういう結果になるかしら」
と言った。
「私が勝つに決まってるじゃない。おかしいんじゃないの?」
香はかえでと美里が出て行こうとした時に吐き捨てた。かえではそれを聞いて振り返り、
「フフッ……それはどうかしらね―――?」
と笑って出て行った。香は不満な表情を見せて見送った。


亜湖は体をほぐしながらタッグ戦をモニターで見ていた。
この試合、どう見ても良とプルトニウム関東組が有利だった。ランクは、かえでが中堅の最上位、プルトニウムは上位、良は中堅同士の闘いに勝ち星を重ね中堅中位まで戻した。そして美里はさくらより下の下位の最下位―――。
つまりかえでを良とプルトニウムの二人で潰し、美里からピンフォールという解りやすい作戦を立てられた。特にかえでと美里が亜湖とさくらに負けた事からそれは有効だという事がわかった。
一方かえでと美里はそれを防ぐ為、プルトニウム関東を狙う事にした。筋力、体力差から美里は良の攻撃なら何とか受けられるがプルトニウムは無理と判断した。
実際試合では一回美里がプルトニウムに捕まり、グロッキー状態になったが、かえでが救出し、ピンチを脱出した。
しかし、タッグとしての総合力の差は如何ともし難く、二人は場外に放り出されいいようにされた。良とプルトニウム関東は予定通りかえでに狙いを定め、美里に関しては起き上がったときだけ攻撃し、かえでを集中攻撃した。こうなるとかえでの体力がいつ尽きるか、という感じになってきた。
かえではボロボロにされ、場外で這いつくばっていた。ゴスロリ衣装は汗でグシャグシャになった上、椅子や鉄柵攻撃を受けた時に引っ掛かりして一部破れた。そして顔の化粧は汗と掴み攻撃を受けた事で無惨にも落ちてしまい、綺麗な髪はボサボサにされてしまった。
かえではうつ伏せに倒れた状態で激しい息遣いをしていた―――。
良とプルトニウム関東は、かえでと美里を同士撃ちさせてその後、二人に場外パイルドライバーを御見舞いしてやれば体力の少ない美里は勿論、ここまでしぶとく粘ってきたかえでも力尽きると見た。
良が美里を、プルトニウム関東がかえでをお互いに振った。その時美里はかえでの右手が何かを示していた事に気付いた―――、それからかえでと美里は正面から激突した。
二人が崩れ落ちそうになった所をプルトニウム関東と良は捕まえに行った。髪を掴もうとしたその時―――、
かえでと美里は振り向き様に毒霧を吹いた。
かえでの状態から良とプルトニウム関東は完全に油断していた為、まともに食らってしまい、それぞれ赤と青に染められた顔を押さえて悶絶した。
かえでは頭を押さえながら首を振った。良とプルトニウム関東に集中的にやられていたのでダメージがかなりあった。
一旦膝を付いた後再び立ち上がり、ふらふらと歩き、プルトニウム関東を捕まえると、鉄柱に叩き付け、良にはマットを剥がした後にブレーンバスターを見舞ってやった。
そのあと美里と一緒に場外でやりたい放題暴れまくり、最後はプルトニウム関東からかえで式パワースラムでスリーカウントを奪った。
起き上がれず、レフリーの介抱を受けているプルトニウム関東の横でかえでも暫く仰向けになって右手で頭を押さえながら天井を見上げていた―――。

「かえで様!」
美里はかえでのもとに駆け寄り、声を掛けた。かえでは、
「疲れただけよ、心配要らないわ……」
と言って後ろに手を付いて起き上がろうとしたが崩れ落ちた。
「え……?」
かえでは信じられなかった。立てない―――。
負けたプルトニウム関東と良は悔しそうに引き上げてる所だった。なのに勝った自分が立てない―――。
「目眩がするわ……」
かえではそう呟いて気を失ってしまった。
「か……かえで様! かえで様―――!!」
美里はかえでに覆い被さり半狂乱状態になって叫んだ。メイドレフリーは美里に、
「病院に連れていきます」
と言ってから美里を落ち着かせた後、タンカを呼んだ。
かえではタンカに乗せられて運ばれた。その時意識を取り戻し、腕を握っていた美里の手を握り返した。
「あなたを残して死ぬ訳無いじゃない。大袈裟ね」
かえでは泣きじゃくる美里の頭を撫でてにそう言った。美里を守る、それだけがかえでを立ち上がらせた試合だった―――。

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