百花繚乱
百合ひろし:作

■ 第18章 亜湖 vs 香6

「次は亜湖の番ね、あのタンカに乗るのは―――」
香はタンカで運ばれたかえでを見て呟いた。出て行く時にあんな変な事言うからタンカの世話になんかなるのだ。香はそう思い、そして立ち上がった。
リング上では次の試合の為の準備が急いで行われていた。かえで、美里組対良、プルトニウム関東組の試合はリングや周りまで目茶苦茶にしたので整理に時間が掛っていたが、メイドがテキパキ指示したので予想よりは早く終わった。
整理が終わり、リングのマットも綺麗にされてから亜湖の元に出番を告げる合図が鳴った。亜湖は軽く頬を叩き、ドアを開けてリングに走った。
そしてリングにゆっくりと上がると、メイドがボディチェックをした。
続いて香が入場して来た。ロープを飛び越えて着地し、メイドの前に来てボディチェックを受けた。
両者問題無しの為、メイドは、
「何かコメントは?」
と両者に聞いた。亜湖は手を顔の前で振り、
「ありません」
と言った。一方香は、
「覚悟しときなさい。ずっとこの日を待ってたわ」
とだけ言った。亜湖はゴクリと唾を飲み込んだ。
メイドはそれを聞いてから右手を天に向かって上げた。そして数秒後にゴングが鳴った。

香は一歩下がった後、勢い良く踏み込み手四つに組みに行った。亜湖は一歩踏み込んだだけだったので組んだ瞬間に押し込まれた。
『随分力付いたわね……』
香は組んだ瞬間に思った。もしかしたら自分よりも(力は)強いかも知れないと感じた。しかし、美紗に比べればまだ弱い。美紗対策をし、自分より力が強い者に対し下から組むやり方に慣れている香が亜湖を押し込むのは訳無かった。
亜湖をロープまで押し込むと亜湖は手四つをほどき、両手を上げたので仕切り直しとなった。
両者共リング中央に戻り、再び踏み込んで間合いを詰めたが、今度は香が右手で亜湖の左足を取ってもう片方の足を左手で払って後ろに倒した。それから亜湖の左太股に勢い良くエルボを落とした。
「ああっ!」
亜湖は声を上げ、左太股を押さえた。香は既に立ち上がっていて、亜湖の左足首を掴むと左太股の裏を思い切りサッカーのシュートを撃つ時の様に蹴飛ばした。亜湖は、
「あああっ!」
と声を上げて今度はそこを押さえた。香は、亜湖の髪を掴んで起こし、ロープに振った。そして跳ね反って来た亜湖にドロップキックを入れ、フォールした。
「ワン、ツー」
メイドがカウントを取ると正確にツーで返した。香は亜湖の髪を掴んで起こすと今度はコーナーに振った。亜湖は背中から激しく激突しその直後、香が体ごとぶつかってきた。
衝撃でロープが揺れ、亜湖は腰から崩れ落ちた。
「立ちなさいよ」
香は右手でこれでもかと持ちきれない程亜湖の髪を掴んで引っ張った。亜湖がゆっくりと立ち上がると、胸に蹴りを入れ、亜湖が前屈みになると、今度は踵を落とした。
亜湖は膝から崩れ落ち、うつ伏せになった。
「う……ううっ」
うめき声を上げながら左手で胸を押さえ、右手でパンティを直した。香は亜湖の髪を掴み起こそうとした。亜湖がよつんばいになったところ、髪から手を離し、思い切り背中―――、ブラジャーのホックの辺りを狙ってストンピングを入れた。
「あぐっ!」
亜湖は声を上げながらうつ伏せに崩れた。
香は亜湖が無防備になってるのを確認すると、素早く亜湖の足をロックした。亜湖は香が何を仕掛けて来たのか理解し足を伸ばそうとしたりロープに這って行こうとしたが既に遅かった。香は亜湖の腰に膝を乗せ、顎をロックした。
「言ったでしょ? みんなを楽しませろって」
香は妙に優しい声で言った。亜湖は顎をロックしてる手を外そうとしながら、
「い、嫌です……」
と言った。香は、
「黙れ。あんたの意見なんて聞いてない」
と言って態と揺するように反動を付けて引っくり返し弓矢固めを決めた。
「ああーっ!!」
亜湖は上体を名前通り弓の様に反らされ激痛に声を上げた。亜湖は身長があり体が柔らかい為、爪先と頭がマットにつきそうだった。
「ごめんなさい、一つ訂正するわ―――。もっとその声を周りに聴かせてね」
香はそう言って今度は亜湖の体を下から突き上げるように揺すった。
「ああっ! あーっ! あああっ!」
亜湖は痛みに声を上げて耐えた。香は両手を外して乱暴に弓矢固めを解いた。吹っ飛ぶように亜湖は解放され、半回転し、片膝立てて仰向けになり、手で腰を押さえた。香は、
「"後で"もう一回掛けてあげる」
と言って立ち上がり、暫く亜湖の姿を眺めた。それから亜湖の髪を掴んで起こし、ロープに振ったが、亜湖は振り返した。
香が跳ね返って来た所にジャンピングニーを決めた。香は声を上げて倒れ、思わず場外にエスケープした。亜湖は追い掛け、香を捕まえ、鉄柵に振った。

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